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第5回「お互いに書いたものを読みあう」

「文章の書き方」
編集&ライティング歴40年ほどのフリーライター。120冊以上の書籍化でライティングを担当。
このnoteでは、誰でも文章が上手になるコツを伝えようと思います。特に順序立てて書くわけではありませんので、どの回から読んでいただいてもかまいません。また何回のコーナーになるかも決めておりませんので。暇な時に拾い読みして、参考になる部分だけを実践してみてください。


上達への道筋

 以前のnote講座で「日記を20年書いても文章は上達しません」と書きました。
それはその通りで、誰も読まない文章を書いたところで、それは独りよがりになってしまいます。たとえば第三者には分からないような表現をしても、自分さえ分かっていればそれでいいわけです。そんな文章を書き続けたところでまったく意味がありません。
もちろん日記をつけることの良さもありますが、こと文章の上達と言う面では効果はないのです。

読み手と決め事

 では具体的にどうすればいいのでしょう。自分が書いた文章を、誰かに読んでもらう機会をつくることです。一番いい方法は、お互いに文章を見せ合って、忌憚のない感想を言い合うことです。
二人でもいいし、三人やグループでも構わないと思います。大切なことは、互いの文章を読みあう場をつくることです。  たとえば二人の間でテーマを設定します。「次回は幸福をテーマに書いてみよう」と。「幸せとは何か」というテーマで、それぞれが自由に書く。この時にもう一つ大切なことがあります。それは、字数と締切日を設定することです。だらだらと書くのではなく、たとえば400百字詰め原稿用紙で5枚。2000字以内で書く。それを来週の日曜日に見せ合う。そういう決め事をつくっておくことです。  文章を書きなれていない人にとって、5枚の原稿用紙を埋めるのは簡単なことではありません。それでも、とにかく5枚という枚数を書く努力をすることが大事です。
同じことを繰り返すこともあるでしょう。「幸福」というテーマから離れてしまうこともあるでしょう。それでもがんばって2000字の文章を書く練習をすることです。

締め切りを守れぬ者に上達の道は無し

そして締め切りを守ること。仕事ではありませんから、まあ締切に間に合わなくてもいいか。来週の日曜日は無理そうだから、一週間延ばしてもらおうか。ついそんなふうに考えてしまいますが、それでは何時まで経っても文章は上達しません。
テーマについてよく考え、決められた字数を締切日までに書く。この二つを守りながら続けることで、文章は上達していきます。一か月に一度、こうした機会をつくって実践すれば、二年も経つ頃には原稿用紙5枚を埋めることも難しくはなくなるでしょう。

読者は隣にいない

いちいち説明はできない

 お互いに文章を見せ合って、感想を言い合うこと。そこには妙な遠慮などがあってはいけません。分からない個所は、正直に「この部分は何を言いたいのかわからない」と言ってあげることです。  「この箇所がわからない」と言われたら、指摘された方はつい説明をしようとします。
「それは、こうこうこういう意味だよ。私が言いたいのはこういうことなんだ」と。その説明を聞けば、読んでいる方も「そうか、そういうことか」と納得するでしょう。
このようなやりとりはしてはいけません。なぜなら、読者は常に傍にいるわけはありません。説明しようとしても、目の前にいない読者に説明をすることはできません。説明しなければ伝わらないような文章は意味をなさないのです。
読み手に伝わるように優しく、そして丁寧な文章を心がけることが大事です。お互いに文章を見せ合うことで、読み手を意識した文章が書けるようになるのです。

道場を立ち上げよ

 一つ付け加えておくことがあります。それは、互いに文章を見せ合う相手ですが、これは夫婦や恋人などは止めたほうがいいと思います。あまりに近い関係でこれをやれば、つい感情的になってしまいます。
たとえば夫や候人に自分が書いた原稿を見せる。近い関係ですから、夫の指摘には遠慮がありません。「これは何が書いているのかわからないよ」と。この一言にかちんときます。相手の言葉に感情的になってしまうと、「じゃあ、もう読まなくていい」と言い返してしまう。せっかく文章の上達のために見せ合っているのに、それが原因で夫婦喧嘩が始まってしまう。そんなことになってはたまりませんね。  そういう意味では、あまり親しくない者同士で読みあうのがいいと思います。職場のなかでサークルのようなものをつくるのも手でしょう。近所で「文章道場」みたいな場を立ち上げるのもいいかもしれません。いずれにしても、常に読み手のことを考えながら書く習慣を身に着けることです。

テーマは何でも構いません。「幸せとは何か」などの大きなテーマでもいいですし、日常生活に密着したテーマ。たとえば「私のおすすめの店」、「私の暇の潰し方」、「私の趣味を紹介します」、「最近の頭にきたこと」などなど、テーマはいくらでもあります。いろんなテーマと向き合うことが、また文章の上達にもつながっていくのです。

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