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掌編小説

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2020年10月の記事一覧

死にたがり───彼女

死にたがり───彼女

「彼女が自殺未遂をしたんです」
 出勤前に山谷から電話。
「わかった。じゃあ、私が代わりにシフト入るから」
「すいません」
「支配人にも私から伝えておく」
「嶋さん、ありがとうございます」
 泣きそうな山谷の声を裁断するように電話を切った。

 私はホテルのフロントで働いている。山谷は職場の後輩で、五年ほどの付き合い。仕事の愚痴を言いあったり、時々プライベートな話もする仲である。
 山谷の彼女は、

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