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20年ぶりの、鎌倉をなぞる旅

ずっと昔、当時働いていた会社の友人と鎌倉に行った。子どもが生まれる前だから、20年くらい前だ。その時は鶴岡八幡宮、銭洗弁財天、長谷寺などを参拝。鎌倉大仏で胎内拝観、人力車に乗り、雑貨屋でアンティークボタンを購入…したような気がする。

その数年後、子どもを出産した。赤ちゃん用にベージュの毛糸でベストを編んだ。それに合うボタンを探していたとき、鎌倉で購入したボタンを見つけて縫い付けた。ボタンは透明なピンク色で艶があり、赤ちゃんに似合っていた。

鎌倉で購入したピンクのボタン

赤ちゃんにベストのボタンをつけているとき、ふと、鎌倉に一緒に行った友人の言葉を思い出す。「ここをお参りして、願いが叶ったら、必ずお礼参りをするんだよ」と。しかしその場所がどこだったか、大事な名前が出てこない。

そして、鎌倉初訪問から20年が経った。「ああ、そうだ。鎌倉に行きたいな」と、ふいに思い出した。友だちの言葉も一緒に。子どもは高校生と中学生に成長していた。お願いは、子どもに関連することだった気がする。

当時、鶴岡八幡宮、銭洗弁財天、江ノ電に乗って長谷寺へ行き…このあたりはハッキリ覚えているのだが、その間の記憶はうろ覚えだ。あのお願いをした場所は、どこだっただろうか。

出かける前日、Googleマップで軽くチェックしてから、4月の平日、電車で鎌倉に出かけた。カラッと晴れた日というのもあってか、横須賀線車内は、以前と比べ外国人が増え混んでいた。11時の鎌倉駅も人でごった返している。駅の建物自体は、以前と変わらない気がする。

平日だったが、鎌倉駅、めっちゃ人がいた。

前に行ったときは、まず、小町通りにあるイワタコーヒー店に入り、ぶあついホットケーキを注文した。そしたら、前客がいて4人ホットケーキを頼んだから、次に焼くのにすごく時間がかかると言われたので、あきらめた記憶がある。ホットケーキは今回も食べなかったが、小町通りでお店を見かけ、健在と知りうれしい。

そして、鶴岡八幡宮を参拝。ここから、小町通りへ戻り、わき道をそれたはず。友人が小冊子を持っており、その地図片手に目的地を目指して歩いた。小町通り自体はすごくにぎやかだが、一歩道をそれると途端に静かになる。

「ああ、ここ、歩いたなー」と、急に思い出した。民家が立ち並ぶ道の角で、友人と会話していた。「会社近くの一軒家で、ゴールデンレトリーバーの子犬が庭にたくさんいて、すごくかわいくて一緒に声をかけたでしょ。そのあとまたその家の前を通ったとき、家の方に話を聞いたの。10頭産まれたうちの子犬を、何頭か知人に引き渡したんだけど、あと3頭、引き取る方がいないんだって」「私はアパートだから飼えないんだよね」「あぁ、私もそうだなぁ」と、お互いすごく残念な気持ちで語った。

旅に出ると、観光地そのものより、一緒に行った人との会話や、自分でその時考えたことのほうが新鮮によみがえってくることがある。目を見張るような美しい景色じゃなくて、地味な場所でも、なぜか会話の記憶が率先して出てくることがあって、不思議だ。土地の景色と会話内容が、セットになって浮き上がってくるようなイメージだ。

Googleマップに導かれ、お墓と寿福寺へ

スマホを取り出して、Googleマップを開く。たぶん、このあたりの神社か、お寺だ。そしてパッと目に飛び込んできた名前が「寿福寺」。ああ、その場所だ。そこを目指すものの、マップ通りに進むと、お墓に出てしまった。

お墓は前回来ていない。引き返そうと思ったが、マップによると、お墓を通ってお寺のほうにいけるらしい。お参りしている方が、ちらほらいらっしゃった。さらに奥へ進むと、山を削った穴の中に、北条政子と源実朝のお墓があった。どちらにも、手を合わせた。

そのお墓は、とても静かな場所にあった。駅前や商店街のような喧噪から完全に切り離されている。じっとりとした重い雰囲気で、軽々しく訪れてはいけない気がした。特に源実朝のお墓の前に立つと、この方は、複雑な亡くなり方をしたのだろうという感じがする。史実はあまり信用しないが、そこではそう感じた。

その後、お寺の境内へと進んだ。中門の前で、20年前のことも含めてお参りし、長い石畳の参道を歩いて戻った。寿福寺は、身が引き締まる、厳かで緊張感のある静謐な場所だった。

独自に存在する光・風・岩・苔ー銭洗弁財天宇賀福神社、御霊神社、長谷寺へ

銭洗弁財天宇賀福神社。岩壁に光が当たって美しい
江ノ電の踏切すぐ、御霊神社の鳥居。今回初めて参拝
長谷寺に咲いていたアマドコロ。お花も苔もかわいい
長谷寺の見晴台から。海と空が見え気持ちのいい風が吹く

そのあと、銭洗弁財天宇賀福神社を参拝。そしてガラスのアクセサリーショップへ行き、スタバに寄ってコーヒー休憩、江ノ電に乗り、御霊神社や長谷寺を巡った。

鎌倉の土地が持つ静謐さを求めて

鎌倉は三方を山で囲まれており、神社・仏閣も多く、独特な雰囲気がある。荒々しい風が吹かず、流れている空気や時間が穏やかで、全てがゆっくり動いているよう。少し歩けば海が広がり、お店のひとはせかせかしておらず、優しい。道幅がせまく、坂が多いにもかかわらず、江ノ電沿いにも家がびっしりと建っているのは、住み続けたくなる魅力がたくさん詰まっているからだろう。

久しぶりに来たが、あらためていい場所だった。時間の使い方、心の休め方、言葉のしゃべるスピード、相槌のタイミング、呼吸の仕方。人に惑わされず、信念を持って暮らすことを、あらためて考えるきっかけになった。

光や風、独特の静謐な時間を感じにまた、あの場所へ行きたい。

#一度は行きたいあの場所


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