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「仕事」と「自己成長」の関係は?境界線は?

「あなたが一生懸命検討していることは、自己成長のためには有益かもしれないが仕事としては必要以上のもの(やりすぎ)。コンサルは相手のやりたいことを聞いて調査や事例を集めて提示するのが仕事。」
とあるクライアントからこんな話を頂いたことがある。
当時若かった私は、どういうことが課題か?特定しにいくところから解決策の指南まで一通りの変革を推進・リードするのがコンサルであると考えていたところもあり、このコメントに戸惑ってしまった。

他でも、「資格取得は仕事のためなのか?」「仕事に必要な読書は業務時間内?時間外?」「自己啓発の費用は会社払い?個人払い?」等、不透明なケースもあるので、改めて「仕事」と「自己成長」の関係・境界線を考察してみようと思う。

まず、仕事とは?から考えて見る。
感情的な話は色々とあるものの、実態として企業と個人とを規定するものは「雇用契約」である。企業毎に内容は異なるので一概には言えないものの、「労働者は一定時間の労働を提供する」、その対価として「企業は労働者に対してランクに基づく報酬を提供する」というものが多いであろう。
この条件下で「仕事とは?」の回答としては、「企業がその仕事を労働として要求したものは仕事、そうでないものは仕事でない」ということになる。
これだと「企業による」という解にしかならないので、例示しながら具体的に考察してみたい。

例えば、「ソムリエ」という資格がある。ワインに詳しくなり、製法や銘柄・味や合う料理などを進めてくれるもので、認定されることにより資格が得られるものである。この資格を取る/取らないによる雇用契約の差を、「ソムリエ必須の人材募集」を行っている飲食店/「ソムリエは必須でない人材募集」を行っている飲食店で考えて見たい。

まず、「ソムリエ必須の人材募集」を行っている場合、「ソムリエ資格を持っていること」自体が雇用の条件になっている。店として「ソムリエが適切なワインを紹介します」という形で、ソムリエによる情報提供が飲食店のサービスの一端を担っていることになる。この場合、「ソムリエ資格を持っていること」は提供サービスの前提となっているため、「ソムリエが足りないので資格を取って欲しい」「ソムリエの資格維持のため更新が必要」などは、サービスを提供する源泉となるため、社費・労働時間(もしくは相応分の報酬)として考えるべきであろう。医師・監査法人・税理士・弁護士等々、資格商売と言われるものはこちらの考え方がフィットしやすい。

一方で、「ソムリエが必須でない人材募集(または、あれば尚可)」の方が難しく、こちらの方が悩ましいところであろう。このケースの場合は、雇用条件の中に「ソムリエ資格を取得・維持する」という前提はない。この場合は、「資格を持っていること」そのものには価値がなく、「顧客に楽しい食事の機会をどれだけ多く与えたか?」に価値がある、と解釈すべきであろう。
雇用契約としては、「どれだけ顧客に価値を提供したか?」が報酬額と連動し、そのパフォーマンスにより昇給していく形である。「ソムリエ」の資格については、「顧客への価値提供」をしやすくなる1要素にはなり得るが、そのものが顧客価値提供を高めるものではない。
よって、この場合は自費・労働時間外での対応となり、あくまでも自主的に「自身の報酬額を高めるため」に行うべき活動である。企業側から「取ったら?」という提案はあるかもしれないが、自身でその是非を見極め行動すべきである。

「仕事」と「自己成長」、この2つを切り分ける基準としては、
「その取組が直接的に企業のサービス提供価値に繋がるか?」
である。
社費・労働時間内で色々な研修参加・資格取得を行える(一方で資格取得が直接的に報酬に繋がらない)企業もあるが、それは「優しい企業」であって本質的にはおかしい。企業の目的は自己成長も企業内で行わせることにより、人材を囲い込もうとすることが意図であるからだ。

仕事は企業のため、自己成長は自分のため、である。
仕事は報酬に見合う成果をより早く効率的に出すために行い、他の時間で自己成長への投資に振り向けていこう。


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