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【詩】を集めたものです。
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#詩のようなもの

【詩】夜中の目覚め

【詩】夜中の目覚め

朦朧とした魂は
徐々に精細さを増す
メランコリーにうなされた日々に
天使が舞い降りる
一時の快楽に身を任せるつもりはない

夜半、予期せぬことに目覚めてしまった
透明なランプはふいにわたしの目を刺す
仕様がないから
キュビスムの絵に心を通わせる

今日のことは考えなくていい、
とあなたは囁く
そんなことはいかない、
と心の奥底で必死に叫ぶ
わたしのなかの小人
どうしようもない焦燥感と
満ち足りた充

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【詩】雨を待つ

【詩】雨を待つ

あなたのプシュケーは
もっともらしい正義で
わたしを縛りつける。
凛々しい浄玻璃がするような眼の反射で
屋根を焦がす。
わたしは
その熱々の屋根の上で体育座りをし
平然と空を見上げるように
強いられる。
わたしは
ただただじっと、
雨が降るのを待ち続ける。
ここは規則的に雨が降る地域なので
そんなに長く待つ必要はない。
雨が降るとあなたは、
濡れてしまうから家に入ろう、
と優しい顔をして言う。

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【詩】告白と決意

【詩】告白と決意

打ちのめされたわたしの眼に灰色の温もり
あなたの眼には涙が滴る
わたしの安堵に冷たさが侵入する

焦燥感とリラックスが混じったこころに前を向けと誰かが言う
あなたの未来はわたしと共にある
そしてわたしはこれからひとりで歩く試練が課される

さあ、これからだ

【詩】愛の教会

【詩】愛の教会

アムールの土砂降りにただただ狼狽える
その場ではわたしは啞である
どうしようもない幸福が諦めとともに襲ってくる

チャコールグレーの日射
満ち足りないと神父は嘆く
救済と落葉が同時に眼前にあらわれる

盗まれた神灯が街を豊かにする
わたしはその恩恵に預かる
ひとりだけ苦しみもがくものがいる

神父が破顔した
こどもたちは泣いていた
教会に恭しい鐘の音が鳴り響く

【詩】ほつれた脳内

【詩】ほつれた脳内

頭痛のような眠気
どうしようもない天からの啓示
わたしは瞼の裏にユートピアを持つ

悪夢が悪夢のような顔をしていない喜劇
どうすればあなたと健やかな眠りにつけるのか
諦めに似た諦めが心のなかでゆらゆらする

もう何も考えなくていいとあなたは言う
神様はわたしに天罰をあたえる
ああ! きっとこのままどこにも行けない

【詩】新しい朝

【詩】新しい朝

眠気の辞書はだれにも見つからない場所に隠している
眼を擦りながら太陽と月の衝突を再確認する
枕と珈琲の朝は冷たく忙しい

薄志弱行の決意
不規則なリズムで揺れる脳はまだ夢と現実を区別できない
ひっそりと立つ富士山がわたしをくっきり惑わす

澄んだ狂気が血液に充満する
ベッドのぬくもりは靴の中にだけ残っている
気味の悪いポストは今日も朝の匂いを浸す

あなたが向こうから歩いてくる
ポッと灯った燈火の

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【詩】愛の技術

【詩】愛の技術

浄玻璃がまぶたの重さに変わる
わたしは酒の瓶を持ってあなたの帰りを待っている
きっと、肋骨にできた空白は酒をもってしても埋まらない

雲の鳴らすメロディは美しいに決まっている
わたしは密かに地球の裏側にまわりこむ
記念日はわたしにとって空疎なものでしかない

噓を醸し出す水夫は地獄の扉の鍵を持つ
あなたはその水夫の面貌に魅力を感じ、水夫の手を取る
あなたと水夫は楕円軌道を描く

夜明けの街中でユラ

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【詩】季節の桜

【詩】季節の桜

浮き足だった鏡にだけ桜の花弁は写る
その鏡の裏側には吐瀉物の美学が語られている
通り過ぎていくジリ貧の男はその鏡の存在に気付かない

池のほとりに絶縁体の真珠がひっそりと佇む
それは電気によって照らさる
月はただただそれを見守る

行列は永遠の川に接続する
わたしはその行列の往来のなかに立ちすくむ
杞憂の言葉が頭の中でグルグルする

掌に映し出された桜は桜のような顔をしている
あなたはその桜に刹那

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【詩】雨の朝

【詩】雨の朝

珈琲の音色が静かな天国に響く
わたしはカフェインを浴び、どうにか生きている
でもカフェインはわたしの方を振り向いてくれない

雨が翻ったとき、わたしは外に出かける
そこは快楽に魂を預けたような世界である
もうきっと晴れた日には満足できない

夢を夢と気付かない楽観的な肉体は日々脂肪を蓄える
どうか安らかに眠らせてほしい
でも神様はそれを許さない

幸せを願うラベンダーの香り
あなただけは絶望と無縁

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