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 恥ずかしい話だが、借金をしている。コロナ渦の中でアルバイトしない期間ができ、そんな中で大きな出費があり止むを得ずそうしてしまった。何ヶ月か努力してすぐ貯めて返済することができ、深刻な額ではないのだが、それでも実質の持ち金がマイナスであると精神的にどうも安定してくれない。

 親からは、小さいことから「お金を借りることは絶対にするな」と言われてきた。どんなに親しい仲であっても友達から借りるな、消費者金融も使ってはならないと言われていたが、「そりゃ借金は良くないよなぁ」と軽い気持ちで同意するくらいだった。しかし実際にその状況になってみると、いかにこれが立場上、精神上に良くないかが身に染みて理解した。

 部活を引退してから、かなりアルバイトの量を増やした。部活をやっている時は、陸上に影響しないように週1、2程度に軽くやっていただけなので、せいぜい収入が2〜3万程度だった。仕送りもそれなりの額をもらっているから、生活費の補填としてはそのくらいで十分だった。
 引退後は部活のことを考慮しなくても良いのでどんどんシフトに入れて、おかげで収入は何倍にも膨れ上がった。より多くの楽しみのために使えると気持ちが華やぐはずだった。

 しかし、これらの努力は返済に溶かされる。私の勤労が私のだめでなく、返済という自己管理の甘さが生み出しだ虚無のために消えていく。蓄積のない努力は目的意識が薄らいで行って、掴んだものが空を切るようだ。

 それに、返済以外の使いたいことにも罪悪感を感じ躊躇してしまう。最近は、彼女とのデートで旅行もしたいし、自分の作業を効率化させるために自習スペースを使いたいと思っているが、それも躊躇ってしまう。そんな自分だから彼女を苛立たせてしまうし、作業もなかなか捗らない。

 雪が降り始め、積雪への期待が膨らむも、コンクリートに溶けて地面をわずかに潤すだけの儚い存在となっている。

 雪が積もるには、気温がグッ下がり一粒一粒が溶けてしまわないようになるか、溶けてしまう余裕さえ与えず勢いよく降り続けるかの二通りだろう。
 前者を実現するならば、感情を凍結させ、雪を溶けないようにする。つまり、欲しいと思っていたものを欲しいと思わず、貯めたお金が出ていかないようにする。
 後者を実現するならば、溶けていく雪を圧倒的に上回るように死に物狂いで降らせることだ。つまり、程度を弁えながら使いたいところに使い、出費を躊躇わなくなるくらいに稼ぐことだ。

 借金しているという立場にいるだけでも羞恥心でストレスが溜まるし、それをアルバイトでしか稼ぐことのできない休学中のニートであるという立場がまたストレスになって躁鬱のスパイラルが生まれる。一刻も早く借金から抜け出さねば。

 借金をし始めた人が次々に借金を重ねてしまう話はたくさん聞いたことがある。やはり借りることは簡単で一瞬であるのに対し、小額であっても返すには相当の努力が必要であることが負債の大きな落とし穴になるからだろう。

 親の戒めを、結局その身になってみることで理解することになる。失敗して初めて気づくことしかできないのだから、私という人間は度し難いのだとつくづく思う。

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