生きづらさからの脱却
岸見一郎さんの「生きづらさからの脱却 ーアドラーに学ぶ」という本を読んでいる。
わりとインパクトの強いタイトルだ。
「生きづらいわけじゃないよ。全然生きづらくないんだけど、アドラー について知りたくてね。」と何も聞かれてもいないのに、夫に言い訳しながら読んでいる。(夫は「そう‥、、大丈夫?」なんて不思議そうな顔をしていたけれど。)
以前、アドラー の入門書的な本をいくつか読んだ。
とても興味深かったし、自分に取り入れたい考え方に多く触れることができた。
ただシンプルに書かれている分、もっと詳しく知りたくなった。
「本当かな?」と思うところもあったり、わからない、理解しづらいこともあった。
特にアドラーの思想で1番重要な「共同体感覚」という言葉に少し抵抗感を感じ、理想主義?にも思えた。
けれど「生きづらさからの脱却」を読んで、少しずつ理解を深めていくことができた。
特に、「共同体感覚」という言葉は原語のドイツ語そしてアドラー の好んだ英訳語からわかりやすく紐解かれていた。(p120)
アドラーは共同体感覚の英訳としてSocial interestを採用した。それには意味があった。共同体感覚と言うときの「共同体」は、先に見たように、既存の社会ではない。Social interestという訳語は共同体との関連が強調されず、 social すなわち、対人関係の関心、他者への関心と言う点にこそ意味の力点が置かれている。
そして、この「共同体感覚」という考えは戦争の真っ最中にアドラー が思いついたものだそうだ。
アドラー は戦場で人々の数々の愚行を見ても、他者を仲間と見る見方が揺らぐ事はなかったのだろうかと思った。
と筆者は問いかけ、「共同体感覚」という言葉が生まれた背景とアドラーの理想主義の価値を深く探っていく。(p125-134)
私はここに理想主義者としてのアドラー を見る。理想主義者は現実を無視するのではない。現実の有り様を踏まえ、なおそれを超えようとするのである。現実に見られる競争、そして、その最たるものとしても戦争をそのまま肯定しないところは、アドラー の基本的な考えとして特筆に値する。
この本を読んでみて良かったのは、アドラー の言葉の意味が少しわかったということだけではなく、岸見さんのアドラー を研究される姿勢に触れられたことだと思う。
岸見さんはアドラー を単にまるごと受け入れるようなスタイルではなく、時に「なぜ?」と問いかけながら、ひとつひとつ丁寧に紐解いていかれる。
ご自身の経験だったり、小説のストーリー、他の思想家の言葉などを盛り込みながら、分厚い解釈を与えてくれる。
おかげで、疑問を感じることは良いことだと気づけた。わからないことも悪いことじゃない。そここら知っていこうと考えを深めていけるから。
読んでいただきありがとうございました。
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