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聴覚過敏対策③~イヤーマフ~

ノイズキャンセリングイヤホンをデジタル耳栓として使うようになった僕ですが、つい昨年、イヤーマフを買いました。


購入場所はメルカリ。新品未使用で、ネット通販よりも安かったです。
MPOW(エムパウ)製。中国のメイカーだそうです。
-36dbの遮音効果があるとのこと。
普通に装着すると、騒音などは相当軽減しますが、話し声が聞こえる程度になります。



最初は、イヤーマフは見栄えの上で苦手だったのです。

聴覚過敏で思い出すこと‥。
社会人一年目。僕は知的障害者入所更生施設の生活支援員でした。
その中で、知的レベルがかなり低く、強度行動障害もある自閉症の人が、指を耳の穴に突っ込むようにしていたり、手のひら全体で耳をふさいだり、耳たぶを折りたたんでいたりするのを見ました。
けたたましい音が鳴るなどしていないのに「耳を塞ぐ」‥なぜ‥?
自閉症の方の聴覚過敏の様子を見たのはそれが初めてだったと思います。



そのうち、街ゆく人たちが耳を塞ぎながら独り言を言っていたり、過度の不安や緊張状態から耳を塞いでいたり‥という人の様子を時々見かけるようになりましたが、それが自己防衛のため、ということを理解するのは、自分が自閉症スペクトラム障害と診断され、障害特性について知ったときでした。

田舎町に住んでいることや移動手段が車ということもあり、子ども大人問わず(自閉症をはじめとした聴覚過敏のある人たちが)イヤーマフをつけているのを見かける(意識して見る)ようになるのもつい数年前のことです。


イヤーマフと聞いて連想するのが、オーバーヘッドタイプのオーディオヘッドホン。
確かに、「イヤーマフの装着は『ヘッドホンをしているのとおんなじ』と割り切ってしまえばいいんだ」と思ったことはあります。
今でこそ完全ワイヤレスのヘッドホンは当たり前のようにたくさん発売されています(付け加えるとハイレゾ対応の高音質のものもあり、本当にいい音を鳴らしてくれます♪)

ですが、以前は「コードの有無の差でイヤーマフとばれちゃう」と思っていましたし、ヘッドホン自体がイヤホンに比べて荷物になり、どちらかと言えば少数派のような感じがしていました。
あとは、イヤーマフは、人によって使う場所も目的も、屋内外問わずさまざま——安眠、勉強、集中、射撃etc.ありますが、ドライバーのサイズ差こそあれ、スリムなデザインのヘッドホンと違い、イヤーマフは遮音フォームスポンジが使われるのでカップシェルの部分が大きく、「変な意味で悪目立ちしてしまう」感が拭えませんでした。
僕個人としてはイヤーマフのデザインが、どちらかというと「射撃時の防音用」みたいだ、と感じたので、これをつけて街に出るのは「場違いだ」「変な人扱いされる」‥
「(自他共に)ダサい・みっともない」と思うのが嫌だった
のです。

それと同時に、
「あ、あいつ身障だぜ・アスペだぜ」と小馬鹿にされるんじゃないか、障害者=変な人・厄介者扱いされるんじゃないか、というのも嫌だったのです。



しかし、ノイキャンイヤホンを使うにつれ、ケース・本体共にバッテリーが切れて充電しなくちゃというときや、イヤホンを長時間つけすぎて耳が痛くなったり耳孔の中が蒸れたりしてイヤホンを外したいけど遮音したい、というシチュエーションがあり、そういうときは電源要らずのイヤーマフがあればいいなと思ったのです。

僕はまず、本体色の赤と黒に合わせ、同じく赤黒白の採色の横浜タイヤのスポーツブランド・アドバンのステッカーを貼りました。


そして、イヤーマフを見ているうちに、サーキットで、レース中にピットクルーやスタッフや監督の方がしている無線機(インカム)のように見えてきて

レーシングチームスタッフの方がしているもの。
無線なのだけど形はイヤーマフに似ています。
サーキットの中でも、ちゃんと声が聞き取りやすいようになっているのでしょうね。

個人的に「かっこいい」と思えるようになってきました。
サーキットに観戦に行く方もイヤーマフは使っていると聞きます。


本格的に「イヤーマフは聴覚過敏の人の必需品、眼鏡や補聴器と変わらない」と心から思って使えるようになったのは、ドラマ「アストリッドとラファエル」で主人公アストリッドが、主に街を歩くときにイヤーマフをするシーンを見た時です。

ドラマ「アストリッドとラファエル」劇中にて。
外の騒音を遮断するために、アストリッドがイヤーマフをつけるシーン。


アストリッドが使っているイヤーマフはもう少しスリムなデザインですが、それを抜きにしても、
「アストリッドと同じように、苦手なものを克服するために堂々と道具に頼ればいいんだ」と思えるようになりました。


見栄え以外にも弱点はいくつかあります。
○耳の周りが蒸れて暑いこと。
○大きいので荷物になること。
○装着している間に本体がどこかにあたるとかなり大きな音が聞こえること。
○遮音性はノイキャンイヤホンよりは低いこと
(完全に騒音を遮断したい方にはイヤホン、耳栓などの用品と併用しておすすめします)
○外の音はシャットアウトしてくれる分、耳とカップシェルの間にある空気の音がすること
(茶碗を耳に当てた時にゴーッという音がするのと同じで、中の空気の対流音が聞こえるのです)。
でも何にもないよりはだいぶマシです。次第に慣れていきました。


ノイズキャンセリングイヤホンに頼っているので、実際に使う場所は通勤時と社内だけ、それも時々です。

もちろん上司の許可もいただいています。
荷物を届けるなど、イヤーマフをして他の部署に行くときも、最初はノイズキャンセリングイヤホンの時の何倍も他人の視線が気になりましたが、今では気にならなくなりました。

イヤーマフの前から、僕の障害特性については何人もの人が知っていて、声掛けのタイミングや大きさなど、とても配慮してもらっていることも大きいです。
だからこそ装着しているときは、周りの人の動きに気を付けたり、作業に集中しすぎたりしないようにはしていますし。写真のようにイーゼルにサインボードを立てています。
聴覚過敏ステッカーの素材はこちらからいただきました。↓↓

自作のサインボード。
ちなみに、ノイズキャンセリングイヤホンのも別バージョンで作ってあります。



つい最近、発達障害のお子さんを持つお母さまから、イヤーマフのことについて聞かれ、自分の経験をもとにお話しすることが出来、大変助かったとお礼を言われたことがありました。
イヤーマフは、僕の知る限りでは店頭に売っておらず、試してから買うということが出来ないものだと思っていたので。

耳栓や各種イヤーマフ、まぶしさを和らげるレンズ入りの眼鏡、触覚過敏に優しい服、中身がわかりやすいバッグなど、発達障害の方のためのセレクトショップって無いでしょうかね?
今のご時世なら、けっこう儲かるんじゃないか?って思っているのはここだけの話(^_^;)


最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

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