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ワーケーションは観光業主軸で企画するとうまくいかない(私見)

私自身が、ワーケーションや #ダム際ワーキング を重ねて痛切に感じた所感です。

全国の自治体が、観光庁の助成金などの後押しもあってワーケーションモニターツアーなどを盛んに企画し、旅行代理店などとタイアップして集客しています。

それ自体はとても良いことだと思うのですが、プランの中身を見ると、なんかモヤモヤするのです。

・3泊4日~1週間連続滞在などなにかと長期滞在させたがる
蕎麦打ち体験、陶芸体験、芸能鑑賞など文化体験やレジャー体験モノがややらと組み込まれている

プランを見た瞬間、私は反射的にこう思いました。

「これ、会社のお金で参加しにくくね?」

何て言うか、ただでさえワーケーションって遊びと勘違いされがち、誤解されがちなのに、それをさらに助長してどうすんのよ! みたいなツッコミを入れたくなるのです。

「遊びに行くだけですよね?」
「いいよな、人事や総務の担当者は会社のお金で遊びに行けて……」
そんな周りの社員の冷ややかな目線や、経理担当者が嫌がる顔がリアルに目に浮かんでしまう……

ワーケーションで必死に成果を出している人たちから見ても違和感が……

現に、私は先日ある旅行代理店の事業責任者の方から「集客にたいへん苦労している」とご相談をいただいたばかりです。そりゃそうでしょう。会社のお金と時間を使って参加しにくいプログラムなのだから。

バケーションは「ついで」。ワークを軸にしたワーケーション。

たとえば業務合宿職種や会社を越えた管理職同士で特定のテーマのディスカッションなどを行う越境学習プログラム、あるいはいままでは都内の展示場やホテルで行っていたようなビジネスフォーラム学会などを地方都市で行う(要は開催場所がたまたま地方都市みたいな感じ)……

ただし、食事は地の食材を使った美味しいものをいただくことができる。夜は温泉に浸かることが出来る。朝や合間にリフレッシュを兼ねて、周辺を散策したり、地域の歴史を学ぶ時間がある。

このほうが、社内の理解も得られやすく、ビジネスパーソンの参加のハードルも下がるのではないでしょうか?
(通常の出張や研修扱いでイケますし)

あくまでワークが主軸。ただし、普段と景色を変えることでコラボレーションやイノベーションが生まれやすくなる。平日に地方都市にお金を落とすことが出来て、企業のCSRにもなる。そのようなワーケーションが増えて欲しいです。


しかしながら、観光業の専門家にはその観点やノウハウがない(おそらく)。

観光業の人たちだけでワーケーションを企画しようとするから、企業やビジネス客のニーズやシーズを満たすことができない

私は改めてそう確信しました。

行政の観光課の人たち+旅行代理店+現地の観光協会・観光施設・旅館・飲食店だけで企画したら、そりゃ観光産業によるプロダクトアウト(商品ありき)の発想になりますよね。悪気なくバケーション寄りのワーケーションになり、企業勤めをしている人たちの参加のハードルを上げる。

なにより、観光を主軸にしたら既存の有名観光地が優位、既得権益のある土地が優位でしょう。全国各地、わざわざレッドオーシャンに飛び込むのが正しいのでしょうか?

個人的にも、蕎麦打ち体験や、陶芸体験よりもむしろ……

・宿のチェックイン時間を早めに(例:12時)/チェックアウト時間を遅めに(例:11時、12時)にしてくれたり
・部屋で好きな時間に食事できる(お弁当などの)オプションがあったり
・14時過ぎても昼食難民(「ニジカベ」)にならない選択肢があったり
・水曜日も営業してくれたり
・「入湯税」や「宿泊税」のような、キャッシュレス決済してもわざわざ別で現金支払わせて領収書を増やす面倒な仕組みをなくしてくれたり

したほうが、よっぽどワークに集中できてありがたいです。

そういう、ワークにストイックなワーケーションスポットやワーケーションプランを切望します。
(観光やレジャーの押し売りのようなワーケーションは、続かないと思いますし)

……というわけで、ワーケーションを企画する人たちに改めて一言。

「お願いですから、利用するビジネスパーソンの視点に立って企画してください。ビジネスパーソンを巻き込んでください」

なんでしたら、私企画に加わりますので。。。ワーケーションしやすいプランや施設本気で増えて欲しいし。

2022年3月発売の新刊『新時代を生き抜く越境思考』でも(第4章 ワーケーション、第5章  地方都市/レガシー組織で)問題提起と具体的な解決に向けた考え方と事例を綴りました。

是非、皆さんでもディスカッションしていただけたら嬉しいです。

以下、関連記事をいくつか。

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