感想:まいにちドイツ語応用編「ベルリンからのドイツ語シャワー」
2023年10月~2024年3月 応用編(新作)
講師:小松原由理
「ベルリンからのドイツ語シャワー」
評価(5段階)☆☆
この講座の特徴はタイトルが示す通り、ベルリンの放送局によるポッドキャスト番組をそのまま素材として用いていること。学習者向けに作られた標準的で聞き取りやすい音声ではなく、容赦のない「生のドイツ語」をいかにして聞き取るか、という学習者にとっては少々挑戦的な内容となっている。
rbb(1~6)と Radio Paradiso(7~12)制作のポッドキャスト番組から12の「エピソード」が教材として選ばれている。
なぜベルリンの紋章には熊が描かれているのか?
シュペーティは本当に東ドイツの発明か?
ベルリンの明かりをつけているのは誰?
ベルリンのゴールデンブックに著名人たちが記帳したこと
カリーヴルストは本当にベルリン発祥か?
なぜベルリンの地下鉄は黄色なのか?
ドイツ初のユニークな気象博物館
ユートピアと日常博物館:17万点以上に上る日用品の中に見る東ドイツの生活
持ち運べる犬のしつけ:メイド・イン・ブランデンブルク!
ボランティア人力車「eRika」
「Kuturland Brandenburg」:ここは何かを始めるのにベストな場所
「CoderDojo」:遊びながら簡単にプログラミング!
各エピソードを2週間4回に分けて学習する。そのうち1回目~3回目が通常回で、4回目の復習回にエピソード全体を振り返るまとめを行う。ここまでは半年間を通して共通であるが、前半(10月~12月)と後半(1月~3月)ではポッドキャスト制作局だけでなく、テキストの構成と放送される内容に大きな違いがあった。
私はこの講座を前半の3ヶ月だけにすべきだったと考えている。理由は後半になって講座の質が落ちたことと、マンネリ化を起こしていたことである。
前半は悪くなかった。必ず決まった回数再生されるポッドキャスト音声、全て放送される「キーフレーズ」、新規性のある「めざせ!聞き取りマイスター」の解説。気になるのは「キーワード」を1度しか言わない日と2度繰り返す日が気まぐれで変わることくらいだった。テキストはよく整理されており、「2週間分のドイツ語テクスト&日本語訳」が各課の解説ページから離れた位置に掲載されいるのも慣れてしまえば問題はない。
ところが後半では、通常回の最後にもう一度音声を流す時間がなくなり、復習回ではエピソードの一部しか聞き直すことができず、テキストに掲載された「キーフレーズ」の一部しか放送されなくなり、「めざせ!聞き取りマイスター」は聞き飽きたかどうでもいい点ばかりが取り上げられ、「キーワード」の気まぐれにも拍車がかかっていた。後半のテキストは異例の大容量(1課当たり8ページが当たり前!)だった一方、放送内容は一貫性を欠き、中途半端で無駄が多く、15分という短い時間を効果的に活用できていなかった。
後半特に深刻だったのは、ナビゲーターの綿谷さんが毎回お決まりのように「なお番組中、リモート取材や電話取材の音声が入る場合もあり、音声が聞き取りにくいところもありますが、現地の番組をそのまま使用しておりますのでその点ご了承ください。」と断りを入れ、聞き取りにくかった部分をパートナーのビティヒさんが改めて読み上げる形式になったこと。結局、復習回でもビティヒさんの吹替版が流されるようになってしまった。
元の音声が聞き取りづらいという声が多く寄せられたからなのだろうか。講座のポイントにも毎月挙げられている、「生のドイツ語を聞き取る力を養成する」という方針を曲げざるを得なくなった点に制作陣の誤算を感じずにはいられない。
確かにこの教材のドイツ語は難しかった。アナウンサーがスタジオで話す音声でもなかなか聞き取れないのに、電話越しの一般人ともなれば至難の業である。しかし、それもまたこの世にありふれたドイツ語であって、まさにこの講座で学習者が取り組むべきものだったはずだ。それを吹き替えてしまっては「ベルリンからのドイツ語シャワー」ですらなく、本末転倒と言うほかない。このような結果になってしまうのであれば、この講座を6ヶ月続けるのは最初から無理があったのだろう。
私はこの半年間テキストを購読し、毎回欠かさず2度聴いて学習したことを全く後悔していないし、恐らく2025年度前期になるであろう再放送時にも復習するつもりだ。挑戦的な内容と圧倒的な独文の量は近年のまいにちドイツ語応用編の中でも際立っており、このような講座がまた制作されることを期待している。
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