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パラグライダーをやってみた話

会社の先輩に誘われてパラグライダーをやってみることになった。先輩は道具も持っていて、自分で飛ぶらしい。初めての人はインストラクターが着いてくれて一緒に飛んでもらえるそうだ。だいたい30分飛んで1万円。もう1人の同僚と3人で行くことになった。

パラグライダーは季節で飛べる場所が変わるらしい。偏西風と太平洋から吹いてくる風がちょうどぶつかって上昇気流になるポイントがあって、その時は冬だったから、上手く飛べるのは朝霧らへん、ということだった。早朝出発して4時間。朝霧でインストラクターの人と合流。でも今日はここでは飛べない。どうやら伊豆で良い風が吹いているらしい。とのことで急遽伊豆へ。

11時頃山のふもとに着いた。そこで準備をして、山の頂上に行く車に乗りかえる。荷物は持っていけないから車に置いて、それから着替えもする。冬の上空は寒すぎるのでフライトスーツを着て、ニットの帽子もかぶって、手が冷たくなるから、本格的にやる人は電熱線の入ったグローブを買うらしい。さすがにそこまでは…と思って手袋を二重にはめた。それから、ほとんどの人が空中で酔って吐くらしくて、酔い止めの薬も数時間前に飲んでおいた。

その日は雲ひとつない晴天で、山の上に着くともうたくさんの人が準備をしていて、一人づつ空に浮かんでいった。こんなにも人が飛んでいるのにシーンとして静かだ。少しも音がしない。風の音も。

自分の番になった。後ろにひっぱられるから、と前屈みになって坂を走り降りる。パラシュートの部分がフワッと宙に浮いて、信じられないくらいの張力で安定したまま空へ登っていく。上にいく力と自分の体重が均衡になっている感じがした。高度が上がるのを知らせるサイレンの音だけが響いている。もっと落ちるような感覚があったりして怖いかなと思っていたけど、上下に身体がひっぱられてすごく安定していた。

足元の景色がどんどん小さくなっていく。ミニチュアみたいな車がスカイラインを走っていて、その奥には熱海と駿河湾。旋回すると目の前には雪の積もった富士山が午後の日の光を浴びて輝いていた。鳥になったみたい…鳥はいつもこんな景色をみているんだろうか。先に飛んだ先輩が隣に並んで手をふっていた。

もっと高く飛ぼう、ということになった。100m登るごとにだんだんと寒くなる。指が凍えて全身が震える。1000mまで登ると、まるで富士山と同じ高さにいるように見えた。さっき飛び立った場所がもう見えなかった。

突然インストラクターの人から「ジェットコースターは好きか?」と聞かれて、えっ、まぁ…と返事をしたら突然200mくらい急降下してめちゃくちゃ怖かった。緊急時に早く降りる方法らしい。あまりの風圧でコンタクトレンズが吹っ飛ぶかと思った。自由落下で落ちているという感じはないけれど、その場でグルグル回りながら急降下するから怖いし、これは酔うなと思った。それからだんだんと地面が近づいてきて、無事着地した。

あんまり楽しかったから半年後の夏、またパラグライダーをしに行ったんだけど、夏のポイントはあまり風が良くないのか離陸に失敗して坂を転げたり、結構なスピードで尻から着地したりして怖かった。もう1度やるなら、冬に伊豆がいいかなと思う。

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