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【再掲載小説】恋愛ファンタジー小説:最後の眠り姫(35)

前話

「どーすれば、儀式になるんだ? 法律の書式は知っているが、書きようがない。内容がないと」
 クルトが書類を前にしてうなる。
「そうねぇ。お互いに何かを交換し合うとか?」
 カロリーネお姉様が言う。
「もう。指輪は贈ったよ」
 ヴィルヘルムが口を挟む。
「じゃ、花とか?」
「なんの花?」
「薔薇」
「普通ね」
 とカロリーネお姉様。
「うん」
 とヴィルヘルム。
「じゃぁ、何を交換するのよっ」
 私はフリーデに悲しい思いはさせたくない。だから一生懸命考えているのにこの姉と弟は……。
「姉上、逆上しないで」
「わかってるわよ。この中で一番まともなのは私なんだから」
「それ言う?」
 カロリーネお姉様、いえ、エレオノーラお母様の顔を覗かせて言う。ややこしいったらありゃしない。
「兄上、姉上が煮詰まってキレかけている。デートしてきて」
「デートで気分が変わるもんですかっ」
「まぁまぁ。エミーリエ、少し外の空気を吸おう。一生懸命考えているのはわかるから」
 クルトが言って手を差し伸べる。私は問題の張本人達を横目に睨んで立ち上がる。
「姉上が、キレた」
「ヴィー。言ってはお終いよ」
 二人でこそこそしている。怒鳴りかけて慌てて飲み込む。冷静に。冷静に。私、どうしてこんなにイラついてるのかしら。
「女の子に特有のものじゃないの?」
 女の子の事情に何故か詳しいクルトが言う。私は恥ずかしくて顔を真っ赤にして言う。
「もう、終わったわよ」
「はいはい。それこそ薔薇の香りで心を癒やそう」
 クルトが王室専門の薔薇園に連れてくれる。かぐわしい香りに一気にいらだちが消える。
「なんだったのかしら? あれは……」
 自分でも理解が出来ない。
「疲れてるんだよ。エミーリエは。いろんな事がありすぎたんだよ」
 そう言って私を抱きしめると背中をとんとんと叩く。泣きたくないのに涙がでてくる。
「つらかったね。色んな事があって。自分の中で昇華しきれないものを持ちながら他人の幸せを一番にするんだから。もっとエミーリエでいいだよ。この世界に慣れようとしなくていいんだよ。知ってるよ。毎日、この世界の語学を勉強してることも。俺たちと話をしたいんだよね。たわいないことを。だからこんなに一生懸命なんだ。もっと自由でいい。俺たちにも君の生まれた世界を教えて。過去かもしれないけれど、俺たちにすれば貴重な歴史の生き証人だよ」
「クルト……」
 涙が伝う。苦しかった。言いたいことも言えなかった。これが私の世界の基準なんだってこの世界の人間になろうと必死だった。でもクルトには私であればいいのね。ただのエミーリエで。
「そうだよ。愛しい人。また『ちゅー』だよ」
 そう言って流れてくる涙を吸い取ってくれる。こそばゆくて笑いがでる。
「くすぐったいわ」
「もう泣いたカラスがもう泣き止んだ、だね」
 涙はもう止まっていた。あれじゃ、流しようがないわ。
「ええ。もう少し、クルトとここを散策していいかしら?」
「もちろん。君のためだけに作られた薔薇園なんだよ」
「そうなの?」
「この国の宮殿はなにもかもエミーリエが継ぐものなんだ。俺たちの先祖はそのためだけにこの土地を治めいていた。平和な世界が来るように、と。エミーリエが世界を平和に導くんだ」
「そんな力持ってないわ。ただの騎士の娘よ」
「エミーリエはそれでいいんだ。わからないことは周りが全てやってくれるよ。君の存在が宝物なんだ。俺たちはその宝物の護り人、なんだ」
 クルトから聞く話はいままで聞いたことのない話ばかりだった。偉くないのに偉いとただ言う。私はなんなのかしら?。
「俺の愛しい人、だよ」
「もう。また読むなんて。ずるいわよ。クルトの考える亊全然来ないんだから」
「じゃ、もっと想ってくれるようになったら伝わるよ」
「馬鹿」
 そう言って胸元にひっつく。クルトの心臓の音が聞こえる。その音に安心する。クルトを好きになって良かった。そう私は想っていた。


あとがき
いちゃいちゃいしてますな-。読み返しても歯が浮く世界に震える始末。なんでまた、こうもラブラブなんですかね。相思相愛って怖い。しかし、クルトの思考は何故読めないのだろうか。謎だ。自制心の強そうなキャラじゃないのに。流石は王太子か。私はここ数日寝込んだかと思うと魚の水槽にへばりつき、です。というか水を運んでは捨て、運んでは捨て、の繰り返し。いや、捨てては入れて、か。最終手段、ホースで吸い込んで砂利を掃除という荒技を伝授され水槽の水を思いっきり吸い込んでしまった、馬鹿です。毎回なんですよ。水合わせでも吸い込むし。今は水合わせは袋を25分間いれて慣らす、ですが、一度点滴法をしかけて失敗しました。温度さえ合えばまだましなので、店員さんに教わった荒療治的導入です。あーちゃんが飢餓転覆のもよう。ご飯三粒しか上げてないのに、便秘かなにかで浮き袋が上手く働かず、下に潜れません。よく上層にいるので好きなのかと思えば動けないようです。今日綺麗に水槽を洗って入れてあげたのですが、その前からの様子。転覆しかけていたのでご飯の数を減らしたりはしていたのですが。気になる。やっと、テトラと白コリ一族の水槽が合格ラインに到達。この後はこまめに様子を見る。汚れを取るですね。テトラの水槽は水草の株分けで一杯です。二酸化炭素が多かったの入れているのですが。無事、今日の検査で酸素がありました。あとはコリパンダのメンテナンス。がんばります。って執筆しろですね。してます。一日一話は。もう少しお待ちください。

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