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育休読書:これからの美術がわかるキーワード100

育休中の自分に訪れた変化のひとつに、アートへの関心が生まれたことがある。特に現代アート。なぜだろう?という自己分析はまた今度やるとして、昨日からこの本を読み始めた。

このタイトル、すごく入門書っぽいではないか。厚さもそこまでではないし、現代アートの概観をざっくり頭に入れたいと思って手に取った。

・・・ただ、いきなり苦戦しているのです。まず素直に冒頭から読み始めたのだけど、これ、辞書みたいな本なのね。ストーリーがないままキーワードが羅列されるから、なかなか入り込めない。いきなり、

批評とアクティビズム
イー・フラックス・ジャーナル
コンテンポラリー・アート・デイリー
・・・

つって第一章が展開し始めたのだが、ワケわからんよ!大枠から話してくれんとさ!

・・・と言っても、そもそも「キーワード100」なんだから、仕方ないか。山川世界史用語集みたいなもんだもんね。にしても初学者無視しすぎでは?

少しずつテンションが下がりながら、全体をひと舐めするような薄口コンテンツは収録されていないのか・・・と探したところ、終盤に

SPECIAL TALK コンテンポラリーアートとは何か

なる特集を発見。お!ここから入るのがいいかも!と思い、あいだをブッ飛ばして後ろから読んでみる。


・・・もっとワケわからねえ。

美術批評家的な方々が4名、座談会っぽく語ってるのだが、とにかく単語も言い回しも難しいよこれ!「布置」って何?生まれて初めて見たんだけど・・・。

とりあえず、初心者をコンテンポラリー・アートの世界へ誘うためのコンテンツではないな。司会者がイケてないシンポジウムでありがちな、専門家たちがひたすら自分の得意分野で話し続けてオーディエンスが置いてけぼりになる感じを紙面上で味わってしまった。これは、編者である雑誌「美術手帖」のオーガナイズ力を疑うぞ・・・いや、私が初心者過ぎと言われればそうなんですが・・・

明日、もうちょい粘ってみよう。1500円(税抜)もしたんだからこのまま登れない感じで読み終えるのは悔しいぜ。

おわります。

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ということで、今日もまた読んでみたのだが、少しだけ冷静になってきた。ここまでわからんのは、やっぱり個別の作品を味わっている数が少ないからってだけなのかもしれない。この本、キュレーターや批評家が書いている本だからかもしれないが、抽象度が高い文章が多い。それが集まってもぼんやりしたまま。概要を薄くさらおうというのがそもそも困難なのかも。

心惹かれる作品から逆引きした方がいいかもな〜。

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3日目。改めてパラパラと読んでいくと、この本との向き合い方がわかってきた気がする。アートの「文脈」を知るための辞書、みたいなイメージだ。

ここ最近アートに惹かれているのは、アートが単に感覚的な美しさや驚きを作るものであるだけでなく、物事の考え方や捉え方といったより本質的な領域での「新しい提案」なんだなあ、と思うようになったからだ。

たとえば、2020年に入ってから知った(遅い)田根剛さんという建築家。彼の最も著名なWorksのひとつにエストニア国立博物館がある。これめっちゃ好き。この建築が個人的にはすごく印象的だったのは、博物館という“アーカイブ”=過去と向き合う装置を、文字通り“滑走路”=未来に飛び立つものに変えてしまっていたからだ。まさに、誰も考え付かなかった、新しくて、極めてポジティブな提案。建築をアート全般を代表するかのように書くのもどうかと思いつつ・・・「あ、アートってこういうことなのかも。だとしたら、すごく面白いかも」って思った。ナンジャコリャ!→でも何故か気になっちゃう→よく観察したり勉強したりすると、これまでにないフムフム!やマジでか!が起きる→もっと知りたくなる、という体験が生まれるものがアートなんだと。

こういうふうに思えたのは、やはり育児休業の影響だと感じている。考え方や価値観がガラッと変わる感覚を味わって、それが恐怖や不安ではなく、すごく新鮮で前向きな体験だった。そういう役割をふだんから担っているのがアートなんじゃないの?なんてうっすら思い始めたときに、近くに素敵なアーティストがいたこともあって、いろいろ学びたくなったのです。

・・・また長くなったけど、そういう「新しい提案」をしっかりと受け止めるためには、同時に「文脈」を理解しておかないとわからないことが多い。というか、「新しさ」がアートの要素だとすると、それまでの「古さ」をわかってないと新しいってわからないよね。

たとえば37pに「民俗学的転回」というキーワードがあって、鴻池朋子さんというアーティストの作品が掲載されている。僕はこの言葉と作品が気になったので、記事を読んでみると、コンセプチュアル・アートへの逆転した流れとして、土着なものや民俗的なものをリサーチした上での作品づくりが近年現れており、それを「民俗学的転回」と呼ぶらしい。

僕は(田根さんの影響もあって)土着とかリサーチとかが好きだから、思わず心惹かれたのだけど、そういった背景があるともっと入り込めるよね。まあ、好きなミュージシャンを「掘る」のと同じか。

まとまらんけど、非常に正しいこの本の使い方にたどり着いた気がする。どんどん掘っていこ。

こんどこそおわります。

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