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第7回:『貴サークルは“救世主”に配置されました』は同人作家の創作愛に胸が熱くなる1冊!

こんにちは、あみのです。今回は、小田一文さんのライトノベル作品『貴サークルは“救世主”に配置されました』(GA文庫)を紹介します。前回に引き続き、GA文庫大賞の作品となります。

この作品は、同人誌創作活動が主なテーマとなっています。「同人誌」とその作家を描いた作品というのが非常にユニークだと思い、手にしてみました。同人誌界隈の基本的な知識もしっかりと描かれていたので、私のように同人誌についてあまり詳しくない人でも楽しみやすい作品なんじゃないかなと思います。

あらすじ(カバーからの引用)

「ずっと……ずっと、あなたを探していました、世界を救うために」
 自分の同人誌によって、魔王の復活が防がれる。突如現れた女子高生ヒメにそう諭された同人作家のナイト。ヒメの甲斐甲斐しい協力のもと、新刊制作に取り組むのだが……
「えっ、二年間で六部だけ……?」
「どうして『ふゆこみ』に当選した旨を報告していないのですか?」
「一日三枚イラストを描いてください」
 即売会で百部完売しないと世界が滅ぶっていうけど、この娘……厳しくない!?
「自信を持ってください。きっと売れます」
 同人誌にかける青春ファンタジー、制作開始!

感想

まず登場人物の名前の中二病感が凄いです笑。レーベルのサイトにてあらかじめ事前に試し読みはしていたのですが、「設定は興味深いけど、途中で訳の分からないバトルものとかになったりしないのかな…」と正直不安なまま読み始めました。

実際に読んでみて、確かに若干のファンタジー要素はありますが、思っていたよりも創作活動の面を描いた場面が多く、ところどころで同人誌ならではの「好きなテーマを好きなように描く」楽しさを感じられる内容でした。今作では二次創作を扱っていたとはいえ、なにかの作品を作り上げる人間を描いた物語、私はめちゃくちゃ好きです。

主人公のナイトは、自分が好きなアニメの二次創作で同人活動をしています。ただ彼はどちらかというとウケが悪いキャラクターを描いているため、目標の100部を完売させるには厳しいとヒメに指摘されてしまいます。ただ単にノルマを達成したいのであれば、世間の需要に対応することは必要だと思います。世界がどうなったとしても自分の好きを貫くか、それともしぶしぶ需要に寄り添った内容を描くか、ナイトは選択を強いられます。

同人誌は自分の好きなキャラクターを好きなように表現できる場所でもあることを、ナイトの選択から感じることができました。既存のキャラクターの見てみたい姿を描き、少数派だとしても作者の「好き」に共感してくれる読者が必ずいてくれることは、二次創作ものの同人誌ならではの面白さであり、作者のやりがいでもあると思いました。ナイトの「好き」が読者に伝わった瞬間は、私も思わず心が震えましたね。

意外にも奥の深かった同人誌の世界。「解釈違い」のように作品のファン同士のぶつかり合いというものも存在しなくはないですが、この物語は全体を通してネガティブな面よりもひとつの作品を作り上げていく楽しさを圧倒的に重視した内容で、これまで知らなかった世界をまたひとつ目撃できた1冊でした。

またツッコミどころのある設定とかドタバタコメディシーンの連発にも笑える作品で、読んでいてめちゃくちゃ元気出ました。創作を愛する人間に共感したい人はもちろん、とにかく笑える物語で元気になりたい人にもおすすめな作品でした!

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