【随筆】泉鏡花「白い下地」を読んで
江戸から明治にかけて、よく使われた慣用句に「色の白いは七難隠す」というのがある。女の肌が白いのは、少しくらい醜くても美しく見せる、という意である。この言葉はその時代に大っぴらに口にしても問題がなかったように思われる。しかし、現代においてはこんな言葉は一蹴されてしまうだろう。多様性の名のもとに。私は日本史に詳しくないから当時のことは推測でしか言えないが、そんな言葉が横行する当時、肌の白さは先天性な性質であるとある種開き直っていて、肌の白くない者はさほどコンプレックスを抱えてい