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雑多記事

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#思い出

四季 #1

四季 #1

 記憶の中で美化される昔は、今のやるせない思いを晴らしてくれる。たとえ一時的であったとしても、それは何よりも心地良いもので、同時に現実から目を逸らす背徳感を私に与えてくれるのだ。
 記憶とは厄介なものだ。忘れたくないこと(必死になって勉強した英単語だったり、しなければならない事だったり)は決まってすぐに消えてしまう。それなのに、どうでもいいことはなぜか離れようとすらしない。
 大学帰りに、久しぶり

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四季 #3

四季 #3

 昔、好きだった場所があった。地元の人間でも覚えている者は少ないだろうか、町に端っこにポツンとあった雑貨屋だ。当時小学生、しかも低学年だった私は母に連れられて何度も訪れた。どこにでもあるような雑貨屋だけれど、ジブリ映画に似た雰囲気を醸し出す内装と木造の小屋特有の匂いが子供ながらに(もしくは子供だであるからこそ)好きだった。また、隣には同じ店主が営むこれまた小さなカフェがあった。今となっては大好物で

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下灘駅に行ったときの話

下灘駅に行ったときの話

 どこかに行けば何かが変わると思っていた時もあった。いや、もしかすると現在も、心のどこかで同じことを考えているのかもしれない。

 もう5年前になるのか。私は下灘駅を人生の目的地とし、ついにその地へと辿り着いた時を、今でも鮮明に思い出せる。

 下灘駅は愛媛県伊予市にあるJR四国予讃線の駅。ホームは一線だけで、周りも町とは言い難い閑散としている田舎だ。しかし、「海から一番近い駅(注:現在は一番では

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暑熱

暑熱

 今から数年前、高校2年生の夏休み。クソみたいな暑さを背負いながら、数学検定を受けにクソみたいな高校へと足を運んだ。ただでさえ補講で頻繁に通っているというのに、どうして意味のわからない検定を受けに行ったのか、自分でも謎だった。いや、当時は何かをやっていないとどうにも生きている心地がしなくて、結局のところあの夏の蒸し暑さの様にうざったい何かから逃れるために、模試で一番点数の高かった数学を利用しようと

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