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『越境学習の聖地・浜松』への僕たちの思い

と言う訳で、僕たちは浜松の企業連合で『越境学習の聖地・浜松』なる新たな地域ブランディング活動、そして新たな文化創造活動を地域の仲間たちと始動しました(概要は以下のサイトをご覧ください)。2024年6月19日(水)には、浜松市のFUSEにて浜松市長、石山恒貴先生(法政大学大学院教授/越境学習の権威)、有山徹さん(プロティアン•キャリア協会 代表理事)もお呼びしたキックオフイベントも開催します。

▼『越境学習の聖地・浜松』のサイト

「越境学習」を掲げる都市は、浜松がおそらく全国初なのではないでしょうか。だからこそチャレンジしたかった。この記事ではそのストーリーをお話しします。


1.ことの起こり

ことの起こりは2023年10月。僕が顧問先であるNOKIOOの代表 小川健三さんに思いつきでこんなチャットをしたのがきっかけです。

思いつきですが、浜松を越境学習の聖地にする旗揚げをしませんか?
越境学習の聖地を名乗る都市はネットで検索しても見当たらず、尖れそう

2023年10月31日 沢渡から小川さん(NOKIOO代表)に宛てたチャットメッセージ

この問いかけに小川さんも共感。小川さんと沢渡が中心となり、浜松の地で越境活動を進めてきた同志(Wewill代表 杉浦直樹さんRAMP代表 若松杏さん鳥善代表/HACK共同創業者 伊達善隆さん静岡放送 浜松総局 大見拳也さん、デザイナー 鈴木力哉さんパラドックス執行役員 鈴木祐介さん)と一緒に、浜松越境学習推進協議会(ハマエツ)を組織。『越境学習の聖地・浜松』の立ち上げに向けて動き始めました。

越境学習の聖地・浜松 推進メンバーと特別顧問の法政大学 石山恒貴教授 

2.なぜ「越境学習」なのか?

「学習(学び)を軸にした地域活性、地方創生をしたい」

それは、僕自身が浜松をはじめとする全国各地の景色を見てきて、頭をもたげてきた思いでした。

・地方創生=飲食観光レジャーお祭り騒ぎ一辺倒
・といはいえ観光軸では、特定の都市だけが俄然(そして依然)優位
・観光客相手の商売だけが盛り上がる、旧来の地域モデルも一切変わらず
・地域が観光客に消費されるだけ。地域住民とのトラブルが絶えない都市も

この変わらない景色をそろそろなんとかしたい。
観光・レジャー軸の地方創生はレッドオーシャンでもあります。すなわち、競合他都市との競い合い、客の奪い合い。

なにより浜松市で考えてみても、同じ東海道の沿線上に京都という強豪がありますから観光レジャーで勝負して適う訳がない。 

であれば、産業を軸に盛り上げれば良い
幸いなことに、浜松は製造業が強いと言われている都市です。実際、ものづくりで発展してきました。
その一方で、ものづくりに対する拘りや、製造業の文化や価値観が強すぎて、新たな行動や共創を生まれにくくしている。その負の面も、僕は感じていました。

そういえば僕が浜松に来た当初、東京のコンサルタントが講演で「浜松は、ものづくりの町ですから~」と言っていて、大変モヤっとした体験があります。そういう決めつけも、この都市の新たな発想、新たな文化創造を妨げてきたのではないでしょうか。

僕自身、浜松に来て4年(「通い」で行き来するようになってからは7年)、「飲み食いお祭り観光以外で、浜松の地域活性と関係人口増につなげられる、新たな軸を作れないか?」
「他都市の人も地域の人たちも、ともに幸せになれるテーマは何か?」

考えあぐねていたのです。

そこで僕の頭に降って来たテーマが「越境学習」。
越境学習は近年人材開発・組織開発・産業創成などの領域で注目されている分野で、経済産業省も後押ししています。日本では、立教大学 経営学部教授 中原淳さんが意味づけされ、法政大学大学院 政策創造研究科教授 石山恒貴さんビジネスリサーチラボ代表 伊達洋駆さんが中心となって研究・普及に注力されています。

沢渡も組織開発実践者の立場で、石山さん、伊達さんと浜松(当社の三ヶ日ワーケーションオフィスほか)で越境学習をディスカッションおよび実践していました。

こうして、僕自身の越境学習に対する思いと確信が日に日に強くなって行ったのでした。

「越境学習を、新たな地域活性のテーマとして掲げられないかしら?」

こうして、小川さん(NOKIOO代表)に投げ込んでみた次第です。

3.浜松は越境学習の聖地に相応しい

ところで、この手の地域ブランディングプロジェクトは「かけ声先行」「旗揚げしただけ」で実態を伴っていない事例も散見されます。
僕たちは、浜松は越境学習の聖地を名乗る資格が十分にある。その確信を得ています。歴史、実績、立地の3つの着眼点で説明します。

(1)歴史
浜松は、古くは三河出身の徳川家康公が天下統一の礎を築いた地でもあり「出世の町」とも呼ばれています。また浜松はホンダなど、地域出身の経営者(本田宗一郎氏は現在の浜松市天竜区出身)が地域を超え、世界展開する企業を数多く生み出しています。
ヤマハ、ソミックグループなどはいずれも創業者が他の地から浜松に移住して事業を拡大してきた歴史があり、まさに越境により産業が発展してきた土地と言えるでしょう。

また、浜松の地域性を示す言葉に「やらまいか精神」があります。
やらまいかとは、「やってみよう」「やってやろう」を示す方言で、新しいことにチャレンジする精神を表しています。こうした風土も、地域や職種や立場を超えて人々が越境して学び合う、そこから共創して新しいことを興すのに適していると言えるでしょう。

(2)実績
既にここ数年で、立ち上げメンバー(が所属する企業)だけでも複数の越境学習の取り組みが浜松の企業発で展開~地域内外の企業や行政の人たちの多様な対話と共創が起こり始めています。以下はその一例です。

・水曜日のヨル喫茶(水ヨル)
・金曜日のガレージ(金ガレ)
・挑む中小企業プロジェクト
・#ダム際ワーキング #佐久間ダム際ワーキング
・次世代リーダー育成プログラム
・組織変革Lab
・スクラ
・あいしずHR

浜松の企業発でおこなわれている越境学習の取り組み(2024年1月時点)

上記は一部にすぎません。聖地を名乗るのに相応しい、越境学習の実績も十分にあるのです。

本会の特別顧問の法政大学大学院 政策創造研究科教授 石山恒貴さんも、既に浜松で #ダム際ワーキング をはじめとする越境学習を体験され「浜松は越境学習に相応しい土地」とおっしゃっています。

▼水曜日のヨル喫茶(水ヨル)

▼金曜日のガレージ(金ガレ)

▼挑む中小企業プロジェクト

▼#佐久間ダム際ワーキング

▼次世代リーダー育成プログラム

▼組織変革Lab

▼スクラ

▼あいしずHR

(3)立地
立地の面でも、浜松は他都市の企業や行政の人たちとの越境に適していると言えます。

東海道新幹線では浜松は東京~大阪間のほぼ中間に位置し、たとえば東京の企業の人たちが名古屋や大阪に出張するついでに立ち寄って交流するのに便利な土地です(たまには「ひかり」「こだま」に揺られて途中下車するのも良いものですよ)。東名高速道路国道1号線バイパスも通っており、クルマで移動する人が多い静岡、愛知、岐阜、三重県ほかとの交流もしやすいと感じています。
静岡空港中部国際空港(浜松駅から直行の高速バスもあり)など、空へのアクセスも決して悪くはありません。

「浜松で途中下車して学習」
「ついでに浜松に立ち寄って交流」
「浜松で会議やカンファレンスを開催」


こうした行動と関係人口を、越境学習を軸に増やしていけると考えています。

実際、僕たちも東京ほか他都市の企業の方々にお声がけし浜松にお越しいただいています(私は「東京にお越しください」の要求に対して「たまには浜松にお越しになりませんか」と返すことも)。
皆さん浜松を気に入ってくださいますし、かつその輪に地域の企業の人たちも参画することで良き地域間共創、企業間共創が行われています。

僕たち(あまねキャリア)の地域活性の考え方と取り組み

4.なぜ民間企業連合で立ち上げたか?

このような地域ブランディングの取り組みは、行政(自治体)主導で行うものが多いでしょう。僕も最初は、地域行政機関に提案して立ち上げてもらうことも考えました。しかし、まもなくその考えが変わりました。

行政が主導の取り組みは、どうしても行政区画の壁がネックになるシーンが出てくる。僕自身、さまざまな地域の地方創生などの取り組みを見聞きしてそれを体感していました。

「隣の市町村に跨る取り組みは、市として承認できない」
「県を超えるからダメ」


このような話は珍しくありません(他都市の人から見たら実質同じ地域なのにと思うのですが、行政が主導する以上一定の制約を受けるのは致し方ありません)。なんとも歯がゆく、もったいない話です。

民間企業が主導の取り組みであれば、地域の制約から自由になることが出来ます。実際に、上記で例に挙げたうち「あいしずHR」は豊橋市で行われている越境学習の取り組みです。

僕たちは浜松を掲げつつも、浜松だけが盛り上がれば良いとは考えていません。磐田市、袋井市、掛川市、湖西市、豊橋市、新城市、豊川市など、近隣の自治体にも動線が生まれて欲しいし、これらの地域の人たちとも越境していきたい。東京など他都市の企業や人たちが、浜松で業務合宿やゼミ合宿をしたり、カンファレンスなどのイベントを開催する。そのような動きも大歓迎です。

なおかつ、同じような取り組みを浜松以外の地方都市でも展開してくれたら嬉しいです。そんな思惑もあって、この取り組みは民間企業連合軍で立ち上げました。

5.若手のエンゲージメント向上も

僕は一昨年前、当社(あまねキャリア)の役員と連携して東京の企業に浜松に進出してもらったことがあります。あれから2年、東京・神奈川から赴任してくれた20代の若手2名がいずれも「浜松で新たな事業を立ち上げたい」「浜松と近隣の企業や人ともっと交流したい」と声をあげ、引き続き浜松で頑張ることになりました。
うち1名は今年の春に東京本社へ戻る予定だったのですが、本人の強い希望により浜松に残ることに。地域で独自のコミュニティも形成し、越境と共創を愉しんでいる様子です。

6.とはいえ課題もある

とはいえ、まだまだ課題もあります。
たとえば、他都市から来てくれた人たちと越境学習をしたり、オンラインで講演などを配信しようにも適する施設が限られている。あるいは、出張者がドロップインして作業やオンラインミーティングできるスペースなども(東京などの大都市に較べると)はるかに少なくビジネスパーソンや企業エグゼクティブが快適に仕事を出来る宿泊プランやサービスも限定的

ここからプロジェクトとして、地域行政や観光産業の人たちと対話を重ねながら、越境学習しやすい環境創りを進めていきたいと考えています。

また、まだ「勉強することはカッコ悪い」なる考え方もところによっては目立ちます。その空気や文化に居心地の悪さを感じて、出て行ってしまう人、戻ってこなくなる人も少なくありません。

7.地域の文化度を高めよう。地域の景色をカラフルに

地域に学びを楽しむカラーがあったっていいじゃない。コンセプトベース、価値観ベースの地域創生があったっていいじゃない。

会社を超えた仲間たちとフットサルを愉しむように、会社や地域を超えた仲間たちと勉強をする。そんな景色があったっていいじゃない。さまざまなカラーがある。そんなカラフルな地域は文化度が高いと言えますし、文化度の高い地域に面白い人、意欲的な人が集まります。

「勉強は楽しい!」
「誰かと何かを学び合うって素晴らしい!」

そんな景色と合意形成を越境学習を通じて地域に、ひいては全国に創っていきたい。そうして、地域に誇りを持つ人が増えていったら嬉しいです。

そんな思いから、当社は地域の鉄道会社である天竜浜名湖鉄道のスポンサーにもなり、当社ワーケーションオフィスがある三ヶ日町浜名湖佐久米駅「本を読もう」の副駅名を付しました。本を読む習慣や文化の創造につながったら。

さらに僕は今年になって「体験資産」なる考え方を発想し、日本の組織への理解と定着を図るべく有識者の皆様と議論をし始めています。
体験資産についての詳細は以下の記事をご覧いただきたいですが、さまざまな地域や企業の人たちとの越境し共創する体験も、組織や地域にとっての貴重な体験資産です。

僕の夢の一つは、北欧文化を日本の組織や地域にインストールすることです。学びたい人が、学びたい時に学び、より良く生きることができる。それも北欧文化の一つであり、「学び」のカルチャーを創るこの取り組みもそのための第一歩だと感じています。

「浜松での(浜松との)越境学習で、体験資産を増やす」
「体験資産を増やしに、浜松に行く」
「学習や読書や仕事をしやすい場や空間やサービスを、浜松に増やす」
「読書会を浜松で」

そんな発想を持つ人、行動する人が増えたら嬉しいです。

地域に越境と学びを軸にした、新しいカラーとカルチャーを創ろう。
「越境学習の聖地・浜松」はそのためのチャレンジでもあり、新たな文化創造活動です。

地域の文化度、いや、日本全体の文化度を学習と共創を軸に高めていきましょう!

皆さんの力を貸してください。なにより、浜松で私たちと一緒に越境学習を愉しみましょう。
浜松「に」越境を、浜松「で」越境を、浜松「から」越境を!

8.浜松越境学習推進協議会(ハマエツ)運営企業

▼株式会社NOKIOO

▼あまねキャリア株式会社

▼株式会社Wewill

▼株式会社RAMP

▼株式会社鳥善

▼株式会社HACK

▼静岡放送株式会社

9.「越境学習」関連書籍

▼越境学習入門

▼新時代を生き抜く越境思考