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新章・魔王の娘だと疑われてタイヘンです! 3巻第2章 魔王のことよりタイヘンなんです!③
それはヤルミラ先生の授業が終わってお昼休みに入った時のこと。
「アーシェラちゃん、それじゃあ中庭に案内してあげる」
そう言ってフランはアーシェラの手を取った。
「はい。お願いします」
と、アーシェラも嬉しそうにその手を掴んでフランについていく。
「リルちゃんもそうだったけど、フランも結構女の子にモテるのよね……」
そんな二人の背中を見てカナーンは苦笑した。
「ほら、エリナ。私
新章・魔王の娘だと疑われてタイヘンです! 3巻第2章 魔王のことよりタイヘンなんです!②
「どうしてそんな面白――喜ばしいことを私のいないうちにやっちゃうのよ……」
ランドバルド邸に戻ってきたロミリアはそう言ってため息をついた。
マリウスのラティシアへのプロポーズのことを言っているのだ。
ノクトベルの住民にとって中心的存在である彼女は、魔王の宣戦布告による混乱を治めるために大聖堂に一時的に戻っていた。
「幸い魔王の正体に気づいたという声は、私の元には来ていないわ」
リクド
【冬コミ告知】新まおです②頒布します!
エリナ
「タイヘンお待たせしました!」
フラン
「私たちのお話、『新章・魔王の娘だと疑われてタイヘンです!』の2巻がついに頒布されることになりました!」
カナーン
「頒布場所は12月31日(土)コミックマーケット101(2日目)東地区“ミ”-34b『姫のあそび場』になります」
エリナ
「わたしたちとヒュペルミリアス皇国の皇子様マリちゃんとの出会いは、紆余曲折を経てタイヘンなことに!?」
フ
新章・魔王の娘だと疑われてタイヘンです! 3巻第2章 魔王のことよりタイヘンなんです!①
「チッ、どうなッてやがる! なンでオレたちが狙われなくちャならねェンだ!」
羽虫の群れが耳障りな音を立ててその声を発した。
「決まってる……。『八柱の魔神将』を使った法術。それにはたぶん、『八柱』すべてが揃う必要がある。だから、魔王陛下は魔神将の誰かが討たれても、代わりの魔神将が産み出される仕組みを作った……」
海を征く鮫の背びれのように大地を斬り進む刃が答える。
「ああン? それじャ
新章・魔王の娘だと疑われてタイヘンです! 3巻第1章 これじゃ世界中が大混乱です!?③
晴れ渡っていた空がにわかに暗くなりはじめた。
どこからともなくどんよりとした黒い雲が現れ、蒼い空を塗りつぶしていく。
日射しが遮られ、気温が急激に下がっていったが、人々の背筋を震わせたのはなにも気温のせいだけではなかった。
「これは……あの日と同じ……」
アリエノール・ド・ロレーヌは大陸でも有数の歴史を誇る神殿にいた。
神殿の上部に彫られた意匠から、水が属の神殿であることは見てとれる。
新章・魔王の娘だと疑われてタイヘンです! 3巻第1章 これじゃ世界中が大混乱です!?②
風呂から上がり、エリナたちはそれぞれの部屋に戻って一旦くつろぐことになった。
夕食というにはもう遅い時間ではあるが、準備ができ次第リエーヌが呼びに来る手筈となっている。
「ふぅ……」
部屋に戻ると、エリナはベッドに腰を下ろして大きく息をついた。
フランはエリナの顔を覗き込んで、優しく声をかける。
「エリナが深刻になることじゃないよ。元気出して」
「でも、さ……」
エリナの力ない声に、
新章・魔王の娘だと疑われてタイヘンです! 3巻第1章 これじゃ世界中が大混乱です!?①
「剣っていうのは、剣だけじゃ剣じゃないのよ」
ルナルラーサ・ファレスは、その絶技『アルグルース・セレネー』のコツを聞かれたとき、散々悩んだ挙げ句にそう答えた。
それを聞かされたカナーンはまるで意味がわからず眉根を寄せる。
「えーと、だから、剣は人が剣として振るってはじめて剣になるのよ。そうじゃない剣は、ただの刃……っていう感じかしら」
「……それがアルグルース・セレネーのコツなの?」
「
新章・魔王の娘だと疑われてタイヘンです! 3巻プロローグ
薄桃色の花びらが咲き乱れるそれは見事な大樹があった。
大樹から離れた花びらは、緩やかな風に乗って舞い踊り、あたかも闖入者たちを出迎えているかのようだ。
その大樹の根元には、人が一人、背を向けて座っていた。
肩幅や背の高さから見て男だろうか。
黒曜石か黒真珠かと思われるほどの艶やかな髪を靡かせているが、その脚はあぐらをかいているのがわかる。
「勇者よ。俺がここからなにを見ているの
【告知】委託販売の開始です!
エリナ
「えーっと……みなさま! あけましておめでとうございます!」
フラン
「旧年中は数々のご声援をいただき本当にありがとうございました」
カナーン
「本年も『新章・魔王の娘だと疑われてタイヘンです!』をよろしくお願いいたします」
エリナ&フラン&カナーン
「よろしくお願いいたします!!」
エリナ
「んで、予定だと今月から物語が再開するって話だったよね?」
フラン
【冬コミ告知】今度こそ新まおです実本版の頒布です!
エリナ
「みんな、タイヘンタイヘン! タイヘンだよっ!」
フラン
「私たちのお話が、一冊の本にまとまって『コミックマーケット99』で頒布されることになりました」
カナーン
「ちょっと待って。なにかヘンだわ……」
エリナ
「どうしたの? カナちゃん」
カナーン
「私、このやり取りを以前にもしたような気がするのよ」
フラン
「『新まおです』が頒布されるはずだった『コミックマーケット98』自体
新章・魔王の娘だと疑われてタイヘンです! 2巻エピローグ
『失われし時の迷宮』と呼ばれる古代の迷宮、その中枢たる広間には、複雑怪奇な幾何学模様と文字と思われる記号が埋め尽くされていた。
魔力が流しこまれるとそれらは怪しく光り、蠢き、迷宮の全てで以て構成された古の術式を起動させる。
「おまえたちのことを完全に信じたというわけじゃない。だが、罠にしてはあまりにも回りくどすぎる」
「結局、信じられるのはそこだけってことね」
「感謝する。貴公らのその判断
新章・魔王の娘だと疑われてタイヘンです! 2巻第4章 魔神を倒す力ってなんなんですか!?③
魔神同士が相争うホールに足を踏み入れた瞬間、フランは咄嗟に身を隠すことを選択した。
その判断が功を奏して、マナとアラヤ――に憑依しているガビーロール――の標的からは外れているようだが、姿を見られていないとは限らない。
否、ラティシア単独ならともかくエリナもいるのだ。
他に仲間がいると思われていることは明白だろう。
だが、まずは一網打尽にされないこと。
そう考えての選択だったが、状況はフ
新章・魔王の娘だと疑われてタイヘンです! 2巻第4章 魔神を倒す力ってなんなんですか!?②
上空で旋回するコルに従って、エリナたちは地下迷宮の入り口にたどり着いた。
その中からは絶え間なく轟音、爆発音が鳴り響き、戦闘の凄まじさを明確に伝えてくる。
コルがエリナの肩に舞い降り、しきりにその頭をエリナの頬に擦りつけてきた。
「わわ、コルも怖いの? 珍しいね」
エリナもその戦闘音には恐怖と緊張を感じていたが、コルのこの行動で少し気を紛らわすことができた。
コルは優しい子だ。エリナ
新章・魔王の娘だと疑われてタイヘンです! 2巻第4章 魔神を倒す力ってなんなんですか!?①
「お父さまは隠しているつもりだったみたいだけど……」
「オレたちに隠れてつるんでた相手がまさか、魔神だったとはな……」
魔神同士の邂逅を密かに監視していた二人の少女がいた。
マナ・エナンジー、アラヤ・エナンジー。
魔王討伐の英雄の一人である魔法使い、サイオウが育てている双子の姉妹だ。
「このことはパパは知ってると思うか?」
「……思わないわ。ガビーロールの独断だと思う」
「じゃあ、
新章・魔王の娘だと疑われてタイヘンです! 2巻第3章 新たな魔神もタイヘンなんです!③
エリナとロミリアがプレツィター商会に向かった頃、ランドバルド邸は微妙な空気に包まれていた。
エリナがいないランドバルド邸は、フランにとっても、カナーンにとっても、どこか他人の家のように感じられた。
先ほどまでは、何の疑問もなく我が家のように振る舞っていたというのに。
「え、えっと……リエーヌさん! 私、なにかお手伝いします!」
「あ」
唐突にリエーヌの方に駆けよっていったフランをカナ
新章・魔王の娘だと疑われてタイヘンです! 2巻第3章 新たな魔神もタイヘンなんです!②
「エリナ、エリナ」
「ん、んん……」
名前を呼ばれ、優しく肩を揺らされて、エリナはまどろみの中から引きずり出された。
まだ重い瞼を開くと、大好きな二人の親友が心配そうな顔でこちらを見ている。
「ふぁぁ……おはよ、フラン、カナちゃん……。ふにゅ……わたし、寝坊しちゃった?」
なかなか動きださない脳みそをなんとか動かしてそう言うと、二人はホッとした笑顔になった。
「ううん。でも、そろそ