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休職日記#5 会社に退職を伝えた日に食べた母のパイの味は忘れられない
今日、会社に退職を伝えた。
かなり悩んだ。迷った。ためらった。
3年前の今頃は、ちょうど就職活動をしていた頃だ。
1年間の無職期間を経て目指した再就職。
「子宮内膜症」という持病を抱えた、正社員歴半年のアラサー。
前途多難に思われたが、少しずつ少しずつ進んで。
内定をもらった時は、飛び跳ねるほど喜んだ。
もう一度、社会でやり直すチャンスをもらえた!と、生きる希望を掴んだ。
一緒に働く人たちは温かい人たちばかりで、仕事もやりがいがあって。少しずつ成長していっている自分を感じられて。
そんな会社をやめてしまって本当にいいのだろうか?やっぱり辞めなければよかったと後悔するのではないか?
そう何度も自分に問いかけた。
だけど、心と体は正直で。
入社して3ヶ月で体調に異変が現れ始め、部署内で送る日報の体調欄は
「不調、微妙、倦怠感、胃腸不調、頭痛、めまい」などの不調ワードで溢れた。
2年半勤めた中で、「良好」だった期間はかなり少ないと思う。社内でも、いつも体調悪い人というイメージは定着していたし、「虚弱体質だよね〜」と言われたこともあった。
それでも、1年間無職だった時の苦しみをまた味わいたくなくて踏ん張った。
あのやりきれなさ、自分が社会に存在していないような孤独感、なにもできない非力さ、医療費で消えていく貯金。
「あの頃には戻りたくない。ここまで頑張ってこれたんだから大丈夫。頑張れ、私」
そう言い聞かせて、踏ん張ってきた。
だけど、そんな無理は長くは持たないわけで。
「もういやだ、もう辞めたい」と鼻水も涙も垂れ流しながら目の前の仕事を捌くようになっていた。
次第に、徐々に感情が麻痺していって何にも興味を持てなくなった。
「楽しい」「嬉しい」「おいしい」「きれい」
そんな感情が全部なくなって、目の前に広がる景色はグレーだった。
自分の体に、もう一人の自分が重なっているような妙な感覚になることもあった。
会議で他の人が楽しそうに笑っていても、全然笑えない。内容がすり抜けていく。パソコンの上を飛び交う情報のスピードに追いつけない。
そんな状態になって初めて、「助けてください」と上司に泣きついた。
それからは、時短勤務にしてもらったり、異動希望が通ったりして、少しずつ体調も回復してなんとか2年半やってこれたけれど。
やっぱりこの会社が好きだなって思えて、また頑張っていこうと思えたけれど。
「適応障害」と診断され、休職して思ったのは、「もう限界なんだな」だった。
一緒に働く人たちのことも大好きだった。
元気だったらもっと一緒に働きたかった。
でも、自分を大切にしてあげようとも思った。
自分の大切な人が同じように苦しんでいたらきっと、
「無理しなくていい。やめてもいいんだよ。2年半よく頑張った。とにかく休め。なんとかなるさ!」って声をかけるだろうな、って。
だから、辞めることにしたのだ。
散々迷ったけれど、自分で自分の人生を歩んでいこうと決めたのだ。
上司とのオンライン面談が不安すぎて、半年ぶりの再会に緊張しすぎて、今朝も5時まで眠れなかった。
9時に起きて、二度寝を試みたけれど「はっ、面談・・・!」と何度も覚醒して熟睡できなかった。
胸がいっぱいでご飯が食べられず、ウィダーインゼリーとココアを流し込んだ(今考えると珍妙な組み合わせだ)。
目からも鼻からもありとあらゆる液体を流しながら、退職の意向を伝えた。嗚咽が止まらず、言葉が喉をつかえた。
何度もシミュレーションし、面談を想定して一人で練習していたけど、こんなに泣くとは。練習していた時みたいには全くうまく話せなかった。
「なによりも自分の体が大切。休む時期は人生においてとても大切だから、ゆっくり休んで」と温かい言葉をもらって、面談は終了した。
緊張で首にも脇にも背中にも汗をかいていて、シャツがびっしょり濡れていた。
なんだか力が抜けて、お腹が空いた。
遅すぎる昼ご飯を食べて散歩へ出ると、部活帰りだろう中学生たちとすれ違った。仲間たちとわいわい話しながら、みんな楽しそうだ。
あの頃は、30歳なんてものすごく大人で、バリバリ働いて、海外とかにも行っているもんだと思っていた。当たり前に、働いていると思っていた。
まさか30歳で退職して、実家暮らしで親のすねをかじり続けるなんて思ってもいなかった。
まぁ、こんな人生もあるんだな。
家に帰ると、母が洋梨パイを焼いてくれた。
仏壇に供えていた洋梨がかなり熟れてしまっているから、と。
焼きたてのパイの味は、優しすぎる甘さだった。
大丈夫、と包み込んでくれた気がした。
![](https://assets.st-note.com/img/1665760471978-Al3nJYAFYM.jpg?width=800)
描いた洋梨パイを母に見せたら
「作ったやつより美味しそう!」と言ってくれました。笑
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