見出し画像

折り合いと妥協

どんな仕事もそうですが
いいと思うものの感覚は人それぞれ違うわけです。
その仕事に関わる様々な立場の人との折り合いを調整しながら
最終的にクライアントが満足するものにすることが
僕らデザイナーの仕事の本質です。
そこが醍醐味でもあり、難しさでもあるわけでね。

でも成果物を手に取るお客様はそんな戦いはまったく関係ありませんから。
そんなことは気にも留めないわけでね。笑
だから、お客さんの満足も気に留めながら
さらにクライアントの望む方向へ調整しながらも
最終的には僕がどこまで満足するレベルに留めるか、が重要であって。

つまり、デザイナーにはお客さんが2人いるということです。
発注してくれるクライアントと、その成果物に触れるユーザーと。
お客様やクライアントが良いものに感じてもらえて
さらにデザイナー本人が良いものと感じることができれば
それはきっと「良い仕事」だということなのです。

折り合いをつけられる仕事ならまだいいのですが
どういうコミュニケーションをとっても
どんなに物事を理路整然と説明を尽くしても
折り合い点を上手く見つけられないことがあります。
それはもう、僕の未熟さと言うしかない状態で
そこに折り合いという概念は生まれることもなく
一方的にこちらが妥協するしかなくなることを意味します。

しかし、究極を言えば
僕の仕事はある意味サービス業ですから
お金を出す人が求めるものを提供する、ということが
僕の役割になるという側面もあるということです。
だからこそ、
僕にお金を支払ってくれるということの対価の意味は
支払う側が決めるべきなのですから
僕はそこに僕の能力を駆使してサービスを施すわけです。
そして僕は家族を養うためのお金をいただく、
ということになるのです。
つまりは「妥協」もお仕事のうち、ということになるのですね。

***

しかし、クリエイターというのはそう簡単なものではないから大変です。w
サービス業としてのデザイナーという仕事をまっとうして、
ちゃんとサラリーをいただく、というだけではどうもいかんのですよ。笑
それで満足してればいいものを、
どうしても自分の「クリエイティビティ」を満足させたいし、
届けるユーザーをも満足させたくなるのです。
つくづく困った生き物だと思います。笑
でも、それこそが、この仕事の面白さなんだと思うのですね。

どんな仕事にもきっと面白さはあるのだと思います。
車や保険のセールスなら獲得売上高の満足以外にも
顧客のニーズに応えられたという満足があるのかも知れません。
小売業ならどれだけ売れたか以外にも
自分がいいと思ったものが売れてゆくという自分のセンスに対する肯定欲求の満足もあるかも知れません。
サービス業でもどれだけたくさんのお客様に満足いただけたか、
どれだけたくさん喜んでいただけたかの方がとても大切だったりするのかも知れません。
クリエイターも実はそうなんです。
お金をいただける、お客様に喜んでもらえる、という要素が大事なのは同じです。
でもクリエイターはそれらにさらに「自分がどれだけ喜んでいるか」もプラスされるんですね。
「いやいや、結局商業デザイナーは、相手が喜んでくれるかどうかだけでいいんだよ」
という人もいるとは思います。
いやいや。
それならそれは否定しませんからそちらで好きにやっていただいて結構なんです。w
でも僕は絶対に違うんですよね。
そういうことなら僕はデザイナーなんかにならなくていいとさえ思います。
やっぱり大事なのは自分が楽しいかどうか。
自分が心地いいかどうか。
自分ってすげーって思えるかどうか、はとても重要で、
クリエイターが
「他の人に認められなくてもいい。僕は僕がいいと思う世界でやるから」
というのも、
「自分の個性なんて関係ないよ。仕事なんだから、お客様の満足を生み出せればそれでいい」
というのも、
結局はどちらも「そうじゃないんだよなー」と思うのです。
クライアントとお客様を、自分の個性とセンスとスキルで満足させること。
それこそがクリエイターの役割なんだと強く思うのですよね。

「クリエイティブに依存しない」と随分前に決めたのです。
クライアントの満足に寄り添うことはとても大事だと。
でも同時にクリエイターを楽しもうとも決めたのです。
もう随分と前に。笑
クリエイティビティをどうやって発揮しようか。
どのクリエイティビティがユーザーの満足に繋がるのか。
妥協はあっても、折り合いの延長上の妥協がクリエイティビティを阻害してないかどうかを注意して、阻害してたなら新たな折り合いの線上にクリエイティビティを挿入してゆく、という感じ。笑
職人という感じが生まれてるような満足感も生まれてきて。笑
そういう風に、やっぱり仕事は楽しみたいと思うのです。

それでも、僕だって、こう書きながらも、
いつもいつもそんな感じで達観して仕事ができてるわけではないのです。
先に記したようにうまくいかないことも多々あるわけですからね。

でも、こうやって想いを書くことで、初心に戻るというか、
正しく進むための心構えなどを確認してゆくという感じで頑張っているわけです。
楽しい仕事をさせてもらってるんですから、
腐ったり、怒ったりして仕事するのは勿体無いじゃないですか。笑
みんなニコニコしてたら意外と、
どんな状況も前向きに取り組めるものですからね。



こんな時代だからこそ、魅力的なことをやってきた人の今とこれからへの想いを聞きたい!これから何かを目指して進もうとしている人に、そこに立つ人の願いのような想いを届けるべく、WEBマガジン「STAY SALTY」を作りました。想いを同じくする方のサポートよろしくお願いいたします。