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ワーケーションは自費で行うべきか、会社のお金(経費)で行うべきか?

私はいずれも「あり」だと思いますし、それぞれのメリットを勘案した上で、ケースbyケースで使い分ければ良いと感じています。
(なにごともメリットとデメリットがありますから)

「ワーケーションは自費でやったほうがよい」
この主張をされる方は、

・自費で参加したほうが、仕事に対するコミット感が高まる
・ワーケーションを通じて出会う相手との信頼関係を強固にする

などのメリットを説明されています。私も自分ごととして心の底から共感します!

一方、私は意図的に「ワーケーションは会社のお金(経費)で行う(実施する/参加する)」を推奨および促進しています。今回は、そのココロをお話ししようと思います。

1.ワーケーションの民主化を進めたいから

各種調査の結果を見ても、まだまだ、日本ではワーケーションに対する正しい理解や体験が進んでいるとは言い難いです。観光色、レジャー色の見られ方も強いのか……

「一部の意識高い経営者やフリーランスのためだけの、雅な働き方の選択肢」
「特異体質(?)な人たちの働き方」

などの誤解もみられますし、

「旅先で仕事が捗る訳がない」
「休日に仕事させるなんて、どうよ……(平日にやればよい訳ですが)」

なるネガティブな声も。

経営者や個人事業主や意識の高い会社員が、私費で参加しているだけではなかなかそのバイアスを払拭する動きにすることができない。依然、ワーケーション=「一部の意識の高い人たちのためだけの選択肢」の域をなかなか抜け出すことができない

会社の経費でもって参加できる人を増やせば、それだけワーケーションを体験できる人口が増えます

そこから、「ワーケーションの正しい活用方法」を組織内で議論することも出来ます。

世の中(特に日本社会には)、自分から新たな行動を起こすのを躊躇する奥ゆかしい人もたくさんいます。私自身、全国の組織で「組織変革」「働き方改革」などに向き合う上で、そのような人たちをたくさん見てきました。

一方で、組織がきっかけや多少の道筋を用意しさえすれば、乗ってくる人もいる。こういう人たちが、組織の景色を変える力強いフォロワーになったりします。

ワーケーションに経費で参加できるようにする。それは、変革のフォロワーを生み出す後押しであり、なによりワーケーションを民主化するための意義が大きいと感じています。

新しい文化の黎明期だからこそ、組織のお金を投じてまずはより多くの人に体感してもらうきっかけ(大義名分)を作ってもらいたいです。

2.むしろ本気の参加者を増やすことができる

私は(自分が運営または参加している有料学習プログラムや有償コミュニティを見ても)、ワーケーションを経費で参加するようにすることで、むしろ本気の参加者が増える効果があるととらえています。

会社にお金を出させる。そのためには社内説明や調整も必要でしょう。
その調整稼働がかからない組織であったとしても、1日や数日の業務時間を使う訳で、本人にそれなりの成果を出したり変化を報告する義務が発生します。数千円の書籍を購入するのとはワケが違います。

つまり、会社のお金でワーケーションに参加しようとする人は、その時点で本気度が違うのです。

以下、関連記事です↓

またワーケーション黎明期のこの時期だからこそ、会社の経費でワーケーシションに参加してみて(あるいは参加させてみて)、ワーケーションに向く人/向かない人を見極めてみても良いかもしれません。

ワーケーションのような新しい働き方は、向かない/成果を出せない人に無理強いするようなものではないですから。

トライアルの意味でも、会社のお金を使ってワーケーションを経験してみて欲しいと思います。

仕事をするのだから、そしてオフィスでは得られにくい価値を生み出すのだから、堂々と会社のお金でやればいいのです。

3.観光業のビジネスモデル変革(BtoC⇒BtoBほか)を興したい

私の本音はここです。

私は、ワーケーションはこれまでの観光業や地方都市のビジネスモデルを変え、新たな「勝ちパターン」を生み出す変革のチャンスととらえています。

(1)BtoC(個人向け)からBtoB(組織向け)のビジネスモデルシフト
(2)「なにもない」土地のビジネスチャンス創出

平たく言えば、地方の平日の観光閑散時期・時間帯に、大都市の企業のお金で人の動線を生みお金を落としてもらうチャンスなのです。

薄利多売になりがちな個人客向け観光ビジネスを、高利益の法人向けビジネスに転換するチャンスでもあります。

また、個人の旅行客にお金を落とさせる「BtoC」モデルの延長線上では、り既得権益の強い有名観光地が依然優位ですよね。

なにもない土地にビジネス動線を生むことができる。そこにビジネスモデル変革の意義と、地域活性の可能性があると感じています。

関連記事もご覧いただけたら↓

個人の私費参加だけでは、いつまでたってもワーケーションはBtoBとして認知されないですし、BtoB市場も活性化しません

折角のチャンス、既存のビジネスモデルの延長線上ではもったいないと思うのです。

「働く景色」を変える
「働き方」を変える
地方都市の新たな「勝ちパターン」を創出する

それらをライフワークとしている私としても、旅行や観光のBtoBビジネスモデルシフトを後押ししていきたいのです。

東京など大都市の大企業のみならず、地域の企業の平日の地域動線を活性化するメリットもあると思います。

地域の人たちほど、地域の観光施設や宿泊を知らない行かない。わりとあるあるだと思うのですよ。

少し話がそれますが、えちごトキめき鉄道の鳥塚社長の以下の記事が大変勉強になります。
COVID-19の蔓延で広域移動が憚られる時勢下において、地域の観光列車「雪月花」を地元の小学生の修学旅行で利用してもらったお話し。

対象は小学校ですが、ある意味地域の組織に対するBtoBであり、地域の組織(およびそこに属する人たち。ここでは小学生や教職員の皆さん)に観光資産を体験してもらう、知ってもらう景色の変化をもたらした私はとらえています。地域の人たちに、観光客目線や利用者目線で、地域の資源や資産の新たな可能性に気づいてもらう。その効果はまちがいなく大きいでしょう。

ワーケーションの話も同じだと思うのです。

大都市の企業の人たちがワーケーションをしに地域にやってくる。だけではなく、地域の企業の人たちも学習や事業企画やディスカッションをしに(あるいは自分の仕事に集中しに)ワーケーションをしてみる。あるいは、他都市の企業の人たちと一緒にディスカッションする

地域の企業も地域にお金を落とすことができ、かつ地域の企業の人材育成や知の創成やイノベーションを生むことができます。

そのためには地域の企業もテレワークのような働き方やIT投資をし、地域の人たちが地域に出て来れるようにする必要もありますね。

4.地域や観光業の人たちのマインドシフトを促したい

政府や行政や観光業の経営層はワーケーションに力を入れようとしているものの、観光施設の現場の人たちはワーケーションに「ピン」と来ていない

その温度差を私自身、地方都市でワーケーションしていて感じています。

たとえば先日訪れた、静岡県郊外のある宿泊施設。
カフェがあり、電源もテーブル単位で用意されている。明らかにビジネス客ターゲットにしているような、平日日中利用プランもある。

私はフロントのスタッフさんにこう声をかけてみました。

「ここならワーケーションできそうですね」

直後「はぁ?」って感じの顔をされました

明らかに「ワーケーション」なる言葉をご存じない様子。同様の反応が返ってきたのは、この宿泊施設だけではありません。

ワーケーション利用して「『ワーケーション利用』で領収書を書いてください」とお願いすると、「???」な反応をしてくる施設(担当者)もまだ少なくないのです。

一方で、その近くのカフェのオーナーさんなどは「ワーケーション?へえ、そんな働き方があるんですね。知らなかった。勉強になります!」と興味津々で話を聞いてくださいましたし、帰りがけに「またお仕事しに来てくださいね。延長コード喜んでお貸しますから!」と笑顔でいってくださいました。
(そのようなお店で仕事する時は個人的に、平日の観光客がいない空いている時間を選ぶようにしています)

現場のスタッフはワーケーションなる言葉を知らない。聞いたことがあっても、ピンと来ていない可能性もある。

当然です。いままでレジャー客、観光客しか相手にしてこなかったのだから

その状況で、ワーケーション顧客目線のサービスを提案したり、ビジネス客の悪気ない不便に気づいて解消する感覚が芽生えるでしょうか

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「最近、ワーケーションって言葉で利用する人が増えてきた」
「パソコン持ち込んで仕事してる人たち、あの人たちはワーケーションをしているのか」

「ワーケーション」で領収書を書いてもらう人が増えれば、観光業の現場のスタッフもワーケーションなる利用があることの肌感覚を持つことができます

また「ワーケーション」なる言葉が観光事業者の帳簿やシステムに残ることで、本社などの事務方もワーケーション利用を感じることができます

(少し話は変わりますが、私がアナログ(手書き・印刷・郵送・切り貼りなど)の事務手続きを要求する顧客(企業など)に #事務作業サーチャージ を請求するのも、請求書に「事務作業サーチャージ」の一文があることにより顧客の企業の本社や経理に「アナログな事務作業がコストを生んでいること」を認識してもらうためでもあります。日々の商取引や手続きの書類に記す言葉は、相手へのメッセージの意味もあります)

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たとえ利用客がワーケーションをしていたとしても、自費で黙って利用しているだけでは、一般観光客に溶け込んでしまいます

その結果、観光事業者側にワーケーション利用が増えている、ワーケーションのニーズがあることすら気づいてもらえないかもしれません。

企業のワーケーション利用が増えれば、地域に対するインパクトも大きく、行政や観光業の人たちも、ワーケーションしやすい動線作りに動きやすいですね。

個人的にもワーケーションしやすい、仕事しやすい地域施設・宿泊施設・飲食店や、個人でも利用できるワーケーションプランが増えて欲しい

その思いもあって、「ワーケーションは会社の経費で」を私は推進しています。実際、仕事や仕事に必要な学習などをしている訳ですし(要はレンタルオフィスを利用するのと変わらない)。

5.おわりに

以上、私が「ワーケーションは会社のお金(経費)で」を推す背景をお話ししました。

繰り返しになりますが、私費でワーケーションを行うメリットや効果ももちろんあると考えています。考え方、メリット、利用シーン、解決したい問題や課題、目指す世界観などに応じて、柔軟に使い分けていきたいですね。

2022年3月4日に『ワーケーション』に関する章を掲載した新刊、『新時代を生き抜く越境思考』を上梓します。

ワーケーションを実施する側(企業など)/ワーケーション環境を提供する側(行政・観光宿泊施設・旅行業界など)双方への提言をしています。

是非お読みになってワーケーションのあり方をディスカッションしてみてください! 特に、行政の産業創成や地域創生担当者・観光業・旅行業を営む方には本気で読んでいただきたいのです!!!

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