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新年にあたって

◎コロナ禍の長寿中小企業の姿

 私はこれまで20年以上、中小企業の『記念誌』や『社史』『創業者伝』の編纂に携わってきました。創業からの年数でいえば30年から110年の企業です。

 こうした経験もあって歴史のある中小企業が今回のコロナ禍をどうやって乗り切ろうとしているのかに注目しています。私の経験だけでは限られているので、もう少し幅広く知りたいと思い、探してみたところ、一般社団法人100年経営研究機構が昨年5月に創業100年以上の長寿企業を対象に実施した「コロナショックへの長寿企業の対応に関する緊急調査」の結果の要旨を同機構のホームページで発表していることがわかりました。

◎変化を受けとめ、挑戦する

 回答は全国95社の創業100年以上の長寿企業で大半は売上高が10億円未満の中小企業です。調査の結果を見るとコロナ禍で売上げ減少となった企業は7割を越えており、やはり長寿企業もその多くが影響を受けていることがわかります。興味深いのは回答のうち8割以上が「販売方法の変更」を試み、3割以上が新規事業へ挑戦していることです。私の印象ですが、この数字は昨年5月時点ということを考えると、一般の中小企業の平均の同等以上ではないかと思われます。

 数々の困難を乗り越えた遺伝子が継承されているためなのか、あるいは経営トップが「長く続いた会社を自分の代で終わらせてはならない」という気持ちからなのか、いずれにしても長寿企業ほど、積極的に変化を受けとめ、危機を脱するための挑戦を続けていると言え
るのではないでしょうか。

◎スペイン風邪を乗り切った先人たち

 私が仕事で関わらせていただいた企業もそうですが、歴史ある企業は関東大震災など大規模な自然災害や太平洋戦争で甚大な被災を受けながら、そのつどたくましく立ち上がって現在まで続いています。

 特にいま私たちがまっただ中にいるコロナ禍との関わりで言えば、前回のスペイン風邪の世界的な流行は日本でも1918年(大正7年)から1920年(大正9年)まで続いていますので創業100年を少し越える企業であれば、その影響を受けています。

 当時の日本の人口が5,500万人、その約43パーセントにあたる約2,380万人が感染し、約39万人が死亡したとされます。日本の約14人にひとりの命が奪われたことになります。
 この数字を現在の日本の人口1億2580万人にあてはめると、感染者数5,443万人、死亡者は約89万人になります。昨年12月22日時点で今回のコロナ禍による累計陽性者数が約173万人、死亡者数は18,381人ですから感染者数(今回は陽性者数)は約31倍、死亡者数は約48倍という、ものすごい数字です。


 こうした中でなんとか危機を乗り越えようとした企業やそのさなかに創業している企業、そしてそこにいた人たちのことを思うと、大きな感慨を覚えます。その変化に対応する力、決断と行動力など、私たちが先人から学ぶものはまだまだたくさんあることに気づかされます。


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