見出し画像

【連載小説】ファンタジー恋愛小説:影の騎士真珠の姫第三話 子猫と謎の騎士

前話

「お父様。私が会って何か起こるのですか?」
 フィーネペルルは父と並び歩きながら聞く。
「占い師が強く勧めるのだ。お前の息抜きになれば良い。それぐらいに思っておけば良いのだ」
 隣で歩く父親の国王は後頭部が薄くなっていた。いつの間にかあの背の高い父が自分よりも低い背丈になろうとしているのに気づいた。歳月の長さを感じる。これは一刻も早く王位継承者を決めねば成るまい。他所の国が好機を狙ってくるだろう。この世界は平和でもなく、激しい戦いの最中でもなく、中途半端な状態にあった。何か隙あらば狙ってくる、ぐらいのところだ。自分は王位継承者にはふさわしくない。従姉妹のカタリーナがふさわしい。
「また。悪い癖だの。難しい事を考えすぎだ。もう少し力を抜いて生きる方法を考える必要があるな」
 どきり、とした。毎日、幼心がつく頃から気の抜く事なく育ってきた。この能力を周知させないように、と。年々、能力は上がっていく。さらに気の抜けない日々が毎日に変わっていた。毎日鏡の向こうの自分の「影」とにらめっこしている。鏡の向こうの自分は嫌な顔つきをしていた。だが、今は、そんな事はどうでもいい。雇った騎士の顔を見ることが今の仕事だ。カタリーナが継承せねば自分がせねばならない。そうなれば一挙手一投足見られることになる。執務の経験ならば自分の方が上なのだ。
 謁見の間に入り王座に上がる。騎士は顔を伏せて跪いていた。そこに、脱力しそうな猫の声が聞こえてきた。
「ふみゃう」
「こ、こら。出てくるな」
 子猫がみゃうみゃう鳴く。
「あの子猫ですの?」
 思わずフィーネペルルは騎士に声をかけていた。その様子を父は面白そうに見ている。
「あの……?」
顔を伏せていた騎士は反射的に顔を上げる。そこには朝、出会った女性がそこにいた。騎士はさっと頭を下げ直す。
「先ほどは失礼いたしました。この国の姫君とはつゆ知らず無礼な振る舞いを……」
「別に無礼ではないですわ。私から声をかけたのですもの」
 ほう、と国王は様子を見ている。子猫は騎士の胸元から飛び出ると一目散にフィーネペルルの方に寄っていく。フィーネペルルはその子猫を抱き上げて喉を撫でてやる。すぐにゴロゴロと喉を鳴らし始めた。
「よく懐いているのだな。騎士が猫を飼うのは難しい。猫はよく外へ行って犬のように従うことを知らない。ちょうど良い。その子猫をもらい受けてはどうだ?」
「お父様?」
 不思議そうな顔でフィーネペルルは見る。だが、その瞳はキラキラと光っていた。動物には心を開くのだ。この騎士と子猫とフィーネペルルが繋がればなにか起きるのではないか。国王はそう判断したのだ。父の思いとは関係なくフィーネペルルは子猫に心を奪われている。
 
 この調子でこの騎士と結ばれればよいのだが……。
 
 国王は占い師に言われたことを全て伝えてはいなかった。
 
 ”姫君の影を消す騎士が現れる。その騎士との糸と切ってはならぬ”と……。
 
 娘は随分苦しんでいる。もう十分だ。娘が毎日鏡とにらめっこしてることなどとうにに知っている。この騎士にも影がある。騎士ならば誰でも持っているだろうが、違う何かを国王である父は感じ取っていた。フィーネペルルの闇を取り払う人間かもしれない。そう思って対面させれば、当日に会っていた。必然、であった。偶然でなく……。
「そなた、名前を姫に告げたのか?」
「いいえ」
 今度は騎士が不思議そうに言う。
「ではもう一度名乗るが良い。姫のお守りを頼むかもしれぬからな」
「お父様!!」
 流石にフィーネペルルは抗議の声をあげる。
「護衛ならば……」
「ほら。フィーネ。名を聞いておきなさい」
「ヴァルター・フォン・シュヴァルツベルク。ヴァルトと呼んで下さい。それからその子猫は姫君に随分懐いている。私は犬で手が一杯ですから、できれば、姫の手でその子猫を育ててやって欲しいのですが……」
 申し訳なさそうにヴァルターは言う。
「名前はもう、決めたの?」
「ええ。ないと困りますから。おい、子猫、と呼ぶわけにはいきません。エルマと呼ぶことにしております」
 それを聞いてフィーネペルルはくすくす笑い出す。
「おい、子猫って……。そのままですわ。エルマ、良い名前ね。万能の意味があるわ。真珠の意味もあるわね。私とおそろいよ。エルマ」
 フィーネペルルは公的な場所であるのも忘れて子猫を抱き上げて頬を当てる。子猫の柔らかい毛に思わず、顔を埋めたくなる。流石にそれは辞めたフィーネペルルである。
 謎の騎士、ヴァルター・フォン・シュヴァルツベルク。可愛い子猫を連れてこの国の雇われ騎士になったのであった。


あとがき

欠勤決定。足が痛くて歩けません。痛み止めは朝飲んだのですが。夜飲んでないため事前からの痛み止めではないのです。限りある痛み止めなので昼と夜は飲まないようにしていましたが、飲め、と母に言われました。

本当に体の不調に参ってます。

で、前話の題名変えたいんですが、適切なものが見当たりません。少し文を読んで付け直したいと思います。話数は変わらないのですが。

それも考えられないほど痛いのですが。母は不機嫌です。これも頭が痛い。昼食に困ってます。ざるラーメンにしようとおもっていましたが、冷たいものが体に悪いと母に叱られ、残るものがないのです。かと言って買い物には行ける状態でなし。ラーメンをもらうしかないかもしれません。

本当に足が痛すぎます。冷えるとだめなので、普段は空調も高めの温度ですが、寝汗で起きるため寝ると気は少し冷やして寝ます。これが逆効果らしく……。どうやれば坐骨神経痛は治るのでしょうね。

痛みと付き合っていくしかないらしいですが、本当に困ります。

ここまで読んで下さってありがとうございました。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?