“女子学院「絶対に認めない判断しない」、神戸女学院「今後検討」トランスジェンダー生徒受け入れ(LGBT女子中高アンケート)”(産経新聞電子版:2024年2月10日15:00)の記事中の「LGBT理解増進会代表理事・繁内幸治氏の話」に対する一考察

「女子中学校・高校がトランスジェンダーの生徒の受験や入学を認めるかどうかは、慎重に判断されなければならない。学校法人の執行部、教職員、生徒、保護者、卒業生らも含めて十分な合意形成が図られる必要がある。なぜなら、未成年に大きな影響を与える可能性があるからだ。10代は性自認の揺らぎに悩まされるケースが少なくない。トランスジェンダーの生徒が女子校に入学後、受け入れ態勢が不十分であれば、より悩みを深めて卒業がかなわないことにもなりかねない。当事者だけではなく、思春期の成長途上である周囲の生徒も傷つき、全員が不幸になってしまうといった事態も起こり得る。生徒や保護者が女子校としての伝統的な価値観を重視するなら、受け入れないという判断もあり得るし、それは尊重されるべきだろう。受け入れを検討している学校がそうであるというわけではないが、社会的に勢いのある潮流に流されず、女子校としての存在意義を守るという決断は決して性的少数者に対する差別には当たらない」

引用元:“女子学院「絶対に認めない判断しない」、神戸女学院「今後検討」トランスジェンダー生徒受け入れ(LGBT女子中高アンケート)”(産経新聞電子版:2024年2月10日15:00)より

この論説に対する人権の観点からの反論は、以下のように展開できます。

まず、トランスジェンダーの生徒の学校への受け入れを巡る議論においては、性自認に基づく平等と尊重が最優先されるべきです。国際人権基準においても、すべての人は性別、性自認、性的指向にかかわらず、教育を受ける権利や差別からの保護を享受する権利が保障されています。教育機関は、生徒一人ひとりが自分自身であることを安心して表現できる環境を提供する責任があります。

次に、トランスジェンダーの生徒が受け入れられないことによって生じる否定的な影響にも着目する必要があります。受け入れられないことによる排除や孤立は、トランスジェンダーの生徒の精神健康に深刻な悪影響を及ぼし、自殺リスクの増加にもつながりかねません。また、学校が性的少数者を受け入れることは、他の生徒にとっても多様性と包括性の価値を学ぶ機会となり、社会全体の偏見や差別を減少させる効果が期待できます。

さらに、女子校としての伝統や価値観を守ることとトランスジェンダーの生徒を受け入れることは、必ずしも相反するものではありません。トランスジェンダーの生徒の受け入れが女子校の存在意義や価値観を脅かすものではなく、むしろ学校コミュニティの多様性と寛容性を示す機会となり得ることを認識することが重要です。

最後に、社会的に勢いのある潮流に流されることなく決断を下すことは、性的少数者に対する差別とは言えないという立場は、真の平等と公正を目指す上で危険な前提です。社会的な変化や進歩には、しばしば抵抗が伴いますが、人権の尊重と保護を最優先することが、教育機関に課された責務であるべきです。トランスジェンダーの生徒を受け入れることは、性的少数者に対する差別をなくし、全ての生徒にとってより良い教育環境を実現するための重要な一歩です。

性自認に基づく教育へのアクセス:トランスジェンダーの生徒の受け入れは許可ではなく権利

この観点は、トランスジェンダーの人々に対する社会的な扱いにおける根本的な不平等と差別を浮き彫りにします。教育やその他の基本的人権において、「受け入れられる」ことが「許可」されるべきものとされている現状は、トランスジェンダーの人々が直面する不当な障壁を示しています。

まず、教育を受ける権利は普遍的なものであり、性別、性自認、性的指向に関わらず、すべての人に平等に保証されるべきです。トランスジェンダーの人々が「許可」を求める必要があるとする考え方は、彼らが何らかの形で「通常」と異なる存在であり、特別な扱いが必要であるかのように誤解を生じさせます。これは彼らの存在とアイデンティティを不正に疑問視し、彼らの基本的人権を制限するものです。

この「許可を求める」という枠組み自体が、トランスジェンダーの人々に対する差別と偏見を示しています。他のどの生徒も、自分の性別が理由で教育を受ける権利を「許可」される必要はありません。性自認に基づく差別は、性別、人種、宗教など他の任意の属性に基づく差別と同様に、人権の侵害であり、不当です。

この不当性は、社会がトランスジェンダーの人々を「異なる」または「例外的」として扱うことに根ざしています。しかし、本質的に、トランスジェンダーの人々は教育を受け、尊重され、自己のアイデンティティで生きるという同じ基本的権利を持っています。この視点から、トランスジェンダーの生徒が女子校など特定の教育機関に「受け入れられる」ことは「許可」されるべき問題ではなく、彼らの当然の権利を尊重し、保護するための必須の措置です。

したがって、教育機関はトランスジェンダーの生徒を「受け入れる」ことを許可する立場にあるのではなく、彼らの人権を尊重し、平等な教育機会を提供することに対する義務を負っています。この義務は、差別を排除し、すべての生徒にとって安全で支援的な学習環境を確保するためのものです。

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