「組織カルチャー(文化)」をテーマにした企業内トークイベントをやってみて
2023年10月初週、日系大企業(以下A社)のご依頼を受け僕(当社)は「組織カルチャー(文化)」をテーマにした企業内トークイベントのモデレータをしました。めちゃめちゃ良いイベントだったので、その内容の一部を共有します。
最近、組織文化やカルチャーをテーマにした講演やモデレータの依頼が増えてきており個人的にも嬉しいです(今年の秋冬だけで既に5本)。僕はこれまで「働き方改革」「DX」「ダイバーシティ&インクルージョン」などの講演をすることが多かったですが、いずれも組織カルチャー変革が肝であり、目を背けてはならないテーマだからです。
とはいえ、文化・カルチャーは概念的で「ふわっ」としがちなコトバ。何かしらの材料やもの差しを投げ込みつつ、組織を構成するメンバーが、「良い文化とは」「良いカルチャーとは」を自分たちなりに考え、自分たちなりに言語化する所作や習慣が極めて重要。このイベントでもそこにチャレンジしました。
カルチャーとは「擦り合わせて」より良くしていくものである。
1.背景
今回のトークイベントは、A社が社内(グループ会社含む)に向けて毎年開催している技術交流会の1プログラム。A社の最新技術•製品•サービスの展示や解説とともに、今年度は社員の皆さんが自社の組織文化を振り返り考えるきっかけを創りたい。そのようなコンセプトのもと、A社の社員の皆さんによりこのイベントが企画されました。
(そして、僕(当社)をモデレータおよびプロデュースの支援役としてご指名いただきました)
2.工夫したポイント
今回のトークイベントで工夫した点(事務局の皆さんと一緒に試行錯誤して実施した点)は以下の5つです。
⑴パネラーは以下の3名とした
•A社の社員
•他業界他企業(以下B社)のゲスト(組織開発マネージャ)
•モデレータ(沢渡=組織開発の専門家)
⑵A社のパネラーには、事前にB社を訪問してもらいB社のカルチャーを体感してもらった
⑶B社のゲストにはA社のカルチャーに関する情報を事前インプットしつつ、直前に同社歴史館と技術展示を見学してもらいA社のカルチャーを体感してもらった
⑷事前アンケートとチャットで、A社社員(聴講者)が組織カルチャーに対して感じていること•疑問•質問などを投げ込んでもらった
→トークイベント本番で適宜パネラーが回答
⑸グラフィックレコーディング(グラレコ)を併行し、トークの内容を可視化しかつ記録した
他業界他社のカルチャーを知ることで、自社のカルチャーを客観視するきっかけになります。
なおかつ、A社のパネラーを一般社員(人事部門でもマネージャーでもない)とすることで、聴講者にパネラーと同じ目線で、組織カルチャーを「自分ごと」として考えてもらう場に仕立てました。
事前アンケートやライブのチャット、およびグラレコを併用した狙いもそこにあります。ちなみに、グラフィックレコーダー(グラレコをする人)はA社の社内から手挙げ式で募りました。
「初めてだけれどもやってみたい!」その声があがり、僕も嬉しかったです。
A社にとって初の試みもいくつもありました、だからこそチャレンジする価値がある。この企画そのものを、新たなカルチャーの萌芽の場にもしたい(僕の意気込み)。
事務局の皆さん、モデレータ(僕)、B社ゲストで3回のオンラインミーティングを重ね当日を迎えました。
3.そもそも組織文化・カルチャーとは?
文化・カルチャーとは、平たく言えばそのコミュニティ(組織や地域など)の人たち特有の行動様式ですが、僕(モデレータ)はトークイベントの序盤に以下の意味づけをしました。
この意味づけにより、組織文化・カルチャーは自分たちの自覚的あるいは無自覚的な行動の積み重ねで変え得ることを聴講者の皆さんに強く認識していただきました。
4.トークイベントのプログラム
トークイベントはトータルで90分。以下の5つのテーマを、概ね1テーマ10分~15分程度でパネラー3人で対談しました。
オンライン視聴者からのチャットメッセージ(質問やコメント)は、随時事務局のメンバーが紹介してくれ、パネラーが触れながら/回答しながらインタラクティブに進行しました。会場参加者からの質疑応答の時間も設けました。
5.文化・カルチャーの良し悪しは、他者が決めるもの
組織文化・カルチャー(地域カルチャーもそうですが)の良し悪しは誰が決めるか? 他者が決めるものです。
さらに言えば、自分たちの文化・カルチャー(行動習慣や思考習慣)の良いところや悪いところは、中の人たちは気づきにくいものです。
(周りに気を遣って、言いにくい場合も)
故に外の風に当てる(他社を知る。他社の人からどう見られているかを知る)のが極めて重要。
今回、
・B社のカルチャーを体感したA社の社員にまず感想を語ってもらい
・B社のマネージャーがそのカルチャーを解説
次いで
・A社の社員が考える自社のカルチャーの特徴をざっくばらんに話し
・「どうやって良い文化・カルチャーを創っていこう?」の問いかけをしました。
両社のカルチャーの良し悪しの評価は一切せず、(まったく異なる業界の)他社のカルチャーを知り、自社のカルチャーを研ぎ澄ませる。そこに集中しました。
6.今回のトークイベントの印象的なフレーズ
今回のトークイベントで、パネラー3名から出た印象的なフレーズを一部紹介します。
7.カルチャーの振り返りはあらゆる組織に必須
今回のように、組織文化・カルチャーを振り返る場は、組織とそこではたらく個をアップデートし続ける上で極めて重要な機会だと僕は改めて感じました。
いま、世の中を見回してみると……
・良いカルチャーの基盤があるにも関わらず、中の人たちがそこに気づかず活かしきれていない「もったいない」組織
・悪気なく独り善がりなカルチャーで、無自覚にメンバーや関わる他者をアンチに変えてしまう「残念な」組織
いずれも散見されます。
後者は大企業のみならず、(モーレツになりがちな)スタートアップ企業にも見られがちなので要注意。
(数名での立ち上げフェーズはそれでもよいのですが、ある程度年数を重ねると and/or 組織の規模が大きくなると問題に)
後者が進行すると、組織カルチャーはどんどんと独り善がりかつ内向きになり、これまた昨今社会問題になりつつある「企業ガバナンスの崩壊」にも発展しかねません。
良いカルチャーを伸ばすためにも、そして悪いカルチャーを改めるためにも、定期的なカルチャーの振り返りとアップデートは組織や地域に不可欠な所作であり、組織開発の重要なプロセスなのです。
そして、そこには他者の目線が欠かせないのです。なぜなら、カルチャーの良し悪しは他者が決めるものだからです。
カルチャーとは他者と、中の人たちと、擦り合わせてより良くしていくもの。
ちなみにここで言う「他者」とは「組織外」の人だけではないです。
組織の中でこれまで、どちらかというとマイノリティ扱いされていた人たちも含まれます。
そして、これからの時代、マイノリティを正しくエンパワーメントしていく取り組みがあらゆる組織で求められますね。
と言う訳で、組織文化•カルチャーの話はいわゆるダイバーシティ&インクルージョンにも深く関連するのです。
ダイバーシティ&インクルージョンのメッセージも僕たちはアップデートを重ねており、本質に近づいてきた実感があります。近々このブログでも片鱗をお伝えしますし、講演や『組織変革Lab』(後述)でも研ぎ澄ませてお話します。
今回、すばらしい越境と共創の機会をともにしてくださったA社事務局とパネラーの皆さん、自分ごととして組織文化・カルチャーをとらえてくださったA社社員の皆さん、B社のマネージャーさん(組織開発の同志)、ほんとうにありがとうございました。日本の組織はまだまだ変われる。その確信と自己効力感を僕は得ました。
引き続き、僕たちは日本の組織や地域のカルチャーのアップデートに注力していきたいと思います。
このような講演、対談、モデーレータのご依頼は嬉しいですし、皆さんと一緒に本気で(自分ごととして)良い景色を創っていきたいと思います。是非、お声がけください。
景色が変われば、組織は変わる。(当社のミッションです)
半径5m以内から、組織の景色、地域の景色、変えていきましょう!
以下は僕たちが提供している、組織文化・カルチャー変革に関連の深い書籍とプログラム(組織変革を目指す企業間・オンライン越境学習プログラム)です。