第7回「常識って何?」
誰もが小さな世界で生きている
自分の書いた文章を誰が読むのか。誰に読んでほしいのか。
そのことを常に考えておくことが大事だということは以前の記事で紹介しました。それについて、もう一つ付け加えておくことがあります。
それは、あなたが思っている「常識」が、みんなに理解できるとは限らないということです。
誰にとっての常識?
たとえば銀行に勤めている人が、仕事に関係する文章を書くとしましょう。
銀行には銀行のなかで交わされる単語があるものです。いわゆる専門用語というもの。それらは同じ銀行マンのなかでは通じますが、一般の人にはわかりません。
ところがつい私たちは、自分たちが使っている用語は、みんなも知っていると勘違いしているのです。
「この程度の用語はみんな知っているだろう。それは常識だろう」と。
一人前こそ要注意
実は私たちは、とても小さな世界で生きていることに気づかなくてはなりません。
たとえば銀行に勤める人であれば、金融業界という世界の中で生きています。学校の先生であれば、学校と言う世界。ファッション業界の人たちは、ファッションには詳しいけれど、他の業界の事に関しては疎かったりする。
社会の中で生きていると、さも自分は何でも知っているかのような気になってきます。仕事を一人前にこなせるようになるにつれて、傲慢な考え方になってくるのです。
「こんなことは常識だ。知らない人間は常識がないだけ」
こんな傲慢な気持ちで書いた文章が、広く読まれることはありません。
自分がいる世界では日常的に使われている用語。しかしそれは、みんなが知っているとは限らない。
だからこそ、誰にでも分かるように丁寧な説明を加えなくてはいけない。
そんな気持ちをもつことです。
「常識」を捨て、読者を見よ
伝えることを丁寧に
「いま書こうとしているものは、はたして世間一般の常識なのだろうか」 女子高校生には、女子高校生の世界だけで通じる言葉があります。教師には教師にしか分からない言葉があるでしょう。スーパーマーケットでは店の中でしか通じない言葉があるはずです。
つまり、「常識」とはけっして一つだけのものではなく、それぞれの世界にそれぞれの常識があるということです。
「こんなことは知っていて当たり前」という考え方ではなく「きっと知らない人もいるだろうから、丁寧に噛み砕いて書くことにしよう」と思うことです。
もちろん銀行マンが、金融業界の人に向けて書くのであれば、存分に専門用語を使えばいいでしょう。銀行のなかで話している言葉をそのまま書けばいい。
しかし、金融業界の人だけでなく、広く一般の人たちに読んでもらいたいと思うのなら、いま自分がもっている「常識」を捨てることです。
ナイものは追わず
「常識」というものは、とても曖昧なものだと思います。
もしかしたら、そんなものは初めから存在しないのかもしれません。
それは自分たちが勝手に作りだしたものかもしれません。
そんな曖昧なものに気を取られないで、読んでくれる人にどうすれば伝わるかだけを考えてください。
「読んでくれる人が分かること」。
それが伝わる文章の「常識」なのです。
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