見出し画像

もったいないばあさんがくるよ

もったいないばあさんは、子どもたちに「もったいない」の心を教えてくれるちょっと怖くてファンキーで、神出鬼没で不法侵入してくるおばあさん。

建築設計における「もったいない」を、「もったいないばあさん」ならぬ「もったいないおじさん」がみてみます。

※2020/7/25改訂:TOP画像に色付け

本家はこちら


もったいないとは

[出典:デジタル大辞泉]
1 有用なのにそのままにしておいたり、むだにしてしまったりするのが惜しい。「捨てるのは―・い」「使わないでおくには―・い人物」
2身に過ぎておそれ多い。かたじけない。「―・いおほめのお言葉」
3不都合である。ふとどきである。もってのほかである。
「是は言語道断―・きお言葉かな」


土地がもったいない

建築をつくるときにどういった土地に建てるかは、かなり重要な要素です。
土地には一つとして同じものがないという記事を以前に書きましたが、その唯一無二の土地のポテンシャルを最大に引き出すことがその建築を特徴付けて良い建物にすると思っています。

街をあるくと土地がもったいないなと感じる建物も沢山あります。
例えば、真四角ではない土地のど真ん中に真四角の建物を建てたことでその周りの土地が中途半端に余っていて利用価値が無くなっていたり。傾斜のある土地を無理やり造成して段々にしたことで自然の形が失われ、下段の土地の空気の流れが悪くなったり。

逆に、その土地にしかないもの・そこからしか見えない風景や日当たりや風や周りの建物との関係性といったものを上手く扱うと、そのデザインに必然性が生まれます。

必然性というのはとても良いことで、「なぜそこにそれがあるのか」が分かると人は親しみを覚えます。親しみを感じればその建物は愛されます。結果良い建物になります。
これは不思議なもので、建築の知識が無くても理屈を説明されなくても必然性のあるデザインというものはみんなが理解できるものなんですね。その土地にあるべくしてある建物。そうみえる建物はその土地のポテンシャルを活かしているのです。

ここでいう使わないともったいないことは「土地のポテンシャル・そこにしかないもの」です。

もったいない01


空間がもったいない

どんな建物でもスペースには限りがあるので、出来るだけ使える空間を多く取るのが大事です。その為には無駄なスペースは無くしたいです。例えば、階段下や壁の厚みの中などを有効活用出来る方法を考えたり、天井内の厚みをギリギリまで薄くしたりします。
また、いくつかの用途を兼ねるスペースを作ることで部屋数を減らし、広い空間を確保することもあります。

無駄に廊下が長く、その分部屋が小さくなっていたり、収納にしたとしても使いにくいようなデッドスペースが出来たりということはもったいないです。

ここでいう使わないともったいないことは、「空間の広さと使いやすさ」です。

もったいない2


素材がもったいない

材料には、例えば水に強いものと弱いもの、経年変化の美しいものとそうでないもの、など色々な特性があり、適材適所で選ぶべきです。料理と同じかもしれません。
美味しいものは美味しく調理されれば、より美味しくいただけるように、良い材料は良く見えるように使うと良いのだと思います。

高いものでも安いものでもその使い方を間違えてしまえばその材料は無駄になります。もったいない。

ここでいう使わないともったいないことは、「素材の特性(味)」です。

もったいない3


既存物のもったいない

例えば家を建て直す時、全部を解体せずに一部残したりすると工事費が割高になります。だから、全てをゴッソリ無くしてから新築することが最も合理的で一般的です。
でも、もしかしたらまだ使えるものがあるかもしれない。実はお客さんも大きな声で言わなかっただけで、愛着のあるものをまた使いたいという気持ちがあるかもしれない。

もちろん費用やデザインとの折合いをつけなければならないので、全てを上手く利活用出来るわけではありません。
「まだ使えるから」ということよりも「まだ使いたい!」と思えるモノならばどうにかして残そうとすることが良いように思うのです。

ここでいう使わないともったいないことは、「使いたいと思う気持ち」です。

もったいない4


敬う心

もったいないばあさんは、「もったいないとは自然の恵み、いただく命、作ってくれた人に感謝する気持ち、他の人や物を大切に思う思いやり。それを一言でいうなら、敬う心。」と言っています。

建築も同じかも知れません。
土地空間素材既存物その全てにも自然の恵みがあり、作ってくれた人がいます。
それを敬う心がもったいないということなのですね。

ふーむ。しみじみ良い言葉です。
日本語ってステキ。

この記事が参加している募集

noteを始めてから、考えていることをどう書いたら伝わるだろうかと試行錯誤することが楽しくなりました。 まだまだ学ぶこと多く、他の人の文章を読んでは刺激を受けています。 僕の文章でお金が頂けるのであればそのお金は、他のクリエイターさんの有料記事購入に使わせていただきます。