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【薬剤師が解説】外用剤の吸収の違いについて

いつき博士です。
アレルギー患者教育向けサイトを運営しております。

何気なく使用している外用剤
いろんな場所に使用していませんか?

外用剤は塗る場所や状態
年齢などによって吸収率が変わってきます。

今回は経皮吸収性について
勉強していこうと思います。

1.部位による違い

外用剤を使用した際に
吸収性は部位によって異なります。

まぶたの上や口の周りでは
角質層が薄い部位は
皮膚バリア機能が低下して
経皮吸収性が向上します。

皮膚からの水分蒸発量である
経表皮水分喪失量(TEWL)
バリア指標の1つとして用いられます。

皮膚のバリア機能が低下するほど
TEWLは高くなるとされています。

皮膚や粘膜の表皮が欠損した部分では
正常皮膚と比べて著しく水分喪失量が
高くなる傾向があると報告されています。

ステロイド外用剤の強いランクは
副作用が出やすくなるため
使用する際に注意が必要です。

それぞれの部位に最適な
ステロイド外用剤のランクについて
他のブログで紹介しています。

<ステロイド外用剤のランクについて>

余談ですが
海外では乗り物の酔い止めとして
耳の後ろに貼る薬もあります。

これは血管の多い耳の後ろからの
経皮吸収性の高さが利用されていると
考えられています。

2.年齢による違い

2-1.小児

小児では成人と比較して
角質細胞が小さく
角質層の厚さも薄い
です。

そのため、成人よりも
経皮吸収性は高い
と考えられます。

ガイドライン上では
年齢によってランクを下げる必要はないが
短期間で効果が表れやすいため
使用期間に注意が必要です。


2-2.高齢者

若年層と比較して
経皮吸収性が低くなる
ことがあります。

なぜならば、加齢に伴い
皮膚表面の皮脂量
角質層水分量が低下
することが
原因とも考えられています。

また、水溶性の薬物と比較して
脂溶性の薬物では
経皮吸収性が減少する傾向
があり
角質水分量の減少が影響していると
考えられています。

各層細胞が大きくなり
主薬の経皮吸収経路である
細胞間隙が狭くなることが
経皮吸収性の低下に繋がっているとも
考えられています。

3.皮膚疾患による違い

3-1.アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎の患者さんは
健常人の皮膚より
角質水分量が低下し
TWELは増加
しています。

この原因の1つとして
保湿因子の1つである
セラミドが減少していることが
挙げられています。

セラミド減少により
皮膚全体のバリア機能が低下し
経皮吸収性が高まっています。


3-2.創傷面での違い

皮膚に損傷があって
バリア機能が低下している場合も
同様に経皮吸収性が高まることが知られています。

経皮吸収量が多い全身作用型の外用剤では
全身の副作用が懸念されることもあります。

例えば、喘息治療に用いられる
ツロブテロールテープ
でも
血液中の濃度が上昇するため
創傷面には使用しないようにしましょう。

5.いつき博士の考察

今回の学習において
外用剤の経皮吸収性は下記3点でまとめられます。

①部位による違い
⇒顔面や陰部では高い

②年齢による違い
⇒小児、高齢者では高い
③疾患による違い
アトピー性皮膚炎や創傷部では高い

また、
経皮吸収性に影響を与える因子について
今回の学習で得た内容を下記にまとめます。

【経皮吸収性の上昇に影響を与える因子】
・主薬の性質
脂溶性薬物、分子量が小さい
・皮膚バリア機能
⇒角質層における水分量低下、セラミド減少

上記以外にも
外用剤の吸収性には
様々な因子が影響するため
どのような因子が吸収性に影響するかを
知ったうえで薬剤を選択していくことも
重要ですね。

議題とは逸れますが
時期や皮膚状態によっては
剤形の選択が重要となることもあります。

適切な剤形を下記ブログから
ご確認ください。

<軟膏、クリーム、ローションの違い>

《参考文献》
マルホ株式会社 塗り薬の蘊蓄
マルホ株式会社 医療関係者向けサイト