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絶対的善行(逆噴射プラクティスピックアップ)

「おかえり、dude」

家に帰ると、全身黒タイツのマッチョマンがテーブルに座っていた。

「ダーヴィ!来てたのか?」「携帯を使えない状態だから事前に知らせなかった。すまんな。あとヌードルを勝手に開けさせてもらった。気にしないだろ?」

ダーヴィは袋入りのインスタント麺を覆面のままパリパリと噛み砕き、顔を覆う暗黒に消えていく。

「……お湯沸かしてあげようか?」「いや、結構」「そうか」

僕は冷蔵庫からビールを二本取り出し、ダーヴィの向こうに座った。

「最近なにしてるんだ?」

「週末は渋谷でヴァンバイア・ギャングと戦っていた。フェスティバルに乗じ、手当り次第人間を襲って飲んでいた。ひとりを投げとなしてトラックを横転させたな。俺の姿がカメラに映ったかと心配していたよ」

「へえ、でもそうらしい映像がないんだね」

「運よく映らなかったか、誰かが意図的に消したか……俺のことより、お前の方こそ面白い事やっているのではないか?逆噴射プラクティス、見ていたぞ」

「ちょっ、見てたっ!?」ビールは零れかけた。「まじ?じゃあなんでスキとコメントしくれなかったんだ?」

「アカウントは作らない主義だ。痕跡は少ない方が良い」

「ふーん、じゃせめてどれが一番気に入るが教えてくれよ」

「これだな」

「好きな娘の前で無様を晒し、ついにきれて不良を殴った主人公に強いシンパシーを感じた。彼はあの後どうなったか是非知りたい」

「そうか、でも続きかく予定ないよ。僕に恋愛展開は無理」

「む……そうか。それと、エルフの王子がまとめの記事を書こうと促したな」

「あれは……煽られたっていうか……まあ、評判は良かったし良しとしたけど」

「ではこの際に、ほかの参加者の記事をピックアップもやってみないか?」

「ええっ!?やだよ!なんで競争者を誉める真似をしないといけないんだよ?」

「よく聞け、dude」ダーヴィは僕の肩を抑えた。「おまえの小説は面白い、でもスキが少ない、なぜだと思う?」

「フォロワーが少ないから?」

「そうだ。つまりおまえは他人への意識が足りてない。仕事に没頭しているだけでは駄目だ。他人の作品を読んで、いいところを褒めることで、自分の心の広さをアピールしろ。そうすれば自分の作品がもっと見られるはずだ。俺が言いたいことがわかったか?」

「でもこれって、バーター行為……」

「『貴方の作品を読んだから貴方も僕の作品を読んでよ』と書かなかければバーターではない」

「わかった」

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前置きがなが~い!ということで今日まで読んできた逆噴射プラクティスの中で特に印象深い作品をいくつか取り上げたいと思います。僕が思ういい小説は、読んでいて脳内に画像で出るかどうかです。つまりわかりやすく想像し易い小説が好きなんですよ。例えばこれ。

最高に面白かった。難癖をつける連中に、イッキューパイセンがとんちとパンチで一発噛ますぜ!もうこれが優勝でいいじゃないか。脳内でイッキューパイセンはジェイソン・ステイサムの顔している。


敬愛なる牧野なおきさんが書いたダークヒーロー物です。動物虐待者に対する怒りと憎しみを強く感じました。風景描写はなかったのに自然と薄汚い路地、路傍に転がるゴミなどジェフ・ダロウの絵が目に浮かぶ。


エルフが高まっていたと同時に、ドワーフたちにも脚光を浴びせた、重要な作品。これがなけれな僕のドワーフ小説に挑戦しなかったでしょう。キャプテンのブレのなさも素敵。


洋ドラマでよく見かけそうな展開、それをalohatenguが緻密な文字で完璧に再現した、ワザマエとしか言えまい。アリシアはこれからたくさん走って、たくさん殺って、たくさんやられるだろう。正直僕はalohatengu氏の才能を嫉妬し敵視している。誰か彼に伝えてくれ。


開始二日、また#逆噴射プラクティスに殺伐とした作品が溢れかえった頃、この不思議な話はとても目を惹いた。肉体を捨てて平面の世界に生きる祖母はインパクト満点。未発表だがなんとこの作品は完結済みである。これは期待させずにはいられない。あとalohatenguほどではないが僕はお望月氏の才能嫉妬しライバル視している。


銃撃戦の真っ最中、死狂いのリュート弾き、その価値を認める主人公。とても絵になる。脳裏にメキシコにおいても特に殺伐としたシウダー・フアレスの光景がよぎった。行ったことないけれど。


緊張感とスピード感は半端なかった。頑なにいたずらと思っていつもの行動しながら、徐々に焦燥感が高まり、精神が追い詰められていく感じがたまらない。


先が見えない、変わることのない日常が、やげて人の心を蝕む毒となる。悪名高い女子高生収容施設と違った絶望感も醸し出した。人はパンのみでは生きていけない、適度な刺激が必要だ。彼女たちにとってかなりリスクが高い刺激ではあるが。

今日はとりあえずここまでにします。400字を通してみなさんの中で築いた世界を見るのは本当に楽しいです。逆噴射小説大賞はあと数日、一緒に走り切ろうね?

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「おーい、書けたぞ。っていねえし!」

リビングルームに戻ると、ヌードルとビール缶は既に方付けられ、ダーヴィが来ていた痕跡はまったく見れなかった。

「なんだよ、うちは勝手に行ったり来たり場所じゃないつうの……」

僕はスマホを操作し、書きあげたnoteを公開した。

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向こうビルの屋上、全身が黒いボティスーツに覆われた逞しい男はアクズメが公開ボタン押すところを確認し、頷くと、踵返して走り、跳躍した。その輪郭は夜に溶け込んだ

≪DARVI , SEE YOU NEXT TIME≫

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