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『「わかりあえない」を越える』の読書感想文

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『「わかりあえない」を越える』の書評・感想文をまとめています。読者の方がそれぞれの視点で思い思いに綴っていただいています。
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「人を人として見る」とは、こういうことか!

「人をよく見る」と言っても、自分の都合で人を評価していないか? 人を観察するのが好きである。その人ならではの個性がわかると嬉しくなる。そんな「人を見る」という行為の起点が、実はとても自分本意な意識からあったのではないか。そんな気づきを得られたのが、本書『「わかりあえない」を越える』である。 著者のマーシャル・B・ローゼンバーグは、紛争解決の専門家だ。その対象は世界中に及び、各地の紛争地帯を訪れてその解決を手助けする。国家間の紛争もあれば、部族や宗教による対立、あるいは

ちょっと言葉を変えるだけで、幸せは増幅する

今まで、コミュニケーションに関する情報や書籍を読んできた。それは、自分の思っていることが伝わらない、伝えたいことがあってもうまく言葉に出来ず結局口に出せないという課題感があったからだ。しかし、色んな書籍を手に取っても、「何か違う」という違和感を持っていた。 書籍『「わかりあえない」を越える』を読んで、コミュニケーションの根幹について頭を打たれるような衝撃を受けた。 私はそれまで、コミュニケーションとは、自分のことを表現することだと思っていた。「相手のことを理解する」という視

世間の大波をサーフィンする

あなたは今どんなことに、はまっていますか? 実は私、今、NVCにはまっています。-Nonviolent Communication-を略してNVC。非暴力コミュニケーションのことです。 NVCとの出会い 私がNVCに出会ったのは4年前。気の重いことがいくつかあったのを覚えています。まあ、その頃に限ったことではありません。人間関係の悩みは多かれ少なかれずっと感じながら生きてきました。 相手の言動に対応しきれない時、私はどちらかというと言いたいことを十分に言えないことが多い

「呪いのことば」からの解放

人は知らず知らずのうちに「呪いのことば」を発している。 「呪いのことば」とは、目の前で起こっている出来事に対し、自分の価値観で「批判」や「評価」した結果、発せられる一方的で、攻撃的な数々のことばである。 例えば、 「約束を守れなかった私は、最低な人間だ」 「男には女の気持ちはわかるはずがない」 「遊んでばかりいたらバカになる」 などだ。 一方的な価値観に基づく会話法が大人から子どもへ受け継がれ、知らず知らずの内に、自分や他人を容赦なく傷つけている。実にたちが悪い。

人と人の間をあきらめたくない人へ

 ある日のこと、私が台所の流しに持っていくのを忘れたコップを見て、夫が長いため息をつきました。 「はー」 それを聞いて私は背筋が縮む思いでした。何度となく繰り返される我が家でのパターン。疲れた一日の終わりにちょっと忘れていただけなのに、そんな態度はひどくない?突然不機嫌を撒き散らすことをフキハラって言うの知ってる?私はイライラして怒りの衝動に駆られました。そして、そんな風になった自分にも自己嫌悪がつのり黙り込む。それが私のパターンでした。  三十年以上も共に暮らしていると、こ

多くの人に読んでもらいたい新刊『「わかりあえない」を越える』

『「わかりあえない」を越える』(海士の風、2021年)というNVCの本が今日、12月8日に出版されました。できるだけ多くの人にこの本を読んで欲しいのでこのnoteを書いています。よかったら最後までお読みください。 NVCとはNonviolent Communication(非暴力コミュニケーション)の略で、私たちが生来持っている思いやりの心を取り戻し、それを育むためのコミュニケーション法です。「思いやりのコミュニケーション」とも呼ばれ、開発したのはこの本の著者マーシャル・

人との本当のつながりを生む「技」と「精神性」とは何か

12月8日発売『「わかりあえない」を越える - 目の前のつながりから、ともに未来をつくるコミュニケーション・NVC』を読んで、初noteを書いてみました。 NVCとの出会い 私はこれまで人道支援・開発支援に長年たずさわってきました。最後に入社したのが合併したばかりの国際開発団体で、旧2団体の陣取り合戦の調整に奔走しましたが、真の統合はなされないままでした。平和構築分野が長かった自分として、組織を平和に導けなかったのは、とても心残りでした。従来の開発支援の構造に限界を感じる

やっとわかった!「子育ての正解は頭ではなく、心で考える」

初めまして、わたしは今とある本の制作に関わっています。本のタイトルは『「わかりあえない」を越える』。内容は「わかりあえない」を越えるためのコミュニケーションについて書かれた本です。家庭の中、職場の中、学校の中など、人によって様々だと思いますが、あらゆる人間関係の悩みは尽きないのではないかと思います。そんな中で私が、この本をおすすめしたい理由は「子育ての正解は、頭ではなく、心で考えるのが大切だ」と気づけたからです。 一年前のこと、この本の訳者が、私の子どもと接する機会がありま

「わかりあえない」壁に、はしごをかけて

『「わかりあえない」を越える』。この本のタイトルを目にしたとき、心の隅がちくりとすると同時に、どこからか光が射すような気がした。 「人はしょせんわかりあえないのか」と傷ついてきた私と、「それでもわかりあいたい」と思っている私。その両方があるからこそ、「できることなら、ぜひその方法を知りたい」とページをめくった。 著者のマーシャル・B・ローゼンバーグ博士はNVC(非暴力コミュニケーション)を自ら開発し、提唱してきた人だ。本書はその具体的な方法である「平和のことば」で話すこと

愛するわが子に、つい手をあげてしまった、あの日の僕に読ませたい本

せっかく家族と生活しているのに、険悪な雰囲気になることが多々あります。子どもやパートナーが、何かのせいでイライラしていたり、トゲトゲしたりしていて、それに反応して自分もつい怒鳴ってしまって、あとから後悔することありますよね。家族で和やかに笑っていたいと思っていても、なぜかそうならない。私もよくあります。私は娘二人の父親で、妻と四人で暮らしていますが、家族じゅうで喧嘩してしまうことはしょっちゅう。それで休日が台無しになることも。そんなとき、どうすればいいのでしょうか。 私は、

かなしみはちからに

どうしようもないかなしみや苦しみに苛まれたとき、人はそれをどう受け止めているだろうか。かなしみや苦しみの原因は、人それぞれである。 私たち“人”という種は、不完全なまま産まれてくる。産まれたその日から、ひとりで生きてゆくことは出来ない。だからこそ、「命を育てる・育てられる」という双方向の行為によって、ひとりひとりのなかにある「人を思う気持ち」「慈しみや思いやりの心」が花開いてゆく。 与え・与えられ、受け取り合う。私たちは自分以外の人とのつながりを、経験を通して深めてゆく。

「わかりあえない」を越えた向こうを見たい

たったいま、海士の風社から出る新刊『「わかりあえない」を越える」』を読み終えたところである。そして「わたしの内面で何が息づいているか」を感じようとしている。わたしは大いに触発され、好奇心をそそられた。 その、高揚した気持ちを大切にしたいと感じている。 『「わかりあえない」を越える』は非暴力コミュニケーション(NVC)というコミュニケーション手法の、目的や原理、そして世界各地でのさまざまな活用事例を紹介した本である。NVCを知らない方には方にはトンと縁がない言葉に見えるだろ

「熱」と「圧」とNVC

 思い返せば若かった頃は、自分の意見を臆さず表明できた。学生、若手という立場だった頃、先生や上司、先輩たちはわたしの生意気を面白がり、好きなように意見を言わせてくれた。わたしは周囲に恵まれていたのだ。  いつの頃からだろう。周りに自分より年下が多くなってきたのは。わたしが一生懸命になればなるほど、周りが譲ったり黙ったりしてしまうことに気づき始めたのは。年齢や立場が変わればコミュニケーションのスタイルも変えなければならない。わたしは自分の言いたいことを我慢し、伝えたいという熱は