薬剤師が解説する食物アレルギー
いつき博士です。
アレルギー患者教育向けサイトを運営しております。
ALLERUの情報サイトを運営していると
食物アレルギーで困っている
お母様達が多いことがわかってきました。
薬の専門家から見た
食物アレルギーの気をつけるポイント
をまとめました。
食物経口負荷試験や経口免疫療法については
ご経験のある先生方が詳しいので
本サイトでは割愛します。
1.そもそも食物アレルギーとは?
食物アレルギーとは
成長段階でタンパク質を分解する能力が低く
ある特定の食物に対して
体が防御反応を示します。
例えば、
エビやカニなど甲殻類を食べて湿疹ができたり
牛乳を飲んでお腹を下すなどの症状が出ます。
食物アレルギーには
IgE依存型と非IgE依存型に分かれます。
IgE依存のアレルギー反応では
アレルギー性鼻炎や喘息と
同様のメカニズムから症状を発症致します。
(原理原則を考えると
ゾレアはIgE抗体に関わるので
効果があるのでは?と考えてしまいますね)
一方で非IgE依存型の代表的なものに
小麦、大麦、ライ麦などの穀物に
含まれるグルテンを摂取すると
小腸にダメージを与えることが知られています。
また、食物の加熱によって
変性した食物のタンパク質が
免疫系に反応して非IgE依存性の
アレルギー反応を引き起こすことがあります。
非IgE依存の食物アレルギーは
症状が遅れることがあるため
IgE依存性の食物アレルギーとは
異なる診断や治療が必要になることがあります。
2.原因物質はどんなものがあるのか?
どんな原因食物があるのか?
調べてみました。
原因食物の割合は
鶏卵が34.7%、牛乳が22.0%、小麦が10.6%
と多いです。
これらの食物に
どんなタンパク質が関わっているのか
記載したものが下記表になります。
つい先日
食物アレルギーの人でも食べられる卵が注目されていましたが
まさにこのオボムコイドを除去した卵が発売されていましたね。
一部タンパク質は
熱への耐性/溶解性が異なるので
栄養士さんに色々と相談したいところですね。
3.どんな症状が出るのか?
症状は全部で5分類の症状があります。
3-1.皮膚症状
蕁麻疹や搔痒感、赤く腫れるなどがあります。
食物の接触によって
アレルギー性接触皮膚炎や接触蕁麻疹が
誘発されることもあります。
3-2.粘膜症状
眼や鼻、口腔咽頭粘膜など
赤く腫れたりします。
アレルゲンを食べて全身性に誘発される場合と
アレルゲンに触れて局所反応に誘発される場合
があります。
3-3.呼吸器症状
およびその周囲に発症するものと
気管支から肺胞で発症するものがあります。
咽頭のむくみは急速に進行して
窒息に陥る危険があるので注意が必要です。
3-4.消化器症状
消化管の収縮する動きが活発になったり
むくむことによってもたらされ
腹痛、嘔吐、下痢が主症状であります。
血便を認める場合は
非IgE依存性反応を考慮します。
3-5.神経症状
さまざまなレベルの活気の低下
不機嫌、いらいら感、不穏などが認められます。
強いだるさや眠気を感じ
眠ってしまうこともあり
呼びかけに応じない意識障害や
循環器症状を伴う意識消失との鑑別は重要です。
また、アレルゲン等の侵入により
複数臓器に全身性にアレルギー症状が惹起され
生命に危機を与え得る過敏反応が起こることを
アナフィラキシーと定義されます。
アナフィラキシーで
血圧低下や意識障害を伴う場合は
アナフィラキシーショックと言われ
緊急の対応が必要です。
4.食物アレルギーの薬
上記症状が出た場合
どのような薬で対処するのか
どのような副作用に注意すべきか
解説します。
4-0.アナフィラキシー症状が出た場合
大切なことは
迅速にアナフィラキシーかどうかを判断し
速やかにアドレナリンの投与を行うべきか
判断することです。
アナフィラキシーが出た場合
エピペンが第一選択になります。
エピペン(アドレナリン)の使い方は
Instagramでも解説しています。
4-1.皮膚の症状が出た場合
皮膚症状が現れたら
花粉症でよく用いられる
ヒスタミンH1受容体拮抗薬
の内服が基本になります。
注意点としては
ヒスタミンH1受容体拮抗薬の
副作用に眠気の症状が出ることがあり
意識障害の評価が困難になることがあります。
そのため
眠気の少ない第二世代を選択する方が
ベターかと思います。
4-2.呼吸が苦しくなった場合
継続的な咳嗽
軽度の呼気性喘鳴が認められる場合には
呼吸数や酸素飽和濃度を測定し
酸素投与やβ2刺激薬の吸入を行います。
効果が十分に得られない場合は
エピペンの筋肉注射を行います。
皮膚症状でもそうですが
経口のステロイドを使用する場合があります。
ただ、作用発現には数時間を要します。
アナフィラキシーの二相性反応に
投与されるケースがありますが
効果の立証はされていません。
4-3.お腹の調子が悪くなった場合
お腹の調子が悪くなった場合は
特段薬での処置でなく
経口摂取が困難な場合は
補液で様子を見ます。
5.まとめ
薬の専門家視点で
食物アレルギーをまとめてみました。
そもそも食物アレルギーは
薬で対処するというよりは
リスク因子を理解し
予防をしていくことが大事ですね。
ガイドラインを全て読みましたが
発症予防に関する
エビデンスの高い研究報告は少ないです。
医学的な知見だけでなく
民間の工夫を参考にしながら
食物アレルギーと向き合うことが大事ですね。
まずは食物アレルギーの知見がある医師に相談しましょう。
学会等で発表された内容は
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