【TV Talk with Jo Kinsella】EPISODE 08: イギリスのテレビ事情(要約)

テレビ広告の関係者からのニュース、インサイト、現場の視点を届ける、アトリビューション分析サービス企業・TVSquaredのJo Kinsella CEOによるポッドキャスト「TV Talk with Jo Kinsella」。たまに聴く程度だったのですが、第8回の内容が興味深かったので、要約を作ってみました。テーマはイギリスのテレビ事情についてです。オリジナルはこちらから。

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>> Jo Kinsella(TVSquared)
今日はイギリスはバースからの中継です。 Mostly Mediaのマネージング・ディレクター、スチュアート・スミスさんです。スチュ、来てくれてありがとう、元気ですか?今日はテレビのプランニングとバイイングについて話します。私たちはアトリビューション・プロバイダーですので、明らかにあなたの方が近いですね。COVIDが代理店ビジネス全体にどんな影響を与えるか、また広告主をサポートするためどう変化していくのか。

>> Stuart Smith (Mostly Media)
私たちは純粋なメディアバイイング代理店なので、パフォーマンスを重視しています。基本的には(テレビでの)ダイレクトレスポンス広告をデジタルでバックアップ、他に新聞とラジオ、OOHなど、広告主のKPIに基づいてサポートしています。メディアに垣根を作らないワンストップショップです。

>> Jo Kinsella(TVSquared)
クリエイティブのチームは持っているの?

>> Stuart Smith (Mostly Media)
以前はあったのですが、今はプランニング・バイイングに集中して、腕のあるパートナーたちと働いています。予算に応じて使い分けています。

【テレビ視聴の増加と料金ダウン】

>> Jo Kinsella(TVSquared)
イギリスでは、皆さんどの様に新常態(ニューノーマル)に対応していますか? ThinkBoxのレポートでは、視聴時間がライト層で51%、ミドル層で28%、ヘビー層で17%伸びたそうですね。どんな意味があるのですか?

>> Stuart Smith (Mostly Media)
Netflixを一気見するようなビジネスマンがSTAY HOMEでテレビに戻ってきたとみています。普段リーチし難い層にもメッセージを届けられる状況です。

>> Jo Kinsella(TVSquared)
興味深いです。料金は40~60%下がったと聞いています。

>> Stuart Smith (Mostly Media)
仰る通りです。最大の地上波であるITVは前年比50%です。この金額は90年代前半に相当します。これは素晴らしいことで、価値は変わらない訳ですからデフレ価格で、更に多くのオーディエンスにメッセージを届けられます。

>> Jo Kinsella(TVSquared)
テレビを打つ余裕がなかったアドバタイザーも興味を示してきた?

>> Stuart Smith (Mostly Media)
そんな流れが出ています。1年半検討していた生命保険会社は、1週間前倒しして値上がり前にローンチ出来ました。レギュラー社については驚くべきパフォーマンスを記録しています。

>> Jo Kinsella(TVSquared)
未来の代理店はその位素早い動きが必要ですね。ライブ感とそれを支えるデータ。相当高いROIが記録出来そうです。

>> Stuart Smith (Mostly Media)
50~70%の改善が見られます。同額でより多くのオーディエンスにリーチできますので。パンデミック下でもビジネスを続けられている企業ほど、この恩恵を受けていますね。

【イギリスのDTC(Direct to Consumer)事情】

>> Jo Kinsella(TVSquared)
オンライン教育、家庭の修繕、美容、宅配など、アメリカではDTCに関する話題がホットですが、イギリスやヨーロッパはどうですか?

>> Stuart Smith (Mostly Media)
まさにテイクオフの時を迎えています。課題はサプライチェーンですね。何であれオンラインで購買出来るなら、それはバーチャルなプロダクトで、パンデミックの影響は受けません。いっぽう倉庫、工場、ワールドワイドなサプライチェーンに頼っている人々もおり、倉庫や工場内のソーシャルディスタンシング、中国からの物流の遅延に影響を受けています。厳しいことですが、どこかで折り合いをつけなければなりません。

>> Jo Kinsella(TVSquared)
そういった話はよく聞きますね。実店舗に依存していた流通が、2週間で業態をECに変えたといった例もあるようです。それが未来だと思っています。我々の取引するCPG企業もDTCの戦略を参考にしている様です。

>> Stuart Smith (Mostly Media)
スーパーマーケットを例にとれば、ネットで事前に選んでおいて、実店舗には取りに行くだけ(のサービス)でも便利です。

>> Jo Kinsella(TVSquared)
とはいえ私の両親の様に、毎週土曜、スーパーに出かけるのが習慣化している人も居ます。私は馴染めませんが。

【Dragon's Den(a.k.a.「マネーの虎」)】

>> Jo Kinsella(TVSquared)
一寸聞いたんですが「Dragon's Den」(「マネーの虎」リメイク)で大CPを打つ広告主のディールを取ったそうですね。おめでとうございます。

>> Stuart Smith (Mostly Media)
10日程前に放送が始まったのですが、彼らは2018年に最高の投資を勝ち取った企業で、ビジネスから大きなリターンが無かったため、18か月後、イギリスのコングロマリットに事業を売却しました。安い電力会社への自動切換えサービスなのですが、とてもお得です。最適なエネルギーを計算してくれます。元々ソーシャル、特にフェイスブックでは有名でしたが、デジタルチャネルでは飽和点に達した部分があり、テレビに接近してきました。

>> Jo Kinsella(TVSquared)
状況は変わってきているのでしょうか。一周して戻った気もします。ソーシャルをしたいと言っている広告主との仕事は何度目ですか? 実際にテレビをやって、リーチのインパクトと事業の成長をみる訳ですが、ソーシャルだけ見ていた広告主をクロスメディアに変えた経験はどの程度ありますか?

>> Stuart Smith (Mostly Media)
よくありますよ。たいてい彼らはソーシャルに限界を感じてやってきます。主にインハウスで対応しいるため、(管理は)シンプルですがスケール出来ず、ビジネスを次のステージに持っていけない。そこでテレビが答えになってきます。仮に100回に1回失敗したとしても、今までにないリーチを獲得出来ます。正しいコンテンツで放送することによるパワーは議論の余地がありません。Googleのターゲティングでは出来ません。放送された瞬間に獲得したインプレッションは追跡が可能です。

【新常態のプランニングとバイイング】

>> Jo Kinsella(TVSquared)
そういったサービスは歓迎されそうですね。特に未だ支払いのために小切手にサインしている唯一の国アメリカでは(何の比喩か不明)。
テレビのプランニングとバイイングは新常態でどう変わりますか? アップフロントについて話しました、広告主は世界的なパンデミックの中で生活していることを話しました。世界的に(COVIDは)終わった訳ではありません。以前話した様に、広告主は柔軟性、透明性、アカウンタビリティを求めています。確かに思うのは、イギリスの代理店は、アメリカより存在感が大きいのではないかということです。アメリカでは、アトリビューションを実施する際、ブランドと直接対話することが多いです。代理店は3番目の椅子という感じで、非常にコラボ感があり、とてもオープンで、透明性があります。イギリスに来てブランドと会話をすると「代理店に確認しないと」「全て代理店に任せているので」といった具合です。ですので未だに代理店は強い影響力を持っていると思ったのですが、是非貴方からも話を聞きたい。

>> Stuart Smith (Mostly Media)
簡単に言うと私は変わらないと思います。3大グループ…ITV, Channel4, Skyは出来る限り市場を刺激しており、料金は徐々に戻ってきています。長年に渡って腹立たしいのは、システムが未だ時代遅れであるということ。フェイスブックに出稿したい場合、広告をアップするには2分もかかりません。途中で停止することも出来ます。今の時期でさえ2ヶ月前から予約を求められているんですよね。良い子にしてると1ヶ月前まで。素材のコピーは10日前、それからリールやショットも(出さなければならない)。極めて短い期間で広告主を決めなければならない中、テレビでは未だに5日前には素材を出さなければならない。放送まで5日待つというのは本当に古臭いです。システムは何年も投資されていません。SkyとComcastはAd Smartについて話していますが、そういった面では非常に賢いですね。バックエンドは時代遅れ。私が思うのは、イギリスの業界全体がデジタル化して、バックエンドの流れをスムーズにする必要があります。柔軟性がなさすぎるのです。

>> Jo Kinsella(TVSquared)
長い間透明性もなく「これを買うよ、信用してるから」といった具合でサイエンスとは程遠いものでした。私たちはそれをひっくり返してテレビをデジタルとして考える様にしたいと思っています。パフォーマンスチャンネルなんだから、デジタルと同じように買って最適化すればいいのです。

>> Stuart Smith (Mostly Media)
ある程度出来るとは思いますが、道のりはまだ長いと感じます。プログラマティックバイイングに関する話も多くありますが、何マイルも先の話です。Ad Smartはとても賢いですね。ただ、パフォーマンス業界は方程式であり、今の枠料ではリクープ出来ません。正直言って、ROIを上げるのは非常に難しいです。

>> Jo Kinsella(TVSquared)
それを言うのは貴方が最初じゃないわよ。

>> Stuart Smith (Mostly Media)
同じ枠を10倍の料金差で売るなんておかしな話です。天才…綺麗に着飾った天才ですね。マージンを高くするかニッチ商品にするしかありません。

>> Jo Kinsella(TVSquared)
アメリカではマーケットプレイスの構築やオーディエンスバイイングの話をしていますが、ここでは50年前と変わらないバックエンドの問題を抱えているんですね。デジタル化するなら全部スクラップして作り直したほうが…。

>> Stuart Smith (Mostly Media)
裏庭から入ってお金を取ろうとしている人たちとも戦わなきゃいけない!

>> Jo Kinsella(TVSquared)
その通り。私たちが話してるのはトレーディングシステムですよね。昨日、ある人と話してたんですが、テレビのプランナーとバイヤーは、私の出身でもある金融業界の、通貨取引や低遅延取引のようなものですよね。代理店のプランナーやバイヤーはトレーダーと考えらます。電話のデイトレードとは違います。PCの前で一日中、在庫を見ながら取引しているようなもの。そしてパフォーマンスに基づいて利益を最適化し…私たち良い話してるわね。道のりは長そうだけど。

>> Stuart Smith (Mostly Media)
最適化も重要ですが、デジタルはラストクリックアトリビューションなので、私は、あまり精緻になりすぎるとテレビはパワーを失うことになると思います。私たちはTVSquaredを効果的に、短期の取引で使っています。つまるところ実際(マーケットで)起きていることにバイイングを順応させるパターンを見つけることです。そこに真の力があります。

【ストリーミング、OTTについて】

>> Jo Kinsella(TVSquared)
ストリーミングが伸びており、アメリカでは選択肢の幅が増えています。私たちはMediaMath、Roku、Samsung Adsと提携しました。Channel5やSkyとも話を始めています。Netflixとも話していますが彼らは未だ広告を始めていません。ヨーロッパの広告主は、広告型VODやOTTをどう見ていますか。

>> Stuart Smith (Mostly Media)
現実は、パフォーマンス系広告主では料金とのバランスで方程式が成立していないと思います。つまり、ブランドファーストの広告主である必要があります。リーチ&フリークエンシーでは良い結果が出ますので。1ポンドの出稿で10ポンド戻さねばならないとしたら、プライスポイントが合わないんですね。料金は名目上だと思います。ある日このプラットフォームなら単価を上げられるんだと思ったんでしょう、科学的な根拠があったかは不明です。イギリスではパフォーマンス系の在庫はほぼ日中です。夕方以降は料金が上がるので指標と方程式に影響します。そのため、気を付けながらやっています。全てはデータで、大規模な方程式です。短期的、長期的に細かく分析しています。CPAを日々見ている様なパフォーマンスクライアントは、短期的な利益と長期的なブランドの維持の狭間で苦しんでいます。

>> Jo Kinsella(TVSquared)
VC(Venture Capital)もいるのでその様にはさせないでしょうね。短期的なリターンを求めますから。アメリカでは文字通り市場が溢れかえっているので興味深いです。人々はリニア予算の一部をOTTやCTVのトライアルにあてています。どうなるか見ものですね。やめてしまった広告主もいます。しかしパフォーマンス指標は辻褄が合っています。「成功させたいなら料金を下げやがれ」なんて言う人は居ません。

>> Stuart Smith (Mostly Media)
ロックダウン前、視聴率は概ね3~5%でした。こちらでは、スポーツ番組にはCMが付きません。だから積極的にPRせず、優先順位の設定に苦労していました。今後は変わると思います。SkyのSky-Qボックス(STB)がNetflix, Disney, Amazonなどを束ねるでしょう。そして許可が出れば広告販売を始めると思います。Channel4も、(それを始めれば)Netflixの広告を販売し始めるかもしれません。

>> Jo Kinsella(TVSquared)
コントロールの観点からいうとトップ3局でしょうね。(アメリカでは)人々はリーチ&フリークエンシーを奪い合っている様に見えます。イギリスではどうかということなのですが、確実に言えるのは全く異なるマーケットであり、ビジネスモデルだということですね。しかし(Mostly Mediaが)パフォーマンスベースで良かったです。全てはデータであり、サイエンスです。

>> Stuart Smith (Mostly Media)
全ては数字(numbers)です。

>> Jo Kinsella(TVSquared)
爽快な言葉です。リスナーの皆さん、Mostly Mediaに注目してください。未来の代理店です。スチュアート、今日はありがとう。ステイセーフ、酒場でロックダウンを楽しんで。

<<個人的メモ>>
・リーチ&フリークエンシー>パフォーマンス指標(last click attribution)
・イギリスの代理店の影響力
・英テレビのデジタル化とプログラマティックへの移行
・マーケットで起きている事に合うバイイングのパターンを見つける

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