#旅と対話と組織開発 〜Vol.003 岐阜県加茂郡白川町の皆さま
沢渡あまねが、組織や地域の景色を変えている変革実践者と対話しエンパワーし合う旅日記、 #旅と対話と組織開発 。今回は、第1回目、第2回目とは趣を変え、特定の個人ではなく町の地域活性とファン創りに取り組んでいらっしゃる「皆さん」にフォーカスします。
その町とは、岐阜県加茂郡白川町(しらかわちょう)。岐阜県の東南部に位置する、人口およそ7,000人の山間地の小さな町です。
白川町に行こう。そう思ったきっかけは、3月に浜松・天竜で行われた #ダム際共創ミーティング でのコジマユウイチロウさんとの会話。
その会話で、ユウイチロウさんに白川町をお勧めされ「是非、行ってみたい!」と思った僕。白川町のキーパーソン、鈴村薫(すずむらかおる)さんを紹介いただきさっそくメッセンジャーで連絡を取りこの度訪問することになりました。こういう連鎖、大好き!
僕たちの顧問先でもあり共創パートナーの、ヤマハ発動機 クリエイティブ本部 吹田善一(すいたよしかず)さんもお誘いし、同じ景色を見に。
浜松からはクルマでおよそ2時間半(東名高速・東海環状自動車道利用)。気分を変えながら向かうには、ちょうどよい距離。どんな出会いが待っているのか楽しみです。
集合場所は、ゲストハウス『晴耕雨読とみだ』さん。
古民家を改装した、里山のどかなコミュニケーションスペース兼宿泊施設です。
(とても)明るい笑顔と声で、初対面の僕たちを迎えてくれた鈴村さん。
鈴村さんは、白川町のご出身で最初はアパレル業界に就職。
都市部に出たものの、体調を崩され療養もかねて再び白川町に。土地と人の優しさに癒され、そのまま白川町でリ・スタートすることに。
白川町役場に転職され、いまは同町の移住交流サポートセンターに就業。町の活性や関係人口増に元気に取り組まれています。
お会いする前から、チャットのやり取りでも「白川町が好きすぎて 笑」と白川愛がダムの放流のように溢れ出ていた鈴村さん。
今回の行程もすべてアレンジいただき、白川町で地域活性のチャレンジをなさる皆様ともお引き合わせいただきました。ありがたや!
その同志のお一人が、塩月祥子(しおつきしょうこ)さん。
塩月さんは名古屋から移住され、現在は鈴村さんと同じ白川町移住交流サポートセンターで集落支援員をなさっています。
塩月さんも白川愛溢れる人で移住者の目線に寄り添い、明るくそしてパワフルに町の人たちも巻き込みながら、移住者のオンボーディング(組織や場に馴染むためのサポート)を進めていらっしゃいます。
塩月さんに、晴耕雨読とみだを隅々までご案内いただきました。
もうお一方は、新井みなみ(あらいみなみ)さん。
新井さんは岐阜市のNPO法人 G-netに勤務されつつ、白川ワークドット協同組合の事務局長もお勤めに。高知県から白川町に移住された新井さん。白川にご興味を持ったきっかけは……
『あんしん豚』
町内の『藤井ファーム』さんが育むブランド豚で、無薬で飼育されているそうです。ちなみに、「あんしんとん」と読みます。
新井さんは知人の紹介であんしん豚を知り、そのままのめりこんで飼育地である白川町にダイブ。なかなかロックな生き様です(笑)!
「あんしん豚がきっかけで移住したいと言ってきた人は、新井さんが初めてでした(笑)」と塩月さん。そりゃそうでしょうね。
何がきっかけで、その土地を好きになるのかわからないものです。
でもそれで良いのです。なぜなら、価値は相手が決めるものだから。
(僕がブランドマネジメントの講演で良く発しているフレーズです)
いろいろな好きの形があっていい。
スローライフな空間での美味しい食事と対話で、お互いの人となりを知った僕たち。鈴村さんと塩月さんのリードで、町の共創キーパーソンのもとにご案内いただきました。
『農LAND BEER』さん。児嶋健(こじまけん)さんご夫婦が経営するクラフトビール醸造所です。
児嶋さんは2012年に白川町で起業。有機農業に取り組まれるほか、沢登りやキッズキャンプなどのアクティビティ事業も展開され、まさに地域に新たな景色を創られている変革実践者の一人です。
岐阜の都市部、いわゆる街中で育ち働いていた児嶋さん。児嶋さんも白川町の風と土と時間に惹かれ、この地に足をつけるようになりました。
「面白い田舎を創る」
児嶋さんはそんな思いで、白川町で農にビールにアクティビティにとさまざまなチャレンジをなさっているそうです。
「面白い田舎」
この一言は僕の心にも深く刺さりました。僕たちも、(浜松の)都市部のほかに奥浜名湖沿いの三ヶ日町にセカンドオフィスを持ち行き来しています。いわゆる田舎町ですが、僕自身も他都市から来た人間の目線で日々面白さを発見していますし、他都市のゲストをお呼びすると楽しんでくれます。
田舎の面白さを日々実感していますし、地域を面白がってくれる仲間を増やしたいと思って行動しています。
(僕たちが広めている #ダム際ワーキング も、ダムのある中山間地を面白がってくれる人を増やしたくて取り組んでいる部分大なりです)
児嶋さんはまた「農業をひっくり返す」とも仰っていました。
従来の農業の景色を変え、新たな勝ちパターンに取り組む。そのチャレンジスピリットを僕は児嶋さんから感じました。
面白い地域には、面白い人が集まり、さらに面白いことや新しいことが起こる。
そのポジティブな連鎖を、児嶋さんとの対話で感じました。
次に僕たちが向かった先は……ダムです!
事前のオンライン(チャット)コミュニケーションで、僕がダム好きであり#ダム際ワーキング 推進者であることをすっかりご存じだった鈴村さん。
今回の行程にしっかりダム訪問を組み込んでくださいました。ありがたや!
名倉ダム。飛騨川の発電管理用のダムで右岸には国道41号線、左岸にはJR高山本線が走り、岐阜市街から飛騨を行き来する道すがら通りがかりやすいダムとも言えるでしょう。
このダムは左岸に魚道(遡上できるように設けられた、魚の通り道)が設置されています。鈴村さんは魚道がお好きとのことで、散策しながら魚道の美しさを熱く語っていらっしゃいました。
加えて、頭首工(とうしゅこう。河川から農業用水を用水路へ引き入れるための施設。ダムの親戚みたいなものです)もお好きとのことで、期せずして僕とのダム話に花が咲きました。鈴村さん……ダムイケる口ですね(笑)
名倉ダムは、天端(てんば。ダムの堤最上部の通路のような部分)が歩行可能になっており、僕たちもてくてく。食後の散歩、業務合宿や会議の合間などの雑談を兼ねたリフレッシュにもちょうど良いです。
「ここ(名倉ダムの天端)は上流の静寂と、下流の騒めき(放流音とせせらぎ)を同時に体感できる場所ですね。「静」と「動」の狭間の空間が、デザイナーやクリエイターの感覚を揺さぶってくれます」と吹田さん。
さすが、デザイナー・クリエイター部署の部長。その発想はなかったです!
いわば静と動の越境空間。そして、僕は #ダム際ワーキング はいわゆるナレッジワーカーの越境学習や集中のための選択肢としてとらえていましたが、吹田さんとのこの対話で、アートワークのようなクリエイティブな仕事における意義も見えてきました。
ところでダムの右岸のダム絶景スポットに空き地がありました。中部電力さん所有の土地だとのこと。もったいないので #ダム際ワーキング スポットにしませんか? 僕、全力でプロモーションしますよ。この記事をご覧になった中部電力関係者の方、是非ご連絡を(笑)
非日常的な空間(僕にとってはダムはもはやわりと日常ですが(笑))で、頭も心も体も程よく揺さぶられ、皆さんそれぞれ仕事や地域活性のアイディアも浮かんできた様子。
(日常と非日常の往還こそが越境学習の醍醐味であり効果です)
最後に、白川町移住交流サポートセンターをご案内いただきました。
代表理事でありセンター長の鈴木寿一(すずきひさかず)さんと、鈴木さん(同姓)、白川町地域おこし協力隊の樋口彩(ひぐちあや)さんも参加いただき意見交換。
町の取り組みをお伺いしつつ、僕たちの浜松・豊橋ほかでの地域開発の取り組み、白川町を訪れての感想などをお話ししました。
沢渡および僕たち(当社あまねキャリア)の取り組みや思いも聴いていただきました。僕がお話しした概要は以下の通りです。
人口減少が加速する中山間地。白川町もその例外ではなく、消滅可能性都市の一つです。
ハンデを背負いながらも、移住交流サポートセンターの皆さん、そして移住者や地域おこし協力隊など地域を面白がる人たちの力もあって、白川町の移住者は200名を超えたそうです。
白川町では、他都市の人が一定期間滞在して就業をする「ふるさとワーキングホリデー」も積極的に取り組んでいます。白川町で出会い、そこから一緒に新たなコトを起こしたり、地域にそのまま就職したりと着実に体験人口と関係人口が増えているとのことです。
そこにはコーディネーターの存在も欠かせません。地に足をつけた地域の人が交流のハブとなり、訪問者に自分ならではのストーリーが生まれ、地域がかけがえのない場になっていく。
やはり地域デザインの肝は人であり、人と人との対話と共創で生まれるストーリーなんだと改めて実感しました。
日も傾き、すっかり夕暮れ時に。
僕たち(吹田さん、平野さん、沢渡)はこの後、縁側をお借りして振り返りのミーティングをし白川町移住交流サポートセンターを後にしました。
帰り際、樋口さんが「是非、お渡ししたいです!」と白川町の農泊モニターツアーのチラシを渡してくれました。7月と10月の2回、白川町を親子で体験できる家族参加型の体験プログラムです。皆さんも是非、白川町の懐に抱かれてみてください!
旅の最後は、地元の居酒屋で夕食(全員ノンアルコールビールとお茶で食事を愉しみました)。
たまたま見つけて入った『ほんだや』さんでリラックス。馬刺し、鶏ちゃん焼き(けいちゃんやき)など岐阜ならではの美味を肴に、今日の振り返りの続きをしつつ、戻ってからのアクションを楽しく話し合いました。
若いスタッフさんが元気に対応してくれ、若手も生き生きとしている町だと最後の最後まで思いました。
個人的に、白川町には僕の大好きな北欧の景色が広がっていると感じました。
森と湖(ダム湖)の景色、サウナ、木のぬくもりたっぷりのワークスペースやコミュニティスペース、DIYによる施設や空間、ヒュッゲな景色、地域や世代を超えた人たちとの対話と共創、白川茶とお菓子を愉しみながらのフィーカ……
「東海地域の北欧」を名乗っても良いのではないかと思ってしまったくらいです。
北欧に対する僕の思いは、以下の記事で綴りましたので良ければ見てやってください。
白川町の皆さん、白川町と引き合わせてくれたコジマユウイチロウさん、そして僕たちと同じ景色を見てくれた吹田善一さん、ありがとうございました!学び多き一日でした。そして、また白川町を必ず訪問します。
これからも時間を見つけて(余白を創って)、全国各地で組織と地域の景色を変えるチャレンジをしているファシリーダー(ファシリテータ+リーダーの造語)と対話していきたいと思います。
▼書籍『新時代を生き抜く越境思考』
▼書籍『バリューサイクル・マネジメント』
▼書籍『推される部署になろう』
▼ファシリーダー育成プログラム『組織変革Lab』
▼僕たちあまねキャリアのサイト