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冬の終わりを告げる雨音に、夏を感じた。

※10分間で書く、下書き・推敲なしのぶっつけ本番エッセイ。毎日更新11日目※

今日は雨。というか、ここ最近、ずっと雨。朝や昼間、夕方に嵐のような雨が降って、少ししてやむ。かと思いきや、冬の間は長いことだんまりだった太陽が現れて、暖かく世界を包んだりする。暗かったり、明るかったり、寒かったり、暖かかったり。

日本ではこれを「三寒四温」だなんていうんだけど、ドイツはもっと極端。「今日は寒いなぁ」というより、3時間冬で、1時間春で、また2時間冬で、10分だけ春がくる、みたいなことを繰り返してる。

これって、冬の最後の悪あがきなのかもしれない。黙っては行ってやらねぇぞって。うるせぇあっち行け。

ドイツの家は、「屋根裏階」がある。うちもそれ。天井が斜めで、最上階(といっても3階だけど)。

天井が斜めだから、必然的に明かり取りの窓も斜め。だから日光がまっすぐ入ってくる。去年の夏はドイツでも記録的な猛暑だから、なかなかしんどかった。

そういう仕様の家なので、必然的に、雨の音もすごくよく聞こえる。ふつうの窓なら「音」は雨の粒が地面に当たる音が聞こえる程度だけど、屋根裏階の家の斜めにはめ込まれた窓には、直接雨が当たる。

ポツポツ、という音じゃない。それくらいの雨足なら音は聞こえない。どちらかというと、パチパチ。線香花火が発するような、そんな音。

いつもならなんだかよくわからない鳥の「ピヨピヨピヨピヨピヨピヨ」という執拗な鳴き声で起きるんだけど、今日は線香花火の音で目が覚めた。

毛布をかぶって、まだ寒いなぁ、なんて思っていると、「あれ、なんで線香花火の音が聞こえるんだ?」って気づいて。のそのそと顔を上げて見てみれば、雨。そっか、そうだよなぁ。こんな耳元で線香花火なんてやってる人いたら通報だよ。

冬の名残、寒い雨。それが伝えるのは、線香花火の、あの懐かしい音。なんだかふしぎな感じがして、すぐには起きずにぼんやりとベッドで窓の外を見ていた。

ドイツには、日本のような情緒たっぷりな線香花火はない。たぶん。いや、あるのかもしれないけど、花火といったら大晦日に道で打ち上げる派手な花火と相場が決まっていて、夏のものではないから、たぶんない。きっとない。

っていうことは、この音に懐かしさとか、ちょっとした切なさとか、儚さとか、青春時代の甘酸っぱい感じとか、夏の終わりに漂う独特な物悲しさとか、そういうのを感じてるのは、わたしだけかもしれない。

だれにでも平等に降り注ぐ雨。冬の終わりを告げる音。それに夏のにおいを感じ取るのはきっとわたしだけ。なんだか得している気がして、今日の朝は機嫌がいい。みんなが知らないことを、わたしだけ感じている。雨の日は憂鬱だけど、そう考えれば、なんだかいい日になりそうだと思った。

※ただし彼は今日風邪をひいて自宅待機する模様。彼がいるといつものんびりしちゃって仕事する気にならないので、今日はモンハンの日になるかもしれない。

じゃあ、またあしたね。

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