朝ドラ『まれ』を振り返る

不評が伝えられる朝ドラ『ちむどんどん』に関するもので、“反省会”ハッシュタグに関する文春オンラインの記事がありました。

朝ドラ反省会のハッシュタグは、2015年度前期の「まれ」のときから目立ち始め、2016年度前期の「とと姉ちゃん」や2018年度前期「半分、青い。」の放送時もなかなかに盛り上がってしまっていた。

“失敗作”“駄作”と語られることが多い『まれ』ですが、現在進行形の『ちむどんどん』に比べると、結構面白かったような気にもなり。作品も人も全否定からは入らない主義ですので、『まれ』の良かった点を挙げてみたいと思います。その前に、どんな作品だったのか。

石川・能登に移住した津村一家。夢追い人の父(大泉洋さん)を反面教師にした娘の希(土屋太鳳さん)は「地道にコツコツ」の堅実第一な少女に育った。パティシエになるという夢を実現するために、横浜の天才パティシエ(小日向文世さん)に弟子入りする。

良かった点その1。津村家が下宿することになる桶作家の元治役・田中泯さんの塩職人ぶりが見事だったこと(えっ、そこw)。『鎌倉殿の13人』で藤原秀衡の絶命シーンが斬新だった田中さん。世界的なダンサーであることを、この作品で初めて知りました。

『鎌倉殿』つながりでいえば、非情な頼朝役を演じている大泉さん。朝ドラにおける典型的なダメ父・兄の系譜で、コミカルな俳優イメージがまだ強かった頃の大泉さんが楽しめます。自分の中では、翌年の『真田丸』で印象が変りました。

希の同級生役もその後大きく飛躍した俳優がいました。『キングダム』も大ヒットした山﨑賢人さん。大河ドラマ『麒麟がくる』でヒロインを務めた門脇麦さん。そして、色々あった清水富美加さんと高畑裕太さん。

中でも名シーンの一つが、清水さんが感情を爆発させる場面。愛憎半ばする気持ちから、希が働いている店をネットで叩き、その後スイーツ対決に。勝負が終わった後に、本心をぶつける清水さんの演技が凄かったです。

『ちむどんどん』では、なんだかちょっと残念な喜納金吾役をやらされている渡辺大知さんも同級生の一人・高志役。当初は無口で影が薄いというキャラクターでしたが、あれよあれよと大変身。黒猫チェルシーのボーカルだけに、劇中歌「また会おう」「涙のふたり」はさすがでした。

後半の能登編は迷走した印象ながら、横浜編は割と楽しめた記憶。映画『誰も知らない』で鮮烈なデビューをしながら、一時芸能活動から離れていた柳楽優弥さんが、パティシエの息子・大輔役で本格的に復活した作品でもありました。希に対する「おはよう」のシーンもずいぶん話題となりました。

大輔の血のつながらない妹・美南役だったのが中村ゆりかさん。最近では『部長と社畜の恋はもどかしい』など、甘々なラブストーリーで大人の色香を放っていますが、この頃はまだ少女っぽさもあり、パティシエ店の制服姿も可愛かったですね。

桶作家の孫娘として浜辺美波さんと恒松祐里さんが、一瞬だけ登場しているのも貴重。浜辺さんは2023年度の朝ドラ『らんまん』でヒロイン(主人公の妻役)を務めますし、恒松さんは『全裸監督2』を経て、『おかえりモネ』で朝ドラに帰還。

おっと、肝心の土屋さんについて触れていませんでしたが、現在放送中の『やんごとなき一族』はなかなか面白く。『まれ』時からの成長ぶりを確認するという意味でも、今一度『まれ』を見てみるのも一興です。


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