超短編小説|猛獣と通勤電車
通勤電車。そこは、いつも満員できゅうくつな場所だ。片手でつり革を握り、左右の足で重心を交互に切り替える。聞きなれたアナウンスや窓から広がるあの光景。日常のありふれたひと時だったが、もうないと思おうとどこかさびしい。
あの牢屋に入るまでは、毎日電車で通勤していた。だから、電車を降りると、いつもの駅があり、いつもの道があった。僕は、いつもここを通って会社へと足を運ぶ。そこには親しい同僚がいて、怒りっぽい上司がいた。楽しいこともあり、つらいこともあった。でも、今思えばそれも悪