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破天荒姉さん

 私たち姉妹はとりわけ仲が良いわけではないが、かと言って悪くもない。
 実家を出た家族は大抵そんな感じだろうと思う、妹とは年に2回くらい会うような関係性だ。

 妹は実家の近くにまだ小さな子供2人と夫と一緒に住んでいて、よく両親が子供の面倒を見てくれるようだ。だから妹の近況は本人よりも母を通して知る事の方が多い。

 そんな姉妹が珍しく両親抜きで会うという流れになった。特に断る理由もなく、妹家族と私たちとの珍妙ランチ会が開催されることに。

 当日は大雨だった。人が珍しい行いをした際に、よく"雪でも降るんじゃない"と言ったりするけれど、やはりこの姉妹ランチは地球も納得の珍しさのようだ。
 忙しくなかった?と言う妹に、こんな天候の休日は家にいれば一日中バイオハザードやるだけだし誘ってくれてありがたいよ、と私たちは答えた。
→バイオハザードのお話

 妹はもう何十年も同じ仕事をしてきた職人かのように、自然に滑らかに子供達の世話をしながら、家庭や子育ての話、ママ友の話などをした。へえそんな世界もあるのかと私たちは変な顔をして話を聞いた。

 私は近況として東京ゲームショウに行ったことを報告し何なら去年いちばん良かった買い物はPS5だったとまで言ったが、妹は子供にゲームをさせない教育方針のようで今度は彼女が変な顔をして私たちの話を聞いていた。

「中二病じゃん大丈夫?」
と言って笑う妹に違和感はあるけど、あまり腹が立つことはない。私は家族の中では破天荒な人間といった位置付けで生きてきた。それが結構気に入っているし、そのくらいでちょうど良い。
 という以前に、中二病はちょっと意味が違うよね、遊び方中学生じゃん、と言いたいんだろ。

 確かに中ニの頃の私はゲームばかりやっていたと思う。"ゲームばかりやってないで勉強しなさい!"と言われた記憶はないけれど、ゲームは勉強の邪魔をしたり、時間を無駄にするものという認識はあった。

 今のゲームは私が中二の頃とは違っていて、知らない人と突然チームを組んでコミュニケーションを取りながら進めるものも多い。
 そうやってオンラインで世界中とつながる時代を生きていくのなら、ゲームで慣れておいてもいいんじゃない。今やゲームをやることが仕事になることもあるし、単純に色々やってみればいいじゃん、と思うのだけど。

 妹に限らずとも、相変わらずゲームの印象は悪いのだな、と感じる場面は日常的にある。悪いもの代表のような感じでゲームを挙げる文脈が多いことに違和感はあるけど、理解できなくはない。

 妹は子育てという正解のない問題に日々立ち向かっていて、考える暇もなく子供が成長していくので、思考停止して正解っぽく見える何かに縋っているのではないか。自分の経験、周囲3メートルの人達の言葉とか、何となくの印象とか。

 私たち姉妹の生きる環境は年を経るにつれどんどん乖離してきた、それに伴い考え方も。何となく、これからも離れ続けそう。
 それはそれで会えばお互いに新しい発見があるし、考えるきっかけにもなり面白い。

 破天荒姉さんは家族の中でいつまでも破天荒であり続け、私たち姉妹はまた変な顔をしながら嵐の日にランチするのだ。

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