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読みたくなる企画書の「表紙」は、言葉を先にデザインする。

AO・推薦入試対策の大手受験予備校や、インテリアデザイン系専門学校、美術予備校、企業研修などでも提供してきた「デザイナーではない人の為のデザインの考え方」を、今月から随時投稿することにしました。

で、"LightWriter"とか"光村映吾"とか
言ってるお前は誰だ?


本業(という言い方も古い時代ですが…)は、空間やグラフィックのデザインを使って企業や個人のブランドイメージを可視化していく仕事をしています。

俗に言う「デザイナー」とか「アートディレクター」になるのですが、肩書きで縛られるのも変な先入観持たれてしまうのが悩みでして。

だったら、いっそのこと、一瞬「?」となるように名乗ろう。
ということで、「デザインストラテジスト」と現在はしています。
主に視聴覚に訴えるあらゆる「デザイン」を武器に、戦略的に企てていく、ことを目指しているからです。

→もはや、自分でも「定まった」職業がわからないので、「職業不定」かつ「(肩書きは)お好きな様に呼んでください」と、お伝えする様になりました。(2020.05.21追記)


デザインは、「センス」ではなく、「ロジック」。

この武器は、「センス」ではなく「ロジック」で磨き上げることが出来るのですが、まだまだそのことを知らず「センスないんですけど出来ますか?」といった質問も多くあります。

「センス」は武器の使い方に慣れるのが早いかもしれませんが、操作方法としての「ロジック」さえ理解できれば、誰でも戦うことはできます。その「戦い方」も含めて、このnoteでは、お話できればと考えています。


表紙のデザインを一工夫するだけで、
読みたくなる効果が出るんです。

さて、前置きが長くなりましたが…
第1回目は、企画書やレポートなど提出する資料の「表紙」について、私見たっぷりに書こうかなと思います。

皆さんにとって、「表紙」というと、「タイトルや執筆者の名前」が書いてあるイメージでしょうか。はい、合ってます。それなら、間違いなく「表紙」の役割を果たしています。

これが、制約のある提出先(教育機関への出願資料や企業の入社試験資料)の場合。例えば、「右上に受験番号を明記して下さい」とか「氏名は手書きで」とか。色々ありますけど、それも含めて「必要事項」を記す「(特に紙の)資料の束の最初のページ」にあたる「一枚」を「表紙」と世間的には呼んでいます。

小説や雑誌の「表紙」、論文の「表紙」、企画書の「表紙」。
こう言えば、おそらく多くの方々は「ああ、最初のアレね」と認知されていることと思います。が、ルール上、表紙を付けなくてもいい「資料」や「企画書」は世の中に多いです。

いわゆる「一枚モノ」(ペライチと呼ぶ人もいる)の資料の場合、そもそも「表紙」なんてなくても、伝わる要点が「一枚」にまとまってますから、わざわざ付けなくても良いでしょう。もちろん、付けてもいいんですけど。


500枚以上、提案書をデザインしてきた頃に気づいたこと

僕が仕事で企画書や提案書、図面やCGイメージを、クライアントに提出する場合。枚数と内容によって、表紙を付けるか付けないかは判断しています。

3枚程の画像だけを提出する場合は、表紙を付けてまとめることもしませんが、一方で、書き込みをした図面を2枚提出する場合、「プロジェクト名など必要事項を念のため記載した表紙」を付けることもあります。

このとき自分が考えることは、
①「この表紙があることで、次のページをめくりたくなるか?
又は
②「表紙があったほうが読む人には親切かな?
のどちらかです。

①の表紙を考える場合、これは「続きが気になる言葉や画像を考える能力」が重要です。
②の場合は、「伝えるべき情報優先順位をつける整理整頓力」が必要になります。

例)「花見も兼ねた新入社員歓迎会の企画案」の
  表紙を考えよ。

今回は、この①と②の表紙について、例を交えて、皆さんにも考えてもらいながら進めていきたいと思います。

とある会社の社員が、新入社員歓迎会と花見を兼ねた企画案を資料にまとめました。その表紙について、効果がありそうなものを①と②で考えてみましょう。

まず、よくありそうな企画書の表紙はこんな感じでしょうか。

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桜、なんでピンク使っちゃう系ですよね。何の間違いでもありません。至極真っ当な色使いです、和田さん。でも、ちょっと文字だけだと寂しい...という声も聞こえそうなので、じゃあ写真を入れてみますかね。

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出ましたね、満開の桜写真。こちらも、間違いではありません。何故なら、これを見た会社の人たちは、「おお今年も花見の時期かー」とか「桜が咲くと新年度って感じだなー」とか思う人もいるでしょうからね。この手の企画書であれば、よくありがちです。とりあえず「桜」入れときゃいいっしょ、的な日本の商品企画あるあるです。この発想は、マーケティングとしては間違っていません。個人的には好きじゃないですけど笑

ただ、ちょっとこれでは、「企画書案」感が強いかもしれません。普段の業務とは離れ、息抜きとしても桜を見ながら「宴を楽しみたい」人もいるはずだ。じゃあ、せめて文字の大きさとかだけでも控えめにしてあげよう。と考えるとこちら、

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次のページをめくりたくなる表紙

さて、それでは、①の「次のページへと めくりたくなる表紙」にするにはどうするか。小説の場合は、タイトルや本文をビジュアル化したようなイメージも求められると思いますが、「企画書やプレゼン資料」の場合、実は「ビジュアルに何が何でも頼る必要はない」と、僕は考えています。

例えば、こんな感じ。

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いかがでしょうか、「次のページや詳細が気になる言葉」だけでも「表紙」に成り得ます。表紙の目的は、「全体のイメージを集約して伝える」こともあれば、「次のページへめくってもらう」ことでもあります。つまり、「知りたい!次を見たい!」「どこどこ!?気になる!」と思わせれば、効果的な表紙に言葉だけでもデザインはできるのです。ただ、ここで気を付けてください。「穴場」と言って期待をさせてしまいました。ここまで期待させて「上 野 公 園 です!!」と次のページで目にしたら、ガッカリですよね。もし、上野公園が会場だとしたら、

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こんな表紙だとしたら、「知りたい!次を見たい!」「どこどこ!?気になる!」という感情は同じですが、次のページでガッカリすることはありません。「穴場」と「名所」。2文字変えるだけで、場所に対する期待に答えられるので、「中身」次第で、表紙の言葉は考え直すと良いでしょう。

続いてこちらはいかがでしょう?

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人間って不思議なもんで、「ダメ」と言われると覗きたくなるんですよね。めっちゃ煽ってますよね。ここまで言われたら「何で何で?」と強引にでもページはめくりたくなるかもしれません。さらに、手描きでもいいので、線を足してみる。

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「北風と太陽」的発想とは若干違いますが、直接その場でめくってプレゼンできない資料の場合、どうにかしてめくりたくなる工夫を潜ませると、読む人の気持ちをコントロールできる時があります。


表紙カッコつけすぎて、
中身カッコ悪いはのは、カッコ悪い

ただし、注意すべき点が一つ。
それは、表紙で「盛り過ぎたり頑張りすぎると、中身のハードルが上がる」ことです。
表紙は、あくまでも「中身をまとめてあることのメッセージ」や「本文のイメージを一枚(一言)にするとこんな感じ」を伝えるものです。
中身より勝ってしまっては本末転倒。

音楽のCDジャケットに置き換えてみましょう。
「ジャケ買い」という言葉があるように、「視覚化されたイメージ」を先に、「中身の音楽」に期待して購入する人もいるようです。
もちろん店頭やオンラインでサンプルを視聴すると思いますが、聴きながら手に取ったジャケットのイメージと、音楽のイメージに、違和感があったとしたら。視覚と聴覚の差があるので判断するのは難しいですが、出来れば、ジャケットのイメージは、その中身である音楽と繋がっていて欲しいし、どうせなら後押しするようなデザインを求めたくもなります。

表紙は、「中身の応援」でもあると思います。


②読む人に配慮した最低限の情報も入れた表紙

では、これらの①の表紙が②としても機能するか?というと、残念ながら機能しません。むしろ提出先に怒られたり注意されることもあるでしょうね。ご注意ください。笑

最初に紹介したこちらの表紙。

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こちらは、一応、全ての必要な情報は明記していますので、オフィシャルな資料としては十分でしょう。ですが、「シンプル過ぎる」とか、「花見と兼ねてるのか不明」といった感想もありそうです。

そこで、最低限、事務的に情報も入れた上で、一番最初に視線が行く場所を俯瞰して考えてみます。

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この表紙の場合、事務的な情報(全社共通社内資料/日付/部署/氏名など)は、読みやすいギリギリの小ささにし、更に「黒→グレー」にすることで、色の強弱もつけています。更に、上下左右の端に寄せることで、中央の余白を作っています。目がいく最初の文字は、「2019年度新入社員歓迎会・企画案」となり、写真を見て「歓迎会=花見かな?」と期待させることもできるでしょう。

優先順位が低い情報は、控えめに配置してあげる。そうするだけで、最も主張したいタイトルや写真が、自ずと前に出てくるのです。自分が前に出られないなら、周りを後ろに下げる。実に図々しいジャイアン的発想ですが、誰が見ても先に目がいく情報を表現することが使命ですから、いいんです。笑

②の表紙を考える場合、「真面目に」「誠実に」相手へ配慮しないといけません。決して①の場合が不真面目ということではありませんが、②の場合は「事実としての確実な記載」をいわば「証拠」として記載することで、「オフィシャルな」意味合いの資料に繋がります。

ですから、この②の表紙に「嘘」を書いてはいけないんです。信じちゃうかもしれないからです。(「パロディー」要素を交えたデザインなら、許されることもあるでしょうし、むしろ面白がられますが。)
このとき、②の機能性を踏まえながら、①の期待感も若干ですが含むことができると思います。

コンビニのお菓子商品や、ドラッグストアの化粧品などは、パッケージの「オモテ」になる部分が、①の表紙の参考になりますが、実は「ウラ」の品質表示などは、②の表紙の参考にもなります。

「ルール上、絶対に表記しなければいけないこと」を淡々と記載しているだけですが、②の表紙が求められるような状況では、「淡々と」記載するだけでも構わないのです。
正直、「読みたい文章」ではなく、「念のため必要だから入れている文字列」だからです。

ということは、この②の表紙に必要な「文字情報」は、出来るだけシンプルに、「事務的に」入れることを念頭に、僕はフォントや色などを考えています。凝りすぎる、というよりは、最低限の強弱をつける程度ですが...。

文字の主張の方法については、今後も触れていきますが、

フォント(文字の線が 細い→太いで目立つようになるが、細い方が効果的な伝え方もある)
(赤色とか目立つ色にしがちだが、写真や画像とのバランスを考える)
大きさ(大きい方が目立つが、小さくても余白を取れば逆に目立つ)

この三つを用いて、「表紙内の優先順位」を付けてあげれば、自ずと「目を惹く文字列」へ視線を誘導することは可能です。
(*行間や字間、和文と英文のバランスなどもありますが、まずはわかりやすい3つから。)

①でも同様ですが、「最も伝えたいこと」を「最も気になる文字列」にすることができれば、表紙としてのデザインは十分です。(もちろん、ルール上の記載事項は守った上で、です。)


①と②を合わせた表紙も検証してみましょう

①の表紙に、事務的な②の要素を加えると、

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文字だけでも、企画書の表紙として、しかもオフィシャルに回覧されても大丈夫な体裁は守っています。

逆に、先ほどの表紙に、①の要素のキャッチコピー感やビジュアルを加えると、

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こんな表紙に。正直な話、「デザイン的にはカッコ良くはない」です。笑

あくまでカッコいいか悪いかは僕の主観ですので割愛しますが、表紙としての効果があるかで判断すると、「次のページや詳細が気になる表紙」にはなっているはずです。その後は「本編の内容で勝負」です。表紙に時間をかけるのが大事なのではなく、「中身に時間をかけた分、表紙にも役割を与える」のです。

このように、「紙面内での優先順位」は、次回以降紹介する「目次」や「本文」、「ポスターやカタログ」でも考え方は基本的には同じです。

今回は、「次のページを見たくなる表紙の効果」と「表紙としての機能的な役割」について触れました。
また次回、今回の内容も踏まえた上で、「目次のデザインはページ順に目立たせるとは限らない」(仮・予定)をご覧頂けますと幸いです。

それでは、また。

#LightWriter

ある時は、アイデアを出す前のコンセプト段階からデザインを想定した戦略を企画・支援するフリーランス策士。 ある時は、予備校・専門学校・企業研修で効果的な「伝わる」表現をロジカルにレクチャーする講師。