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【連載小説】ファンタジー恋愛小説:氷晶の森の舞姫と灼熱の大地の王子 第十三話 老賢者の弟子

前話

ローレライの先導で小さいとみられた庵は入り組んでどこをどう歩いているのかさっぱりわからなかった。急に視界が開ける。いかにも老賢者とも言えそうな老人が悠然と座っていた。
「お爺ちゃん! お婿さんのレオポルトよ」
 老賢者に抱きつきながらユレーネは言う。
 
 多少は危機感というものがないのか?
 
 連れてきてくれたのはありがたいが無防備すぎる。その考えを見抜いたのかユレーネがまた魅力的に目を煌めかせてレオポルトを見る。
「妬いた?」
「妬くもんか!」
「もう! 面白くないわね」
 二人の痴話げんかに周りはあっけにとられている。老賢者がレオポルトを見た。
「そなたがデボラの……。大きゅうなったな」
「デボラって、母を知っているのですか?」
 レオポルトも早くに母を亡くしていて記憶はかすかだ。
 さて、と老賢者は考えながら口を開く。
「アドルフの事から話せば筋道がとおるかの」
「アイシャード殿?」
 レオポルトは不思議そうにアイシャードを見る。
「ルドルフは元、ワシの弟子だった。氷の国の魔術を会得しようとする青年じゃった……」
 アイシャードは遠い目をして天井を見上げながら話す。
「だが、あやつは炎の国の魔術にも手を染め始めていた。当時、氷の国の者は氷の国の魔術しか会得してはいけなかった。炎の国の者も同じ……。だが、あいつは両方の魔術を手にするんだ、とそなたの母、デボラを手土産にさらって炎の国の前国王の下へ下った。そこで、デボラは今の国王に手をつけられ、そなたが生まれた。デボラは体が弱かった。暑い炎の国では命をすぐに削られる。推測に違わず、デボラは亡くなった。デボラはワシの弟子の一人の娘だった。多少はまだ良心があったのか、遺骨だけが返されてきた。それだけでもまだマシというもの。後でデボラの墓所案内しよう。今、アドルフは炎の国の筆頭魔術師となり、氷の国の魔術も掌握しようとしておる。近いうちにこの国に来るだろう。だが、炎の国の加護を受けた者は入れない結界をワシは知っておる。アドルフを失脚させることはできる。その後の事はそなたと、カール、ニコ達の出番だ。各地に散らばっている同志を集め、アドルフを討つのじゃ。父御も命は助けてやれ。マルタはアデーレから痛い仕打ちを受けるだろう。これが、ワシの見えてる未来だ。どうだ? レオポルト、頭の中には入ったか?」
「あ、ええ」
 アドルフはこの国の人間だった。どこから来たのかうさんくさかったが、これで謎が解けた。両国の魔術を掌握するのがアドルフの野望だった。そこに民も平和もなかった。ただ。己が、望み叶えるだけの野望。
 
 アドルフを討つ。
 
 レオポルトはニコ、カールを視線を交わした。
「ま。すぐには来るまい。準備が必要だからの。ワシが出てくるのはわかっているだろう。鉄壁の結界はアドルフ如きには破れん。今日は舞の練習場で剣舞でも舞えば良い。ワシもローレライとユレーネの舞は特に好きじゃ。そこにその炎の国の剣舞が加われば見応えは抜群だろう。余興に見たいものだ」
「見たい、って……」
 衝撃の事実を告げられ、戦いの話となったあとに急に舞の話になるとは。ユレーネはこの老賢者を祖父代わりに育ったに違いない。ユレーネの独特の行動パターンはここからだ。レオポルトは頭を抱えたくなった。
「アイシャード殿。まずは王子に母御の墓参りを」
 カールが助け船を出す。さすがは側近だ。
「そうじゃったな。着いてこられよ」
 急に立ち上がるとすたすたと老人あらざる速さで歩いて行く。レオポルトは必死になって後を追ったのだった。


あとがき

じいちゃん、舞を見ていたのか……。忘れて場面に加えるのを忘れていた。明日訂正。阪神戦の後に掲載してるので遅くなります。土日はデイゲームになって昼間見ているから適当な時間になりますが。
今日も勝った。中継が終わってもラジオで追跡。無事、一点ひっくり返して勝つのを聞き届けました。
来月に入れば、適当にフォロー祭りします。でも100ではないので、ご期待に添えない場合もあります。そもそもこの秘密の場所に来る人などいないと思いますが。

初見とみると来る方は知ってるので今の所、見たくないアカウントは止まってます。私の本ネームもわかっている方もいるかもしれません。それでも誰も知らないところで書き物を載せていたいので、こじんまりと活動してます。

今日もここまで読んで下さってありがとうございます。

毎日更新は目指してないものの、やっぱり載せちゃいますね。一応あと二、三話先まで作っておいたので訂正しながら載せていきます。ショートショートは閃かないのでお預け。エッセイの勉強もネタなしで……。相変わらず体の不調は続いていますが、今日は出勤。痛い痛いといいながらやってました。未だ、正座ができません。あと、もう少しなんですけどね。

それではご縁がありましたならまたお会いいたしましょう。

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