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【コラム】妊娠糖尿病とは何か

妊娠中に血糖値が高くなりやすいと、聞いたことはありますか?今回は妊娠糖尿病について知ってもらいたいということで、記事をまとめました。


妊娠糖尿病とは、「妊娠中にはじめて発見または発症した糖尿病に至っていない糖代謝の異常」です。
妊娠すると、おなかの赤ちゃんが成長するにつれて胎盤からホルモンが分泌されます。これらのプロゲステロン、プロラクチン、コルチゾールなどのホルモンはインスリンの働きを抑える作用があります。
また、胎盤でインスリンを壊す酵素が作られることや、出産に近づくにつれて体脂肪も蓄積されていくため、いっそうインスリンが効きにくい状態になりやすいことがわかっています。結果として妊娠中は血糖値が上昇しやすくなるのです。

妊娠糖尿病の診断
妊娠初期および妊娠24~28週にスクリーニングとして随時血糖値を測定し、100mg/dl以上の場合に75gブドウ糖負荷試験を行います。

75gブドウ糖負荷試験を行い、診断基準により妊娠糖尿病が診断されます。
以下の1項目以上が当てはまる場合を妊娠糖尿病と診断します。
 空腹時の血糖値 92mg/dl以上
 1時間値 180mg/dl以上
 2時間値 153mg/dl以上
※現在はコロナウイルス感染拡大を受け、妊婦検診時など母子の病院滞在時間の短縮を目的に、「COVID-19パンデミック時における妊娠中の糖代謝異常スクリーニング法」が推奨されています。


では、妊娠中に高血糖が続くと、どのような影響があるのでしょうか。
母親への影響
・流産や早産
・妊娠高血圧症候群など
母親は将来、糖代謝の異常をきたしたり、糖尿病になる率が高いことがわかっています。

胎児への影響
・先天の奇形
・過剰発育・巨大児など
妊娠糖尿病の母親から生まれる児では、巨大児やHFD児(在胎週数に対し出生時の体重が重い児)の頻度が高いことがわかっています。

新生児への影響
・低血糖症
・高ビリルビン血症、低カルシウム血症
・呼吸障害など
将来、肥満や糖代謝異常をおこすリスクが高いことがわかっています。

妊娠中の高血糖は、お母さん自身だけでなく、おなかの赤ちゃんにも大きな影響が及ぶことがわかります。


また、妊娠糖尿病になりやすい人には下記があげられます。
・家族(特に両親や祖父母)に糖尿病の患者がいる
・肥満
・35歳以上の高年齢での妊娠
・巨大児の分娩経験がある
・強度の尿糖陽性
・妊娠高血圧症候群(昔でいういわゆる妊娠中毒症)
・羊水過多症

それでは出産後はどうなるのでしょうか。
妊娠糖尿病の人は、産後1年以内では糖尿病になる頻度は2.6~38%、産後5~16年追跡すると糖尿病は17~63%の頻度で発症すると報告されています。※1
また、妊娠糖尿病の妊婦は将来糖尿病になる確率が高く、メタボリックシンドロームの発症率も高頻度に発症するという報告がされています。(※旧診断基準による報告による)
したがって、出産後の6~12週で再び75gブドウ糖負荷試験を行い再診断を行います。
糖代謝異常の程度に合わせて食事や運動でフォローアップし、糖尿病発症予防に努めることは非常に大切です。

次回は妊娠糖尿病と診断された時の食事方法についてお話したいと思います。


参考文献:1)日本糖尿病・妊娠学会 

Posted by 加藤知子

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