見出し画像

今回はなかなかスポットライトが当たりにくい医療事務職に灯りを灯す医療事務のスペシャリスト髙村松世さんに医療事務の課題や魅力、髙村さんの新たな取り組みについてお話を伺いました。

近年、人件費削減、ICT化が進む一方で患者さんは高齢者の方も多く、ICT化するにも人のサポートが欠かせない日本ですが、そんな中で医療事務の需要とはどのようなところにあるのか。ご紹介いたします。

髙村松世(Takamura Matsuyo)
経歴
・平成3年 カネボウ株式会社 鐘紡記念病院に入社。
・外来、入院全般の医療事務を経験、平成13年 診療情報管理士の資格を取得する。
・平成22年から三田市民病院に勤務。2年間で5億の収支改善に貢献する。
・平成26年には神鋼加古川病院(民間)と加古川市民病院(自治体)の統合から、加古川市民病院機構・加古川中央市民病院への移行を経験。
・自治体病院純利益日本No1の病院となる。
・医事課、診療情報管室、経営企画室などで医事業務、がん登録、診療情報管理業務、医師事務作業補助業務全般の経験を積み経営基盤の強化に貢献。
・診療情報管理分野では近畿病歴管理セミナー幹事役員として12年間務める。
・平行して神戸市管理士集会や兵庫県診療情報管理研究会の発起人、会長、副会長を歴任。
・クリニカルパス、DPC、医師事務作業補助業務、がん登録、死亡診断書の精度管理関連等で日本診療情報管理学会、その他関連団体、学会でも多数発表あり。


◾️医療事務について


◯事務職における課題

 事務職員にキャリアラダーがないことだと思います。事務職員がキャリア形成を考える上で何の足掛かりもなく、何を目指して働いていけばいいのかわからない状態で、個人の気質に頼っているのが現状です。組織全体で人材を教育していくことが必要なのではないでしょうか。


◯医療事務員の現状
 

 病院の事務には経理や人事に関する業務もありますが、今回は「医療事務職」に限ったお話をします。医療事務職員になるためには、派遣会社主催の数ヶ月程度の講座を受けて就職する方もいれば、医療事務の専門学校や4年制の大学を経て就職する方もいるので入り口(採用)の時点でかなりばらつきがあります。

 私が働き始めた約30年前は医療事務系に関する資格を取得するための学校といえば専門学校が主流でした。多くの方は、求人広告を見て数万円の講習を受けたら就職もサポートしますよと宣伝している派遣会社から入ってくるパターンが多かったですね。

医療事務系の大学が設立されたのはここ15年くらいのことで、診療情報管理士や医療情報技師という資格を取る学科ができました。このような大学を出てくる方は将来、診療情報管理士としてこんなことをやっていきたい、というビジョンや使命感を持って入ってくる傾向にあります。そうした「目的」を持って学んできた方と、なんとなく就職した方では仕事へ向き合う姿勢
や取り組み方がどうしても違ってしまうのです。

例えば診療情報管理士の場合は使命感を持って、資格を通して病院に貢献したいという想いを抱いた方が多いです。

しかし、多くの医療事務の方は病院で働いているというと、社会的信頼性が高いからという理由で選択されている方も一定数います。いわゆる「聞こえがいいから。」そもそもの目的やビジョンも違うことから、日々の業務に対する取り組む姿勢にも違いがあります。

この上で、病院の中でも市民病院なのか大学病院なのか、民間病院なのか、所属する機関によって業務内容もやり方も異なるため、どこに焦点をあてて教育ラダーを作るかは各医療機関で考え、作っていく必要があります。


◯教育体制が作られてこなかった理由

診療情報管理士や医療情報技師の大学ができて15年くらいですので、これまでも今も、医療機関内にはあらゆる医療事務系の業務を総合的に指導できる人がそもそもいません。
業務が多岐に渡り、それぞれの専門性が高くなっていることもあり、標準化が難しいということはあります。しかし、最も大きな理由は、病院の経営層が医療事務職に対する教育の必要性を感じていないことではないでしょうか。

医療事務写真



◾️医療機関において医療事務が必要な理由


◯医療事務職員の存在
 
 患者さんが病院に来る目的は、「病気を治してほしい」ということです。
しかしその満足度調査の結果によりますと、「受付の人が親切だった」とか、「事務の方が丁寧に対応してくれた」とか、「看護師さんお医者さんが優しかった」ということで満足を得る患者さんが多いのです。

どういうことかと言うと、ホスピタリティに満足感を感じる傾向にある、と言えますね。実際に現場にいても患者さんからそうお声をいただくことが圧倒的に多いです。医療事務職員は病院の入口で最初に患者さんをお迎えする職種なので、そこで患者さんからの「印象」が決まってしまいます。

1人の事務職の印象が、病院の印象になるということです。

 患者さんの対応に関して満足度が高い上に、医師の診療技術に信頼を得られれば患者さんは、またあの病院に行こうと思ってくださるわけです。継続して通っていただくことは患者さんにとっても、あちこち行く費用や時間の短縮になりますし、同じところで経過をみながら治療を受けられるという良いサイクルが生まれます。

 また患者さんの心理として、「お医者様に診ていただいている」という考え方がまだ残っていますよね。たとえ医師の態度がぞんざいだったとしても許容範囲が広く、先生には直接不安や不満は言われないんです。そこで感じた不満をどこで発散するかというと、受付など事務になります。

事務員の態度が雑になってしまったり、失礼な態度になってしまうと先生への不満も倍増してしまうということです。これは経営的にも影響があると思います。


◯医師と事務職の関係性が収益の改善に繋がる?

 医業収入の大半は医師の指示によって発生しているため、医師は多くの責任と業務を抱えています。その中で医師がしなくてもいい仕事は、事務が代わりに行って差し上げることが必要ですね。

厚生労働省も「医師事務作業補助」として、医師の指示のもとに業務を補助することに点数をつけて認めています。医療事務が医師の仕事をサポートするというわけなので、基本的な医学用語や簡単な病気と病態くらいはわかっていないと会話が成り立ちませんよね。

医療事務職はコミュニケーションスキルも求められますが、専門的な勉強も必要になりますね。しっかりと教育された医師事務作業補助者のサポートがあれば、先生の業務効率は進むと思うので、収益に対する間接的な貢献が期待できます。

ただ、もらえるお給料に対して勉強することが多いという認識から、希望する方が少ないという問題があります。仮に働き始めてからも、しっかりとした知識や技術を教えられる人材が少ないので、結局のところ放ったらかしになり、自信をなくして辞めていくパターンが多いですね。
やはり、教育体制が整っていないことが問題ということがわかります。


◯現場で必要な教育とは

 業務マニュルの徹底と、取得して欲しい資格を明示することだと思います。業務でやる、やらないに関わらず標準的な教育カリキュラムを作成します。例えば接遇面、医療安全や個人らないに関わらず標準的な教育カリキュラムを作成します。

例えば接遇面、医療安全や個人情報保護法、医療法などは共通して知っておいて欲しい内容ですよね。あとは、昇級するためのステップを決めきちんと職員に開示することです。
医療事務の教育ラダーが進まない理由に、あまりに業務が煩雑すぎて、業務の整理整頓ができていないことと、上層部に教育が必要という認識が薄いことが挙げられると思っています。

このため業務マニュアルもないところが多く、ミスも発生しやすくなって、その対応に1日追われる・・・ということが現場で起こっているんですね。働く側も、それに対して打つ手がないし、管理職からしても、そうした現場の状況をどのように改善させるか考えるまでの時間とパワーがないというのが現状だと思います。要は、手が回らないと。


 私がコンサルで実際にどのようにお客様と関わっているかというと、まず、ヒアリングを行います。これは先生も、です。
お話しを聞かせていただいた上で課題を洗い出して、それを解決するためのいくつかの方法をご提案します。最終的に、やる、やらないはお客様が決めることなのですが、やるとなれば、さらに具体的に何をしたらいいか、どのようにしたらいいのかと事細かに説明しながら実践していただいています。

時にはエクセルやワードの使い方から教えることもあります。医療事務をされている方は、日常の入力業務はできるけど、エクセルやワードは使えない人が多いんですよね。ここまで細かくサポートしないと、経営分析をやるような人材は育たないと考えています。

 医療事務の方は、最終的には日本医療事務検定を受けていただきたいです。このような認定試験を職員教育の中に盛り込んでいる医療機関様は稀なので、当然検定にかかる費用や勉強する時間は自分で捻出するしかありません。また、合格しても給料にインセンティブがつかない。こういうところに病院からのバックアップがあったらいいなと思っています。
あとは、リーダー教育です。組織ガバナンスの中でリーダーシップを発揮するような教育は必要だと思います。

スクリーンショット 2021-07-12 22.39.15


◾️人材育成を通じて病院とその未来と利益に劇的な変革を起こす〜株式会社DiLucaの成り立ち〜



独立した目的と決意

 私は約30年間、現場で医療事務職員の教育に多くの時間を費やしてきました。そのためにたくさん勉強もしました。そして、医療事務の社会的地位を向上させたい。組織の垣根を超えて、医療事務職員の方が学習できる仕組みを作りたい、と職能団体を作りました。

「教育できる人を育てる」ことが私の使命だと思い、医療事務スタッフの人材教育に力を入れた会社を立ち上げました。その施設でしっかりとした事務スタッフを育て、その人材を残すことは継続的な経営基盤の下支えになると確信しています。コンサルに頼らない病院経営、これが弊社の最終目的です。

地域に病院が存続すること、それこそが国民の皆さんが安心して医療を受けられることにつながると考えています。そのために、現場30年の経験から経営改革、業務改革のご提案をして参ります。

医療コンサルタントは数多くありますが、現場からたたき上げのコンサルタントは私くらいではないでしょうか。受付から始まって医療事務のほとんど全ての業務を経験してきました。経営母体も、企業立、自治体、自治体と民間の統合病院と経験しています。実際、そこで収支改善の成果も体験しています。この経験は必ずお役に立てると確信しております。


◯株式会社DiLuca(ディルカ)の魅力

 ディルカという社名はディ・ルカとふたつの言葉からできた造語です。ディはメディカルのディを用いて、ルカというのは灯りを灯すという意味を持ちます。

自分が今までお世話になってきた医療事務業界に「灯りを灯して」(スポットをあて)医療事務職員のスキルを上げることが経営の基盤につながるということを伝えたい。病院にとって医療事務職員教育に投資して育てるということが経営的にも必要であるという考えになって欲しいです。

地域になくてはならない病院になるためにも医療事務職員を大切にしてほしいという想いを込めています。
医療事務スタッフの教育はホスピタリティをベースにした接遇、マナー研修からD P Cやクリニカルパス、がん登録、医師事務作業補助等の実務研修まで行います。

また、経費を見直し、ランニングコストを抑えるお手伝いをします。診療報酬の取りこぼしのない施設基準のサポートや業務改善は、教育された医療事務スタッフに伴奏しながら取り組んでいきます。

◯ロゴに込められた想い

 ロゴは小鳥にしています。しかもあえて簡単な一筆書きにしています。医療事務は国家資格ではありません。大勢で業務にあたっているために、個人にスポットが当たりにくいです。
そこにスポットをあて、弊社と関わっていただいたことによって、名も無い小鳥が如何様にも変身して羽ばたける、そんな想いを込めています。

◯事業内容


◾️メッセージ


◯医療事務で働いている方へ

 医療の現場というのは、人が必ずお世話になるところです。健康はどなたにでも関係します。また様々な医療制度、保険制度を学ぶことは生活の上でも価値の高い知識となるでしょう。
医療というのはどこをとっても人々と密接していますから、そのような知識や体験を働きながら得られるということはとても貴重です。単に生活費を稼ぐため、だけでは勿体ないです。その知識や経験をたくさんの患者さんへお返しする。素晴らしくやり甲斐のある仕事だと思います。

誇りとプライドを持ってください。


◯医療事務職員を雇用する方へ

 スタッフ自身が働いている医療機関に愛着を持てるような病院づくりを目指していただきたいと願っています。職場はその人の人生を預かるところ。ここで長く、キャリア形成していって欲しいという想いで事務スタッフを見ていただけたらと思います。どうせ続かないからやめたらまた採用したらいいという考えでは、事務職の働く意欲も減ってしまいますから。


◯私が目指すこと

 優れた技術や商品を持つたくさんの企業様、素敵な人がいます。増大な情報が行き交う世の中だからこそ、必要とする人と提供できる人がつながることが難しい。これは勿体ないと思います。将来的には企業と医療機関、人と人を繋ぐ役割ができたらいいなと考えています。

この相乗効果の中で、患者さんにとって最高のサービスがご提供できれば嬉しいですね。弊社を通してこのような循環が起こっていくプラットフォームを作りたいです。



髙村様、ありがとうございました。
病院経営者、人事担当者の皆様が医療事務職員の活躍に投資する必要性を感じていただける機会となってのではないでしょうか。
医療事務職員は女性の割合が高いことから、髙村様は女性のキャリア形成についても非常に興味深い考えをお持ちで、これから幅広くご活躍されることが期待されます。

今後、医療関係における女性のキャリア形成についてのインタビュー特集も企画したいと考えています。またお話できる時を楽しみにしております。


髙村様のnoteご紹介▼




その現場あるある、こちらの「資料3点セット」で解決するかも。↓


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?