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「話せなかった人」として漫画を描いてきた6年間の事3

前の記事の続きになります。

その1はこちら


2,虐待サバイバーとしての自分を守りたいという気持ちが出てきた。
について。

前回の記事でも書いたように、私はなかなか壮絶な日々を子供の頃は送っていた訳だが、(ちなみに漫画でも描いてないだけで、今思えばもっと酷いエピソードも色々とある。)
過去を見つめ直した今でも、自分がいじめや虐待に遭ったという認識が薄めである。

こうして漫画や文章で自分の事を発信する時には、「いじめ」「虐待」「性的被害」などの言葉を、利便性の高さや話題性から使うようになってきてはいるが、
いまだに自分がそういう目に遭ったって言っていいのかな…?なんて疑っている所があるし、リアルの生活では誰かに話したりしたくない。

だってそんな事話したって重いし、聞いた方だって困るし、いつまでも過去の事についてウダウダと不満を言ってたってどうしようもないじゃん。
もうすでに病院に行ってカウンセリングも受けたりしてだいぶ楽になったし、いつまでも過去の辛かったことに足を引っ張られたくないし、私はもっと前に進みたいんだよ。
そんな気持ちがある。

でも自分の精神が安定している時が増えたからこそ、酷く落ち込んだ時の精神状態を色々分析できるようになった近年、
「ああ、もういい加減自分が虐待サバイバーだとちゃんと認識しないといけないかなあ…」なんて思うようになりはじめていた。(いじめや性的被害などについても。)

常に精神状態が悪かった以前は気が付かなかったのだが、最近精神状態が悪くなる時は大抵、
実生活の中で嫌な事が起きたりして、ストレスを感じる→それをきっかけに、現在起きている嫌な事と似た、過去にあった辛い経験が芋づる式に次々と思い起こされてしまう。所謂フラッシュバックというやつ。→過去に自分が押し殺してしまった感情が今になって呼び起こされて、現在起きている事に対して必要以上に強いネガテイブな感情(怒り・悲しみなど…)が湧いてしまう。

…といった感じで、どう考えても過去に自分が遭った理不尽な出来事が原因であろう感情の揺れを感じるようになった。
自分を尊重できるようになった今になって、ふとしたきっかけで長年押し殺してきた感情が溢れ出そうになるのだ。

その波が来るたびに、いやいや…でもこの気持ちは過去の出来事からくるもので、今現在の問題とは関係ないんだ、切り離して冷静に考えろ…
なんて思ってやりすごすようにはしているのだが、なかなかしんどいものがある。
ああ、私は今でもまだまだ色んなトラウマを持っているんだなあ…とついに認めざるを得なくなってきたのである。

自分が酷い目に遭った事についての認識が薄かったのは、自分がしっかりと認めてしまったら、一度パニック発作を起こした時のように、また苦しむんじゃないかと思っていたからなんだろうなあ。


そんな風に思い始めた折。
今年の1月に行った場面緘黙のトークイベントで、角田圭子さん(かんもくネット代表で公認心理士でもある。)に、

”『話せない私研究』は、アメさんの場面緘黙症の背景要因であった「虐待体験による複雑性PTSD」の症状とそのデフォルト世界から自由になろうと格闘する物語なのでは?”

という事を示唆していただいた。

当時けいこさんからいただいた、話せない私研究の感想や、見解をまとめてくださったものの一部を載せておく↓

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(この画像だけではわかり辛い所もあるかもしれないけど、トークイベントではこの事についても、けいこさんからお話していただきました!)


この時、私が複雑性PTSDの可能性もあるのでは?いうのを教えていただいて、なるほど、最近の精神状態の揺れ方もそう考えたら納得がいく!ととても腑に落ちたのだ。

他にも、確かに物心ついた頃から聴覚・感覚の過敏さはあったけど、生まれ持ったものだけじゃなく精神的問題が関わっている可能性もその通りかもしれない。
だってかんもく漫画を描き始めて精神状態が一気に悪くなってから、聴覚や感覚の過敏さも悪化したもんなあ。
自分が思っていた以上に、色んな生き辛さは虐待経験のトラウマから来ていて、場面緘黙ともつながっていた可能性があるんだなあ…
などと、色々と納得がいった。

自分がうっすら考えていた事について、専門家の方から決定打となる意見を貰ったような感じだった。
(※場面緘黙の発症要因は人それぞれで、必ず家庭の問題・虐待が原因で起こる訳ではありません。子供の為に頑張っている親御さんも沢山いますよ!)

しばらくは、
…複雑性PTSD…。PTSDなんてもっと物凄い壮絶な経験をした人がなるイメージだったけど…ああ、でも私もなかなか大変な経験をしてしまったんだな…
うん…良く考えたら確かにPTSDになってもおかしくないのか…そっか…。

なんて戸惑ったり、受け入れきれなくて不安定になったりもしたけど、
次第にまだ心に残っているトラウマなども軽減できるように、PTSDについても勉強しつつ、自分をもっと大事にして行こうと思えるようになってきた。

以前の私は自分を傷めつけながらも漫画を描き続けて、そこに意味もあった訳だけど、
これからも自分のメンタルの事を描き続けるとなると、どうしても過去の事についても触れなくてはならない事が多い。
漫画を通して自分の事を開示し続けるのは、普通に生きていれば思い出す必要のないフラッシュバックを起こしたり、ダメージを受けかねない。

だから今は自分を大事にして、ひっそりと少しずつ自分を癒して行きたいと考えるようになった。

こうした観点からも、この先も以前のように漫画を描き続ける事は難しい。

(続く)

サポートいただけた場合、ありがたく場面緘黙についての資料の購入費・漫画を描くにあたっての画材費等に使わせていただきます。個人で制作している為、少しでもサポートいただけたら幸いです。