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読書感想No.33『金子みすゞ童謡集』

こんにちは、天音です。
今回の読書感想は、『金子みすゞ童謡集』(ハルキ文庫)です。

私が持っているのは古い方だったので、もしかしたら少しリンクに貼っている新装版とは違うところがあるかもしれません。
新装版の表紙は可愛らしいですね。

金子みすゞさん。

名前を聞いたことがない人は珍しいのではないのかというほど、どの世代でも馴染みのある詩人です。

私は小学校の授業で取り扱った「私と小鳥と鈴と」しか知らなくて、他の作品が気になり手に取りました。

正直に言うと学生時代、詩の授業が苦手だったので楽しめるか不安だったんです。わけわからんと思うだけだったらどうしようと。

しかし、それは杞憂に終わります。

これは1番初めのページで読書を迎えてくれる童謡、「お魚」です。

海のお魚はかわいそう。

お米は人につくられる、
牛は牧場で飼われてる、
鯉もお池で麩を貰う。

けれども海のお魚は
なんにも世話にならないし
いたずら一つしないのに
こうして私に食べれる。

ほんとに魚はかわいそう。

衝撃でした。
本を開くまで童謡なんてなと思っていた自分が恥ずかしいです。

彼女の、柔らかで悲しい言葉に魅せられたかのようにページをめくっていきました。

金子みすゞさんの童謡には、唐突に「死」がぽんと出てくるんです。

大漁で喜ぶ人間に対し、海の中で行われているであろう鰯の弔いを唄います。
蚕が繭で眠り蝶になるように、人は墓に入り天使になると唄います。

人の立場に立っていれば次の瞬間には土になっているし、蜂になったり、芝草になったりしている。

くるくると世界の見方が変わっていく詩を読むうちに、優しい宇宙が目の前に現れるような気がしました。

童謡ゆえの、穏やかなリズム。
どの詩も言葉一つ一つが音や匂いや色を持っていて、金子みすゞさんが見ていたままの情景が目に浮かんできます。
彼女は山口県の現長門市で生まれました。
私は生まれてから瀬戸内海しか見たことがないんです。
しかしこの本を読んでいる間、私は確かに長門にいました。
彼女のみた海を、詩と一緒に臨んでいたんです。
読んでる文字がそのまま動き出すような本でした。

やさしいことばで、人間中心の価値観をひっくり返す。
子供のような柔らかいこころを見つめ直すきっかけになるような童謡集です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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