見出し画像

♯12 対話の技術

 12回目の投稿となりました、天治郎です。お忙しい読者のために、本稿の要旨は以下の通りです。

「子どもは教師の鏡」とよく言われますが、率先垂範の心で、私たち教師自身が対話の力を磨くことが肝要ですね。

(1)対話について

 先日、元筑波大学附属小学校副校長の田中博史先生の著書の1つである「子どもが発言したくなる!対話の技術」を久しぶりに読みました。第3章「対話力を磨く」に、以下のようなことが書かれています。

人と人との関係は、大人も子どもも一緒なのです。もし、子どもたちが先生の話を素直に聞く環境をつくりたいなら、その子どもたちのよいところを自覚させる声かけを、根気よく続けていきましょう。

田中博史(2019).子どもが発言したくなる!対話の技術.学陽書房.

 私は、田中先生の授業を3回直接拝見したことがあります。授業を拝見して思うことは、「本当に子どもを価値づける言葉掛けが多いな。そして、全員を参加させるしかけとしこみがある。」ということです。

 また、第4章「対話の授業の進め方」には、次のようなことが書かれています。

予定通りにやるのではなく、子どもたちがどう反応するかによって、その場で教師もやり方を考えていくのです。(中略)授業というのは、同じものを見たらみんなが同じことを考えるのではなく、「実はいろんな子どもがいる」と考えて進めることが大切です。

田中博史(2019).子どもが発言したくなる!対話の技術.学陽書房.

 子どもに考え、表現させたいならば、教師も常に考え続けていなければなりません。そういった意味では、予めどれだけの発問・問い返しを考えておけるかが重要です。また、その場で臨機応変に問い返していかなければなりません。

(2)発問・問い返し

 私は、算数を中心に、以下の3つの発問・問い返しを、いつ、どのタイミングで使うか常に考えています。

①    どうしてそうしようと思ったの?
②    (~と考えた)その子の気持ちわかるかな?
③    今当てられたら困る人?

天治郎の意識している発問・問い返し3選

 ①は論理を問うのではなく、考えの着想(発想の源)を問います。子どもの働かせた数学的な見方・考え方を言語化し、顕在化させます。そして、みんなで共有することで豊かにしていきます。詳しくは、加固希支男先生の「発送の源を問う」という書籍をご覧ください。

 ②については、気持ちを尋ねます。内容の吟味だけではなく、考えた背景や心情まで考えるようになります。共感的に考えさせていくことが、子どもの数理を引き出すことになります。子どもの「わからなさ」に寄り添うことができます。

 ③については、手を挙げた子に対して「今何に困っているの?」と聞けば、何らかしらの困り事が明らかになります。「何がわからないかわからないこと」も多々ありますが…。そうやって、いつもパッと発言できる子どもだけで進めるのではなく、困っている子にも尋ねていくことで、みんなが参加しようという気持ちになっていきます。

 ②と③は、田中先生が生み出したと言われています。算数だけでなく、どの教科等でも汎用性はあると思います。
 さらに、「おわりに」では、以下のようなことが書かれています。

小学生の子どもの場合は、まずは教師と子どもの対話を通して、物事を考えるということはどういうことなのか、その考えるときの思考の組み立て方の見本を見せるという大切な役割があると思うのです。その過程で実は、ときには教師でさえも子どもの考えに驚き、感動できる瞬間があるものです。

田中博史(2019).子どもが発言したくなる!対話の技術.学陽書房.

(3)おわりに

 子どもの対話力を高めたいという想いは、教師の願いの一つだと思います。「子どもは教師の鏡」とよく言われますが、率先垂範の心で、私たち教師自身が対話の力を磨くことが肝要ですね。

【引用・参考文献】
加固希志男(2019).発想の源を問う.東洋館出版社.
田中博史(2019).子どもが発言したくなる!対話の技術.学陽書房.

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?