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5月

5月4日

今日は弥生さんとその友達と山に行った。とても綺麗だった。途中で森林が生い茂る中を通った。いつか前、ここら辺に山賊が住んでいたんだとおばさんたちが話していた。その後、おばさんたちの知り合いでとてもお金持ちの家にたどり着いた。その家は築400年くらいのものらしく、とても大きく、茅葺きの屋根で、巨大な敷地に設置されていて周りの山もいくつか所有しているということだった。ちょうど学校の授業で、茅葺きの屋根は何年かごとに屋根を敷直す必要がありそれがすごくお金がかかるので全国的にもそれほど残っていないと習ったので感動した。庭も素敵過ぎた。カラフルな花が敷き詰められていて甘い香りが漂っていた。こんなにも所有するってどんな気持ちなんだろう?周りの森林はとても古く一本の木でも伐採して売ろうとすれば何百万という価値がつくんだって。

そこにいる間、家主の方にもう会ったことがあると強く感じていた。デジャビューというのだろう。学校の子も感じることがあるって。

5月8日

今日はもう、家に戻る日だった。お父さんが夜向かえに来てくれたときには寂しい思いで胸が締め付けられた。ロシアをあとにするときの気持ちに似ていた。また来たい。たまにおばさんに嫌われている気がしたけど、弥生さんはやさしいおばあちゃんという感じの人だ。おばさんは魔女の人形を集めているのでお父さんはお土産に大きな人形とタロットカードを買ってくれていた。私には、AQUAなどのCDを数枚と、香水とブレスレットをくれた。こんなに沢山、嬉しかった。でも、一枚のCDはもう持っているものでいらないと言っていたもので残念だった。ちゃんと紙にも書いて渡したのに。

家に戻ったときに誰かを抱きしめたかったな。お母さんかだれか。。

5月10日

今日の放課後、ユキの家に行ったら本を貸してくれた。学校で散々いじめられたけど頑張って勉強して犯罪の被害者を弁護する弁護士になった女性の自伝。こんな酷いいじめが実際に起こるのが信じられなかったけど本当の話だって。感動した。

あと、夕方の英語教室では先生がアンネ・フランクの本を持ってきてくれた。ちょうど読みたいと思っていたので私は喜んだ。

5月14日

今日はお父さんと山に行った。ロープウエーに乗って散歩した。雨が降ったあとで泥だらけでいっぱい汚れた。ロープウエーに乗っている間、霧がかかっていて周りが真っ白で窓からはロープが彼方に消えていく様子だけが見える。目が錯覚を起こしているみたいで面白かった。遊園地に行きたくなった。

5月18日

学校で授業の合間にアンネ・フランクを読んだ。男子がなぜか表紙が気になって私が読んでいるのを見たり、ふざけて本を取り上げようとした。本はとても興味深い。日記を誰かに宛てて書く考えが気に入った。アンネの日記はキティというの。私もやってみようかな?ちょうど常にメル友を作ろうとしてるしその代わりみたいに。ということで、あなたの名前は。。。ターニャ!こんにちは、ターニャ!今日あったことを伝えるね。あとね、アンネはあったことより自分の思想を書くことが多いの。その方が読むのが面白いかも。私もやってみようっと。

今日のニュースはあんまりよくない。学校では嫌いな男子が私の机に座っていた。悪口を言われるけど彼こそ本当に馬鹿だよ!彼、格好つけて人の机に寝そべったり人を蹴ったりしているけど馬鹿しか言いようがないじゃない?クラスのオルガンの鍵盤上にだって立ってたんだよ。別のときには、彼が鼻水のついた手をズボンで拭いていた所を見かけたの。そんな奴が私の持ち物に触れるときどんな気分になるか想像できるよね?男子はみんなこうだと思う。ここまで酷くなくても同じぐらい汚いと思う。あとこいつね、別の男子からよく筆箱を盗むんだけど、その人が取り上げようとして喧嘩になっては盗まれた方だけが怒られるの。どうでもいい人だけどずるいよね。

学校の帰りにユキと別の子と一緒にしゃべった。私って周りからよくないことを言われているんだって。その実際の例を話してくれたけど本当に些細なことなの。なんで私はそんな小さなことで嫌われなきゃいけないの?私だって、色んな人でちょっとした嫌なことはあるけど学校で嫌いな女の子なんていないよ。ずるいよ。なんで人ってそんなに怒りっぽいの?まあ、結局私が気にすることもないよね。私には音楽と、すべてがうまくいくという自信があるんだから。それがあれば充分。それでも。。。最近、りさもあまり話してくれないの。私は誰にも意地悪なんかをした覚えはないのに。

5月20日

昨日、お父さんの仕事でチャットさせてくれた。変なことがいくつかおきた。チャットルームにいたある女の子が急に写真を送ってきて、開けたら全裸だったの!それをみたら他のファイルは開けなかった。なんで彼女はそんなことをするの?顔はかわいかったのに。それから、13歳の男子と話していたら最初は普通で、急に、あそこに毛がはいているのか聞いてきた。なんでそんなことを聞くのか聞いたら、私が好きだからだって。馬鹿じゃないの?男子ってみんな同じだよ。だから嫌いなの!

5月22日

夕方、ユキとユキの親の友達のフィリピン人の家族と一緒に夕ご飯に行った。焼肉でとてもおいしかった。そのあと、カラオケに行った。私はユキと16歳の女の子と一緒だった。彼女の声は本当に素敵だった。もうこのまま歌手になればいいのにと思った。私の声は最悪で知っている曲も少なかったので残念だった。

家に戻ったのが10時過ぎだったけどアンネの本を読み続けた。彼女とピーターとの関係を読んでいて面白いと思っていた。私もこんなことをしたいのかどうか考え込んだ。<ちなみにキス以上のことは一切本になかった。>日本人相手は絶対に嫌だけど一生に一回くらいキスしてもいいかも!アンネ、文章うまくて、殺されてなかったら有名な作家になってピーターと結婚してただろうに。ドイツ人は酷い。お父さんは、第二次世界大戦でドイツ人はロシア人も沢山殺害したと言っていた。大戦中、他に日記をつづっていた人はいたのかな?

5月23日

今日は学校でも家でも勉強に集中できなかった。主にアンネ・フランクのことを考えた。本は読み終えたけどまだ余韻が残っている。本当に心を動かされた一冊だ。考えすぎるあまりのりでだれかを好きなっちゃったらどうしよう。もちろん、好きな人はいないけど、ちょっと気をつけなければならないと思える人がいる。でも、好きになったところで何か変わることがあるだろうか。ないと思う。

あーあ、ここまでロマンスに動かされたことが今までになかったと思う。きっと、アンネは自分の記述が誰かにまさか読まれるとは思わなかっただろうから感じたことを本当にそのまま書いているからすごく伝わってきたのではなかろうか。彼女の筆記スタイルは本当に気に入った。それも、彼女、私とほとんど同い年で日記を書いてるんだよ。<私はこの本を辞典を引きながらまだそれほど得意じゃなかった英語で読んでいた。それでもここまで感動できた。> 放課後本を読み終えた時にはとても悲しくなった。最後の方、彼女は将来に大きな希望を抱いている趣旨のことをつづっていた。自分の運命をまだ知らずに。。。死んだのは終戦のたったの2ヶ月前だったんだって!私、ドイツ人を嫌いになる。あと、本がちゃんと終わっていなかったのが残念だった。最後にピーターとキスする場面かなんかを描いてほしかった。それと、もう一つ思ったんだけど。人ってなんでキスするときに目を瞑るの?考えても答えはさすがに見つからないな。

5月24日

今日、ユキが言ってたんだけど、睨んでくる男子がいて嫌なんだって。みんなに好かれたいって。私がたまにいじめられても全然気にしてないことを羨ましがれた。たしかに、これは私のいいところなのかも。別に好かれることってそんなに大事じゃないと思う。特に男子には。

5月27日

お父さんがビデオレンタル屋に連れてってくれた。4本のビデオを借りて、その中にアンネ・フランクの日記があったの!ビデオを早速観てすごく興奮した。気持ちをちゃんと伝えられるかな。。。59年に撮った映画でアンネの父のオットが実際に携わったらしい。話自体は残念なところが多かった。何か所か本と異なっていた。特にピーターに関わる所が違っているのが嫌だった。本では、気持ちが芽生えたときやキスしたときなど、ロマンチックに描写されていたのに、映画ではそれが全く強調されていなかった。それどころか、アンネとピーターの関係はほとんど触れられていなかった。私からしたらそれが趣旨に近い感じがしたのに。私の読んだ本と私の解釈にぴったり沿っていてほしかったな。しかし、観終えた時の感想はよかった。直後は特に胸がいっぱいだった。説明がうまくできない。。。悲しいのと同時にとてもいい気持ちもした。感動とはこういうものなんだね。あーあ、なんでもっとこういう素晴らしい本とか映画とかないの?もちろん、私が知らないだけなのかもしれないけど、アドベンチャー映画とかはいろいろ観てるよ。なのに、この様な、深い気持ちが溢れ出るドラマにはなかなか出会ってきてない。アンネの隠れ屋は今は観光用に公開されているらしい。行ってみたいなぁ!実存するなんて想像もできない。私にとってアンネは現実の世界を越える存在になっている。アンネ、本当に死んだのが可哀想。。。あと、一緒に隠れていた人たちが日記をつづっていなかったのが残念だと頭に浮かんだ。読み比べることができたら面白いかも。

改めて、日記が大切だなと実感している。私だけにとってじゃなく、全世界の人たちにとってね。過去、現在、そして未来の。絶対に、アンネに負けないくらい興味深い運命を背負った人たちはいくらでもいるでしょう。でも多くは、日記など書いてなくて、歴史に名前をどうにか残したいと思っていて途方にくれていると思う。ただ日記を2年間つづっていくだけで充分かもしれないことを知らずに。。。みんなにどうにかして日記を書くことを勧めたいな。あーまだ気持ちが落ち着かない。こういう映画をもっと観たいな。今の感動をすぐにはなくしたくない。。。

5月29日

多分一番感動したのはね、アンネが私と同い年だったことだと思う。映画で写されていた彼女の性格がよかった。すごく楽しい、明るい女の子だった。死んだなんて本当に可哀想。。。私は本の内編以外の部分をもう少し読んでみた。アンネは収容所で学校の友達に遭遇し、一緒に泣いたエピソードがあったという。多分、日記に親友と呼ばれていた子だと思う。それを読んで私まで泣きそうになった。誰かとこれを共有したいと思ってならない。話す人もいないんだけどね。ユキは興味なさそうだった。お父さんも。もちろん、こうやって日記に書けるけど。もう同じことの繰り返しで飽きたでしょ。理解してくれると思うけど。今度の英語教室で発表することがちょっと楽しみ。アンネが結構有名だということだけは嫌だけどね。誰も知らないような物が好きでいたい。

5月30日

夜遅くまでアンネのことを考えて眠れなかった。何を考えたか詳しいことはもう覚えていないけど。今の心の状態を何とか描写できたかもしれない。自分が色んな気持ちと一緒に一つの檻に入れられていて出られないという感じなの。今度これを絵にしたいと思う。その中には嬉しい気持ちもあるけど辛い気持ちもあるの。例えばアンネが殺されたことを思うときね。それも終戦の間近に。死んでいなかったら今は70代で素晴らしい本を何冊も書いていただろうに。

5月31日

今学校に実習生が来ている。理科の先生は説明がとても下手でみんなに嫌われている。でも私はかわいそうに思っている。彼女の気持ちが分かる気がして。だから私が応援しようと、よく手を挙げて答えを言ってあげてる。


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