マガジンのカバー画像

掌編小説

3
【掌編小説】を集めたものです。
運営しているクリエイター

#掌編小説

【掌編小説】みんな

【掌編小説】みんな

「さあ、行こう」
 Kは前を向きながら、隣で一緒にベンチに座っているUに向かってそう言葉を発した。Uはずっと怪訝な顔をしてうつむいている。
「……嫌よ」
「……」
 沈黙が二人の間に流れた。Kは焦りもせず、凛々しい顔をしている。Uは相変わらず、怪訝な顔をしている。
「……ばさっ!」
 KとUの前で闊歩していた鳩が飛び立った。Kは鳩が飛び去る方へ目線を追いかけた。Uは表情ひとつ変えずにうつむいたまま

もっとみる
【掌編小説】黄泉

【掌編小説】黄泉

 そこは、ただただ暗かった。左右を見ると畑がひろがっているらしかった。前方には森林がそびえたっているらしかった。畑と空、木々と空の境界があいまいで、灯りという灯りは月灯りしかなかった。
 生温かい微風が横切った。その微風が心細さを増長させた。
 私は歩いた。地面が確かにあるものと信じて。一歩々々たしかに歩を進めるものの景色は変わらず、本当に進んでいるのか自信がなかった。
 私はどこに向かっているの

もっとみる