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やっぱり対面じゃないと分かり合えない……んなこたぁない。足りないのは「対面」ではなく「対話」

対話の重要性。僕はこのブログや書籍、連載、および『組織変革Lab』などの組織開発プログラムなどでも折に触れて強調していますが、今回も対話について綴ります。


1.対話とは

先日、和歌山県の田辺高校で行われた  #キャリア教育ワーケーション 越境学習プログラムの講演(テーマ:対話と共創)で、僕は対話について次のような定義をお話ししました。

対話の定義(by あまねキャリア)

#キャリア教育ワーケーション の様子は以下の記事をご参照ください。

対話とは、意味・背景(・期待役割)を伝え合い、相手と景色を合わせるコミュニケーションである。

さて、あなたは私たちは、対話が出来ているでしょうか?
対話したつもりになって、自分たちの主張や思惑だけを一方的に相手に押し付けていないでしょうか? 

この記事では、「背景」を伝え合いの部分にフォーカスしたいと思います。

2.「来月、シカゴに行ってもらえますか?」

……と、くどくどと解説する前に一つ例え話をしましょう。
以下は前述の #キャリア教育ワーケーション で高校生・社会人の参加者の皆さんにも出した例題です。

あなたは企業の管理職です。あなたもメンバーの日本国内の事業所に勤務しています。来月、シカゴ(USA)で行われることになったカンファレンスに、あなたのチームメンバーに参加してもらいたいと考えています。
そこで「来月、シカゴに行ってもらえますか?」とメンバーにチャットとしたところ、「無理です」と回答が返ってきました。この時、あなたはメンバーに対してどんな気持ちを抱くでしょうか。

対話ができているかを問う例題
対話が出来ているかを問う例題

「さすがに、唐突過ぎたか……」と思い、あなたは考え直すかもしれません。それならば良いのですが、世の中には「仕事に対する意欲がない」「職場への貢献意識が低い」と思ってしまう人もいます。

それはあまりに一方的かつ独善的ではないでしょうか。

この例はさすがに極端かもしれません。しかし、私たちは日々のコミュニケーションにおいて、ついつい相手の背景を理解しようとせず自分たちの都合だけを押し付けようとしてしまう。なおかつ一方的に相手のやる気や姿勢を決めつけて判断してしまう。これは極めて危険かつもったいないです。

3.「背景」を聴き合っているか? 決めつけていないか?

背景を聴き合う、伝え合う。相互コミュニケーションを成り立たせる上で、極めて重要な初手です。相手にも事情があります。たとえば、先の事例では……

・他の案件が立て込んでいて、いま海外出張する訳にはいかない
・来月、家族が入院することになっている。そのケアがあるため来月の海外出張は勘弁して欲しい

などの事情を、相手(メンバー)は抱えているかもしれません。

あるいは、

・別件で忙しくて事務手続きなどの間接業務に対応できない。誰かが海外出張のための稟議書作成、航空券や宿泊施設などの手配をしてくれるのであれば可能

など「条件付きでOK」のケースもあるでしょう。

さて、あなたは、あなたの職場では、日々相手の背景をきちんと聴く習慣があるでしょうか? なおかつ、自分の背景をきちんと相手に伝える習慣があるでしょうか?

4.「思い」や「感情」も伝えていい

ここで言う背景とは、「事情」にとどまりません。「思い」や「感情」も背景には含まれます。

先の事例をもう一度見てみましょう。

「シカゴに行ってもらえますか?」
「無理です」

この「無理です」の裏にある、思いや感情のバリエーションも複数想定できるでしょう。

・行きたくない。勘弁して欲しい
・めちゃくちゃ行きたい!良い経験にも勉強にもなると考えている。しかし来月は無理。残念……
・今回は諸事情があって無理だが、次の機会は是非行きたい!

相手の思いを聴かず(または、さまざまな思いの可能性を想定せず)、その場の反応や"Yes""No"の回答だけで相手のやる気を一方的に決めつけるのは失礼です。また、メンバーの意欲や能力を無駄に削いでしまう「もったいない」ことにも。そうして、相手との関係性やチームの空気を勝手にギクシャクさせていないでしょうか。相手を無力化していないでしょうか。

ひょっとして、
「部下は上司(または顧客)の言うことを黙って聞くもの」
「私情を伝えるなんてもってのほか」

って思っていたりします⁉ ヤバっ……

生真面目/ストイックな組織ほど、「思いを伝えるのは良くない」「仕事に感情を持ち込むのは良くない」ような思い込みや決めつけが強いような気がしてなりません。
そうして、思いや感情を聴かずに相手のやる気を勝手に判断してしまう。なおかつ、自分の思いや感情を伝えようとしない。

しかし、それでは相手とフラット(対等)な関係で共創できません。お互い気持ちよくものごとを進めることなどできないでしょう。

「いまのあなたの思いや感情を聞かせてください」

そんな一声をかけるところからでも構いません。社内のメンバーに対してだけではなく、お取引先など社外の相手に対しても然り。相手の思いや感情を聴く習慣、思いや感情を表現して良い文化を創っていきましょう。

あなたが受け手(メンバー)の立場の場合、率先して思いや感情を添えて意見をするのもアリです。

ロジックも大事ですが、私たちは思いや感情を持つ習慣、思いや感情を適切に伝え合い聴き合うトレーニングも重ねたい。思いや感情は価値創造や課題解決、もっと言えば仕事に良きストーリーと他者への「巻き込み力」を生むための源泉です。

そして、思いや感情を育むためにも、私たちはさまざまな体験をした方が良い。僕はこれを「体験資産」と呼んでいます。

5.足りないのは「対面」ではなく「対話」

あなたの組織では、そのような丁寧な景色合わせをせずに「対面じゃないと分かり合えない」などと言い訳していないでしょうか。

対面じゃないと分かり合えない? んなこたぁない。

足りないのは「対面」ではなく「対話」です。
(もちろん対面の方が伝わる/受け取れる情報が豊富なのも事実ですが、それとこれとは別問題)

対話の習慣化や対話力向上の努力をせずに、「だから対面じゃないとダメ」などと安易に結論づけないでいただきたい。
意思決定のスピードも遅くなりますし、事情がある中でテレワークやオンラインで一生懸命仕事をしている人たちにも失礼です)

対面のコミュニケーションももちろん有意義
です。
しかし、対面だからといって一方的な決めつけや、相手の背景を伝え合わないコミュニケーションをしていては意味がない。
そしてチャットやメールでもお互いの背景を聴き合うこと、伝え合うことは出来ます。

むしろ対面は相手の様子が分かるだけに、目に見える相手の初期反応や振る舞いで相手の思いや感情を決めつけてしまいがちな部分も大なりです。いわば、余計なノイズが入りすぎてしまう。
決めつけはご法度。そして経験による勘を過信するべからず。言葉で意図を確認し合う習慣を身につけましょう。

手段に関わらず、まずは以下の3つを意識してコミュニケーションしたいです。

1.背景を聴き合う/伝え合う
2.思いや感情を表現して良い
3.相手の思いや感情を勝手に判断しない(判断をいったん保留にする)

対話の3か条

もちろん、対話しやすい雰囲気や環境を創るのもマネジメントの役割です。

6.対話のトレーニングをしよう

対話できない組織。相手の背景を聴こうとしない依頼者側(管理職)、自分の背景を伝えようとしない受け手(メンバー)側、いずれにも問題があります。

言ったことをやらせる/言われたことをこなす、指示命令型、上意下達型、下請け型が色濃い組織ほど、経営陣もマネージャーもメンバーも対話をする習慣も能力も身についていない。それでは、いつまでたっても対話も共創も出来るようにならないです。

・悪気なく上から目線
・悪気なく一方的
・悪気なく独善的


これらの姿勢が滲み出てしまい、相手を不快にさせて遠ざける

対話できる組織になるためには、全員が対話のトレーニングを受ける。そうして、半径5m以内(日常の仕事のシーン)から対話を習慣化する。
対話は能力開発により一定、出来るようになります(センスや勘頼みではありません)。

まずは対話の能力開発に正しく投資をしましょう!

対話能力向上のために、他者(他社)との越境学習を皆で体験してみるのも効果的です。同じ組織内の人たちでは、どうしても上下関係など、既存の関係性が作用してフラットな対話をしにくいこともあります。
指示命令関係もしがらみもない、他社や他組織の人たちとのほうがフラットな対話が生まれやすいむしろ初対面の相手の方が(お互い相手を知らない前提がありますから)、背景や思いを伝えやすい。僕たちもさまざまな越境の場に立ち会い、それを深く実感しています。
(越境のバリエーションと効果については僕の著書『新時代を生き抜く越境思考』でも触れています)

良い対話が解決するのは、個人間の関係性だけではありません。
対話能力の向上は組織そのもの共創体質イノベーション体質DX体質D&I体質に変えます。

以上、対話と組織開発の関係を僕たちなりに紐解いてみました。

最後にもう一度問います。

あなたは、あなたの組織は、対話が出来ていますか? 本当に?

※僕の顧問先の一社、NOKIOOも対話能力開発プログラムを提供しています。すごく良いプログラムですので、宜しければ是非あなたの組織でも取り入れてみてください。

7.僕が提供できる参考情報

▼越境・共創に関する書籍

▼部門(部署)の対話力向上のための書籍

▼対話と共創の習慣化のための、企業間・オンライン越境学習プログラム『組織変革Lab』

▼マネジメント、チームワーキング、キャリア形成などを学ぶオンラインスクール『スクラ』