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『なんか胸に引っかかる話』

小学生は
カブトムシやクワガタが大好き。
男の子はみんな好きだった記憶がある。


都会っ子の私たちが
クワガタをゲットするには
夏祭りなんかで買うか
デパートに買いに行くしかなかった。
近くの山でゲットできる人が
羨ましくて仕方なかった。


夏休みに
池田市に住む親戚の家に泊まって
朝早く起きてクワガタ取りに行った。
4箇所くらいの場所を回ると
数匹は取れた。
ヒラタクワガタ。ノコギリクワガタ。スイギュウクワガタ。ミヤマクワガタ。オオクワガタ。コクワガタ。


私が好きだったのは
通称スイギュウと呼ばれる 
ツノが大きく発達したクワガタや
ミヤマクワガタ。
今では中々取れないオオクワガタも
まだ取れた時代だ。

小学4年の頃の話。
仲良くしていたY君という友達がいた。
家は薬屋さん。
頭が良くて、髪にウェーブがついている
ちょっとコロンとした男の子。


学校が終わってから
よく家に遊びに行った。
遊びに行くと
Y君のおばあちゃんが、
浅田飴をちょっとくれる。
喉に効くらしい。
今も覚えている浅田飴。
懐かしい。


ある日、
Y君とクワガタの見せ合いっこをしていた。
私は親戚の家に泊まって捕まえた
クワガタ5匹を見せた。
スイギュウ、ミヤマクワガタ、ノコギリクワガタ。オオクワガタ、ヒラタクワガタ。


Y君はコクワガタを数匹。


互いに見せ合いをしていたが、
Y君は私のノコギリクワガタをずっと触っている。


『そろそろ帰るわ』
と言うと
Y君が突然、
自分のコクワガタのプレゼンを始めた。

『これ見て❗️このコクワガタ。めっちゃ足速いねん!』


と言って
コクワガタのケツをチョンと弾く。
サササっと移動するコクワガタ。

『ホンマやな〜速いなぁ』

と私が言う。


Y君はさらに

『こんなに足が速いクワガタはおらへんで。
もし、アークンが良かったらそのノコギリクワガタと変えてあげてもええで!』

と言う。


なぜか、その時の私は
Y君のプレゼンに乗せられ
足がめっちゃ速いコクワガタが良く見えてきた。


思わず

『ええよ!変えよか?』

と話した。


Y君は

『ホンマ?ええの?
ヨッシャ変えよ!
でも、変えたことは誰にも内緒にしてな!』


と、やたら力説してきた。
一瞬『ん?』と思うも
『わかった』と答える私。


親にも他の友達にも黙っていた。


今思うと、
完全にやられた。

Y君は
ノコギリクワガタが欲しかったんだろう。
どうしたら交換してもらえるか
必死に考えたんだろう。

当時は、みんなコクワガタに
値打ちを感じていなかった。
それを
『足が速い!』
という一点だけをウリにしてきた。
思わず乗った私がバカだった。


『誰にも内緒にしてな』
の言葉が確信犯の証拠である。



ずっと
心の中に引っかかっていたY君の言葉。
クワガタに足の速さなんて求めていない。
フォルムの美しさやカッコ良さが魅力のはず。


今は全く交流が無い。
何をしてるのかな?


なぜか、
夏の終わりに思い出してしまった。
今も胸がゾワゾワする。


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