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今月の1冊~2022.05

2022年、5月。
新緑まぶしい季節。怒涛の4月をこえて落ち着いてくるのをこえて、ちょっとお疲れモードな5月でした。そしてわたしの誕生日月。誕生日の来る1か月くらい前からソワソワは始まるのですが、今年ももれなくやってきました。ソワソワ。そしてゾワゾワ。新しい歳にむけていろいろなものがめぐるのでしょうね、誕生日を過ぎるとウソのように落ち着きます。なんでなんでしょうか。知っている方、是非おしえていただきたいです。

読む本は数あれ、ぐっとくる1冊にはそんなに簡単に出会えない。
そんな中でも毎月1冊もしあれば2冊、自分のなかでこれは・・と思ったものの感想を書いていこうと思います。
本の要約ではないと思うので気になる方は是非ご自身で読んでください!

今月は、
ミス・サンシャイン
吉田修一 

人を好きになるって本当に素敵だなと思える本でした。歳を重ねたひとりの女性の家のお手伝いを若い男の子がするなかで、いろいろな価値観が重ね合わさり、そして男の子はその女性に恋をするという、そんな甘くてビターな話。歳を重ねた女性は、その昔の大女優、世界を魅了した女性に、ひとりの大学生が恋をするというストーリーなのです。現実にはそんなことが起こる確率はとても低いようには思います。でも、その人の価値観に触れ、そしてその想いを好きになりそれが恋へとなる可能性を思い切り大胆に描いてくれている作品だなと思いました。

だれにでも時間は等しく訪れるので、重ねた歳のぶんだけ経験は増えていきます。そしてその経験の積み重ねが、今の自分をつくっていく。話のなかで、彼が彼女の過去を整理していくのですが、そこでは過去の経験から彼女の色々な想いを知ることになっていました。あのとき、たとえば自分と同じ歳だったときの彼女が思っていたこと、その時の出来事、そして複雑に絡み合う感情。そんな過去を紐解きながら、だんだんとでも確実に彼女の生き様に触れ、温度を感じ、そして恋に落ちるというストーリーです。彼女が彼のことをどう思っていたのかにはあまり触れられていないですが、きっと彼が昔の自分を知っていく過程を見ていて、時に色々な過去を思い出しながら彼との親交を深めていったんじゃないかなと思います。

恋に落ちる瞬間って、その時は気づかなくとも、あとからあのときだったなと思うこと、あると思います。あの時のあのしぐさ、あの言葉・・・とても何気ないものなのかもしれないですが何かこう動く瞬間があるのだと思います。あ、好きかもしれないって思った瞬間の前にたぶん恋に落ちる瞬間が存在しているのだろうなと。この小説のひとたちも、過去の経験を紐解く過程で、何気ない何かを発見して、そこから好きになったのでしょうね。もちろん歳の差みたいなものは存在していたけれど、過去を紐解く作業のなかで出会いを重ねるからこそ、時間が関係なくなって、だから余計に普段はちょっと起こりえなさそうな歳の差での恋が実現したんじゃないかなと思います。

人を好きになるって、色々なもので好きになることはあるかなと思います。でもその中でも、本当に純粋にその人の想いとか性格とかそういうところで好きになれるって奇跡だし、素敵だなと思いました。生きている限りは色々あるけれど、そこからも自由になって自分に正直になれる瞬間に恋する相手がいるというのは、なんとも憧れだなと思ったのでした。

歳を重ねていくからこそ、見えるもの。そんなものを大事にしつつこれからの自分を楽しもうと思います。


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