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掌編小説

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2021年1月の記事一覧

定位置【掌編】

定位置【掌編】

「おめでとう」
 僕は当たり前のように君の頭を撫でる。妹にするように。
「ありがとう」
 君は、僕を兄のように見上げて微笑んだ。
 先月会った時よりきれいだ。君は僕の親友と出会ってから、どんどんきれいになっていった。君がきれいだってことは、僕だけが知っていたはずなのに、今や、すれ違う男の多くが振り返るほどだ。
 あの時、親友に君を紹介しなければと、何度も悔やんだ。でも、僕の前で泣いてばかりだった君

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雪の結晶かもしれない【掌編】

雪の結晶かもしれない【掌編】

 年齢も同じ、血液型も同じ、好きな音楽も好きな食べ物も出身地も同じ。
 僕と長谷川さんの夫は共通点が多い。一番の共通点は長谷川さんの事が好きってことだ。
 長谷川さんの夫に会ったことは一度もない。けれど、長谷川さんの口から彼の話をきくたびに、僕と共通点が多いことを知らされた。
 僕と彼の違いってなんだ。
 長谷川さんに出会った時間が、早かったか遅かったか、その違いだけだと言うのなら。僕が長谷川さん

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